1. 概要
コンプライアント機構および柔軟機構とは、外力、位置誤差、形状ばらつき、または衝撃が発生した際に、構造上の一定量の変形や相対運動を許容し、その柔軟性を利用して力と運動を伝達したり、装置とワークの間に生じる位置ずれを吸収したりする機械機構である。
一般的な剛体機構では、各部品の変形を無視できるものと仮定し、軸、ピン、軸受、スライダなどを介して運動を実現する。一方、コンプライアント機構および柔軟機構では、次の要素の一つまたは複数を利用する。
材料の弾性変形
薄板またはビームの曲げ
ねじり変形
フレクシャヒンジ
フレキシブルカップリング
フローティングジョイント
球面ジョイント
弾性ブッシュ
ゴムおよびエラストマー
ばね支持構造
空気圧によるコンプライアンス
受動的な位置合わせ自由度
多軸微小変位許容構造
コンプライアント機構および柔軟機構の主な目的は次のとおりである。
組立誤差の吸収
位置ずれおよび角度ずれの補正
衝撃および振動の低減
ワーク損傷の防止
接触力の制限
挿入および組立動作の安定化
バックラッシの除去
繰返し精度の向上
過負荷時の変位許容
多軸接触への適応
密閉構造およびクリーン構造の実現
部品点数および組立工程の削減
代表的な適用分野は次のとおりである。
精密位置決め装置
半導体およびディスプレイ製造装置
ロボットグリッパ
自動組立装置
ピン挿入およびコネクタ接続
工作機械
測定装置およびセンサ
光学装置
包装機械
食品加工機械
医療機器
ソフトロボティクス
真空装置
航空宇宙システム
フレキシブルカップリングおよび軸接続装置
コンプライアント機構は誤差や衝撃を吸収できる一方、過大変形、疲労破壊、クリープ、寄生運動、不安定な剛性変化が発生しないように設計する必要がある。
2. コンプライアント機構および柔軟機構の定義
コンプライアント機構および柔軟機構は、構造変形または制限された相対運動を利用して、要求される機能を実現する機構である。
機能的には、次のように定義できる。
コンプライアント機構とは、剛体部品間の相対位置誤差および外力を受け入れながら、必要な方向の運動と力を伝達し、不要な方向に作用する荷重を低減する機械機構である。
コンプライアント機構は、大きく二つの概念に分類できる。
2.1 弾性変形型機構
部品そのものの弾性変形を利用する機構である。
例:
フレクシャヒンジ
板ばねガイド
弾性ビーム
ダイヤフラム
ベローズ
コンプライアントフィンガ
一体型グリッパ
2.2 相対運動型機構
ジョイント、フローティング部材、またはばね支持構造を利用して、制限された相対運動を許容する。
例:
フローティングジョイント
球面ジョイント
自動調心カップリング
ばね支持式フローティングプレート
リモートセンターコンプライアンス装置
ゴムブッシュ
3. 柔軟性と剛性
柔軟性とは、荷重に対して変形を許容する程度であり、剛性の逆数として理解できる。
直線運動では、次の関係を使用できる。
F = kx
コンプライアンス (C) は、次のように表される。
C = x / F = 1 / k
ここで、
F:作用力
k:剛性
x:変位
C:コンプライアンス
回転運動では、次のように表す。
T = k_θ θ
C_θ = θ / T = 1 / k_θ
ここで、
T:トルク
(k_θ):回転剛性
θ:回転角
(C_θ):回転コンプライアンス
コンプライアント機構は、全方向に柔らかい必要はない。必要な方向には柔軟であり、荷重を伝達したり位置を保持したりする方向には十分な剛性を持たせる必要がある。
4. 方向性コンプライアンス
コンプライアント機構の本質は、方向によって異なる剛性を持たせることにある。
例えば、平行板ばねガイドは、目的とする移動方向には容易に変形する一方で、次の方向には高い剛性を維持できる。
横方向
回転方向
垂直方向
ねじり方向
このような特性を、方向性剛性または異方性剛性という。
理想的なコンプライアント機構は、次の特性を持つ。
必要な自由度では低剛性
拘束すべき自由度では高剛性
作動範囲内で予測可能な剛性
小さな寄生運動
安定した繰返し性
5. コンプライアント機構と弾性復帰機構の違い
弾性復帰機構とコンプライアント機構は関連しているが、主な設計目的が異なる。
5.1 弾性復帰機構
変形エネルギーを蓄積し、部品を初期位置へ戻す機能を中心とする。
例:
圧縮ばね
引張ばね
ねじりばね
ガススプリング
5.2 コンプライアント機構
誤差、衝撃、位置ばらつき、接触荷重などを受け入れながら、運動または力を伝達することを中心とする。
例:
フレクシャガイド
フローティングジョイント
リモートセンターコンプライアンス装置
コンプライアントグリッパ
フレキシブルカップリング
5.3 機能の重複
フレクシャヒンジは弾性変形を利用するため、復帰機能を持つと同時に、運動を案内するコンプライアント機構でもある。
6. 剛体機構との比較
6.1 剛体機構
運動はピン、軸受、スライダ、ジョイントなどで発生する。
長所:
大きな運動範囲
大きな荷重伝達能力
運動学解析が比較的容易
部品単位で交換可能
短所:
バックラッシ
摩擦
潤滑が必要
摩耗
組立誤差
パーティクル発生
6.2 コンプライアント機構
運動は構造の弾性変形または制限されたフローティング運動によって発生する。
長所:
バックラッシが小さい、または存在しない
摩擦が小さい
潤滑要求を低減できる
高い繰返し精度
部品点数を削減できる
クリーン環境に適している
公差および位置ずれを吸収できる
短所:
運動範囲が限定される
疲労寿命の検証が必要
過大変位に弱い
非線形挙動
寄生運動
製造ばらつきに敏感
一体構造では修理が困難な場合がある
7. コンプライアント機構の基本分類
7.1 材料変形型
フレクシャヒンジ
板ばね
弾性ビーム
ダイヤフラム
ベローズ
弾性リング
スリット構造
7.2 ばね支持型
ばね支持式フローティングプレート
ばね支持式グリッパ
多軸ばねマウント
予圧式コンプライアンス装置
7.3 ジョイント型
球面ジョイント
ユニバーサルジョイント
フローティングジョイント
自動調心軸受
ボールジョイント
7.4 柔軟材料型
ゴムブッシュ
エラストマーマウント
シリコーンフィンガ
ウレタンパッド
ソフトグリッパ
7.5 流体型
空気圧コンプライアンス機構
エアスプリング
低圧グリッパ
油圧減衰式ジョイント
7.6 磁気型
磁気カップリング
磁気フローティング支持
非接触コンプライアンス装置
8. 自由度
剛体は空間内で最大6自由度を持つ。
X軸方向の直線移動
Y軸方向の直線移動
Z軸方向の直線移動
X軸まわりの回転
Y軸まわりの回転
Z軸まわりの回転
コンプライアント機構は、必要な自由度だけを許容し、その他の自由度を拘束する必要がある。
例えば、ピン挿入用コンプライアンス装置では、次の運動を一部許容できる。
X・Y方向の微小移動
X・Y軸まわりの微小回転
必要に応じたZ軸方向の弾性移動
一方、挿入方向の推進力は安定して伝達しなければならない。
9. コンプライアンス行列
多軸コンプライアント機構では、力と変位の関係を行列形式で表すことができる。
{δ} = [C]{F}
または、
{F} = [K]{δ}
ここで、
{δ}:直線変位および回転変位ベクトル
{F}:力およびモーメントベクトル
[C]:コンプライアンス行列
[K]:剛性行列
対角項は各軸方向の直接コンプライアンスを表し、非対角項は、ある方向の力が別方向の変位を発生させる軸間結合を表す。
精密コンプライアント機構では、非対角項を小さくし、軸間結合を最小化することが重要である。
10. フレクシャ機構
フレクシャ機構は、材料の弾性変形によって運動を実現するコンプライアント機構である。
代表的な形状は次のとおりである。
フレクシャヒンジ
ブレードフレクシャ
平行フレクシャ
クロススプリングピボット
円形ノッチヒンジ
ダイヤフラムフレクシャ
直交座標型フレクシャステージ
フレクシャ機構は、精度と繰返し性が要求される用途に適している。
11. フレクシャヒンジ
フレクシャヒンジは、局部的に薄くした部分の曲げによって回転運動を提供する。
11.1 主な形状
直線ノッチ形
円形ノッチ形
楕円ノッチ形
放物線形
コーナーフィレット形
クロス軸形
11.2 主な設計変数
最小厚さ
ノッチ半径
ヒンジ幅
材料の縦弾性係数
許容回転角
軸方向荷重
繰返し回数
11.3 長所
バックラッシがない
高い繰返し精度
潤滑が不要
組立部品数を削減できる
真空およびクリーンルームに適している
11.4 短所
回転範囲が限定される
ノッチ部に応力集中が発生する
疲労破壊の可能性
過大な軸方向荷重に弱い
12. ブレードフレクシャ
ブレードフレクシャは、薄く細長い板材の曲げ変形を利用して、特定方向の移動または回転を許容する。
主な特徴は次のとおりである。
一方向の曲げ剛性が低い
板幅方向の剛性が高い
構造が単純
比較的大きな変位を許容できる
平面加工に適している
適用分野:
精密ガイド
センサ
計測装置
光学マウント
微細位置決め装置
13. 平行フレクシャガイド
平行フレクシャガイドは、二つ以上の平行板ばねを用いて、可動部がほぼ平行な直線経路に沿って移動するようにした機構である。
13.1 長所
すべり摩擦がない
バックラッシがない
高い繰返し性
潤滑が不要
一体加工が可能
13.2 短所
移動中に微小な寄生変位が発生する
移動範囲が限定される
板ばねの疲労
大きな横荷重に弱い
13.3 主な用途
微調整ステージ
力センサ
ロードセル
半導体位置合わせ装置
光学フォーカス装置
14. クロススプリングピボット
クロススプリングピボットは、二つの薄い板ばねを交差配置し、仮想的な回転中心を形成する機構である。
長所:
摩擦が非常に小さい
高い回転繰返し精度
バックラッシがない
比較的明確な回転中心
短所:
板ばねに応力が発生する
回転角が限定される
軸方向荷重に敏感
組立時の位置合わせが重要
適用:
精密天びん
角度センサ
光学ミラー
精密回転機構
15. 複合フレクシャ機構
複数のフレクシャ要素を組み合わせることにより、多軸運動または並進運動を実現できる。
代表的な構造は次のとおりである。
二重平行フレクシャ
四節リンク形フレクシャ
多軸フレクシャステージ
直列形フレクシャ
並列形フレクシャ
直交座標型フレクシャ
複合構造は、寄生運動を低減して精度を向上させることができるが、応力分布および軸間結合の解析が複雑になる。
16. フローティング機構
フローティング機構は、部品または取付プレートが制限範囲内で自由に移動または回転できるようにした構造である。
16.1 主な目的
組立誤差の吸収
自動調心
公差補償
接触面の均等化
横荷重の低減
軸位置合わせの改善
16.2 代表的な形式
フローティングプレート
フローティングナット
フローティングジョイント
フローティングコネクタ
フローティンググリッパ
フローティング軸受ハウジング
17. フローティングジョイント
フローティングジョイントは、シリンダロッドと可動部の間に設置され、軸の偏心および角度ずれを吸収する。
17.1 主な機能
ロッドとガイドの平行度誤差の補正
シリンダ横荷重の低減
シール摩耗の低減
組立性の向上
軸のかじり防止
17.2 注意事項
フローティングジョイントに大きな位置ずれを継続的に補償させてはならない。
基本的な軸位置合わせを確保したうえで、残留誤差を吸収する目的で使用する。
18. フローティングナット
フローティングナットは、ナットが取付部内で微小に移動できる構造とし、ボルトと穴の位置ずれを吸収する。
代表的な用途:
板金組立
カバー
航空機構造
自動車
装置パネル
繰返し組立部
長所:
組立公差の吸収
組立時間の短縮
ボルト挿入性の向上
締結位置合わせの改善
検討事項:
回り止め
抜け止め
締結後の位置安定性
振動
腐食
19. 自動調心機構
自動調心機構は、接触力が発生した際に、相手部品の形状または中心に合わせて自動的に位置を調整する。
代表的な方式は次のとおりである。
球面座
テーパガイド
フローティングプレート
ばね支持
ローラガイド
リモートセンターコンプライアンス装置
自動調心は組立性の向上に有効であるが、調心後の位置を確実に維持するため、別途支持装置またはロック装置が必要となる場合がある。
20. 球面ジョイントおよび自動調心構造
球面ジョイントは、複数の回転方向に対する角度ずれを許容する。
代表的な要素は次のとおりである。
ボールジョイント
球面軸受
ロッドエンド
球面座金
自動調心軸受
20.1 長所
角度ずれを吸収できる
偏荷重を低減できる
組立性を向上できる
荷重分布を改善できる
20.2 短所
すきま
摩擦
潤滑が必要
摩耗
有効回転中心が移動する可能性
21. リモートセンターコンプライアンス
リモートセンターコンプライアンス機構は、実際の機構位置から離れた点に仮想的なコンプライアンス中心が形成されるように設計した機構である。
一般的に次のように表記する。
Remote Center Compliance, RCC
RCC装置は、ロボット組立において次のような部品間の位置ずれを補正するために使用される。
ピンと穴
軸と軸受
コネクタとソケット
22. RCCの作動原理
挿入部品と相手穴の間に位置ずれがある場合、接触力が発生する。
RCCは、この接触力に応じて挿入部品が穴中心方向へ移動または回転することを許容する。
一般的な動作順序は次のとおりである。
挿入部品が接近
→ エッジ接触が発生
→ 横力およびモーメントが発生
→ コンプライアンス装置が変位
→ 自動調心
→ 挿入継続
RCCを使用すると、ロボットの位置決め精度が完全でなくても、安定した組立が可能になる。
23. RCCの主な設計要素
コンプライアンス中心の位置
X・Y方向の剛性
回転剛性
挿入方向の剛性
最大許容変位
最大許容角度ずれ
復元力
摩擦
減衰
許容挿入力
コンプライアンス中心を適切に配置することにより、接触力が位置合わせを妨げるのではなく、位置合わせを促進するようにできる。
24. 受動コンプライアンスと能動コンプライアンス
24.1 受動コンプライアンス
ばね、フレクシャ、ゴム、ジョイントなどの機械的特性だけを利用して誤差を吸収する。
長所:
制御が単純
応答が速い
電源が不要
信頼性が高い
低コスト
短所:
剛性が固定
作業ごとの最適化に限界がある
状態変化への対応が限定的
24.2 能動コンプライアンス
力センサ、位置センサ、アクチュエータ制御を利用し、接触力または位置を調整する。
長所:
柔軟な力制御および位置制御
多様な作業への対応
状態監視が可能
可変剛性を実現できる
短所:
センサおよび制御装置が必要
制御遅れ
コスト増加
故障モードの増加
24.3 ハイブリッドコンプライアンス
機械的な受動コンプライアンスと能動力制御を組み合わせる。
25. フレキシブルカップリング
フレキシブルカップリングは、二軸間でトルクを伝達しながら、偏心、角度ずれ、および軸方向変位を一部許容する軸継手である。
代表的な種類は次のとおりである。
ビームカップリング
ヘリカルカップリング
ベローズカップリング
ディスクカップリング
オルダムカップリング
ジョーカップリング
タイヤカップリング
グリッドカップリング
26. ビームカップリングおよびヘリカルカップリング
円筒部品へらせん状のスリットを加工し、弾性変形を許容する。
26.1 長所
一体構造
バックラッシが小さい
潤滑が不要
小型化が可能
製作および組立が比較的容易
26.2 短所
トルク容量が限定される
ねじり剛性が低い場合がある
疲労寿命の検討が必要
軸方向ずれや偏心により追加応力が発生する
26.3 主な用途
エンコーダ
小型サーボモータ
計測機器
精密送り軸
27. ベローズカップリング
薄肉金属ベローズの弾性変形を利用し、軸の位置ずれを吸収しながらトルクを伝達する。
長所:
高いねじり剛性
バックラッシが非常に小さい
精密サーボに適している
比較的低慣性
真空用途に対応可能
短所:
価格が高い
過大な位置ずれに弱い
ベローズの疲労
衝撃荷重に敏感
28. ディスクカップリング
薄い金属ディスクまたは板の曲げ変形を利用して、軸の位置ずれを許容する。
長所:
高いねじり剛性
潤滑が不要
高速回転に適している
大きなトルクを伝達できる
バックラッシが小さい
短所:
軸位置合わせが重要
過大偏心による疲労
組立誤差に敏感
ディスク損傷時に性能が急激に低下する
29. オルダムカップリング
オルダムカップリングでは、中央ディスクが二つのハブに設けられた直交溝の間をすべることにより、平行偏心を吸収する。
長所:
比較的大きな平行偏心を許容
構造が単純
低速および中速用途に適している
電気絶縁材料を使用できる
短所:
中央ディスクの摩耗
すべり摩擦
高速時に振動が発生する可能性
バックラッシが生じる可能性
30. エラストマーカップリング
エラストマーカップリングは、ゴムまたはウレタン要素を使用し、軸の位置ずれおよび衝撃を吸収する。
代表的な形式:
ジョーカップリング
タイヤカップリング
ピン・ブッシュカップリング
ゴムディスクカップリング
長所:
振動および衝撃の低減
取付誤差の吸収
騒音低減
保守が簡単
短所:
ねじり変形
温度の影響
経年劣化
クリープ
薬品の影響
31. コンプライアントグリッパ
コンプライアントグリッパは、ワークの形状および位置ばらつきを受け入れながら、把持力を分散させるグリッパである。
代表的な方式は次のとおりである。
ばね支持式フィンガ
フレクシャフィンガ
ゴムパッド付きフィンガ
空気圧ソフトフィンガ
ケーブル駆動式柔軟フィンガ
アンダーアクチュエーテッドグリッパ
コンプライアントグリッパは、次のワークに適している。
不規則形状の製品
変形しやすい製品
食品
ガラスおよびセラミックス
電子部品
多品種生産
32. アンダーアクチュエーテッドグリッパ
アンダーアクチュエーテッドグリッパは、アクチュエータ数よりも関節自由度が多いグリッパである。
一つのアクチュエータで複数の関節を動かし、各フィンガがワークへ接触すると、その形状に合わせて受動的に調整される。
32.1 長所
多様な形状を把持できる
アクチュエータ数を削減できる
制御を簡素化できる
接触力を分散できる
位置誤差を吸収できる
32.2 短所
フィンガ位置を正確に制御しにくい
力分布の予測が困難
リンクおよびケーブルの摩擦
非常に小さな部品の把持には制限がある
繰返し精度が低下する可能性
33. ソフトグリッパ
ソフトグリッパは、ゴム、シリコーン、その他の柔軟なポリマーの変形を利用し、製品を包み込むか、押し付けて把持する。
33.1 駆動方式
空気圧チャンバの膨張
真空による収縮
ケーブル張力
形状記憶材料
誘電エラストマーアクチュエータ
33.2 長所
柔らかい製品の損傷を低減
複雑形状に適応
広い接触面積
ワーク位置誤差を許容
人との協働における安全性向上の可能性
33.3 短所
位置精度が低い
材料疲労および破れ
圧力と温度の影響
洗浄および衛生管理が難しい
解析および寿命予測が困難
34. 弾性フィンガおよびフレクシャグリッパ
金属またはプラスチックの薄い弾性部を変形させて、フィンガを開閉する。
長所:
一体加工が可能
バックラッシがない
部品点数を削減できる
高い繰返し性
潤滑が不要
小型部品に適している
短所:
把持範囲が限定される
最大変形量に制限がある
疲労破壊
過負荷に弱い
把持力調整範囲が限定される
35. 力制限機構
コンプライアント機構は、アクチュエータの移動量とワーク接触の間に弾性変位を許容することにより、接触力を制限できる。
線形弾性要素では、次のように近似できる。
F = kx
低い剛性を設定すると、位置誤差が発生しても接触力の増加を抑えることができる。
主な用途:
圧入
挿入
検査プローブ
ラベル貼付け
柔軟製品の把持
電気接点検査
シール装置
36. シリーズ弾性アクチュエータ
シリーズ弾性アクチュエータは、アクチュエータと出力部の間に弾性要素を直列配置した駆動装置である。
一般的に次のように表記する。
Series Elastic Actuator, SEA
弾性要素の変形量を測定することで、出力力または出力トルクを推定できる。
36.1 長所
衝撃吸収
力制御性能の向上
人との接触時の安全性向上
歯車への衝撃低減
エネルギー蓄積が可能
36.2 短所
位置精度の低下
応答遅れ
共振の可能性
制御の複雑化
弾性要素の疲労
37. 可変剛性機構
可変剛性機構は、作動状態に応じて剛性を変更できる機構である。
代表的な方式は次のとおりである。
ばね予圧の変更
レバー作用点の変更
カム形状位置の変更
並列ばねの選択
空気圧の変更
磁気要素の調整
リンク形状の変更
可変剛性機構は、次のような場合に有効である。
自由空間では高い位置精度が必要
接触中は低剛性が必要
衝撃時には大変位を許容する必要がある
ワークに応じて把持力を変更する必要がある
38. 公差補償機構
コンプライアント機構は、製造公差および組立公差を吸収するために使用される。
代表的な用途:
ボルト穴の位置ばらつき
コネクタ接続
パネル組立
センサ接触
シール圧縮
部品高さばらつき
溶接治具
自動組立
公差補償量は、許容変位と復元力を併せて検討する必要がある。
過大なコンプライアンスは、部品位置の不安定化や組立精度低下を引き起こす。
39. 熱膨張補償
異種材料や長い構造物では、温度変化によって相対変位が発生する。
線膨張量は次の式で表される。
ΔL = αLΔT
コンプライアント機構を用いた熱膨張補償方式には、次のものがある。
フローティング支持
スライド支持
ベローズ
フレクシャ
弾性座金
ばね支持
長穴
一端固定・他端自由支持
熱膨張を完全に拘束すると、大きな熱応力および変形が発生する可能性がある。
40. 衝撃コンプライアンス機構
コンプライアント機構は、衝撃時に変位を許容することで、最大衝撃力を低減できる。
運動エネルギーは次のとおりである。
E_k = 1/2 mv²
弾性要素に蓄積されるエネルギーは次のとおりである。
U = 1/2 kx²
衝撃エネルギーを吸収するには、弾性変位だけでなく減衰も考慮する必要がある。
弾性だけを使用すると、蓄積エネルギーが再び放出され、反発や振動が発生する可能性がある。
41. 防振
柔軟マウントは、機械と支持構造の間で伝達される振動を低減する。
代表的な要素:
ゴムマウント
コイルばねマウント
エアスプリング
ワイヤロープアイソレータ
エラストマーブッシュ
防振設計では次の項目を検討する。
機械質量
マウント剛性
固有振動数
加振周波数
減衰
重心位置
マウント位置
運転周波数がシステムの固有振動数に近づくと、共振によって振動が増加する可能性がある。
42. 減衰とコンプライアンス
コンプライアンスは変形を許容してエネルギーを蓄積し、減衰はエネルギーを散逸させる。
代表的な減衰要素は次のとおりである。
ゴム
ウレタン
粘性ダンパ
摩擦パッド
油圧ショックアブソーバ
空気圧オリフィス
ワイヤロープ
安定したコンプライアンス動作を得るには、適切な減衰が必要である。
減衰が不足すると次の問題が発生する。
接触後の反動
繰返し振動
組立時間の増加
センサ信号の不安定化
減衰が過大な場合、応答が遅くなる可能性がある。
43. 寄生運動
目的とする運動以外に発生する不要な変位を、寄生運動という。
例:
直線移動中の高さ変化
回転中の回転中心移動
X軸移動中のY軸変位
圧縮中のねじれ
グリッパ開閉中のフィンガ角度変化
寄生運動を低減する方法は次のとおりである。
対称構造
二重フレクシャ
並列機構
長い弾性要素
適切なヒンジ配置
有限要素解析
形状最適化
44. バックラッシと繰返し精度
フレクシャ式コンプライアント機構は、接触式関節を持たないため、理論上バックラッシがない。
実際の繰返し精度には次の要素が影響する。
材料ヒステリシス
摩擦
温度
クリープ
残留応力
センサ分解能
取付部の変形
過大荷重
柔軟材料型機構は、金属フレクシャよりもヒステリシスおよびクリープが大きくなる場合がある。
45. 非線形性
コンプライアント機構は、変形が大きくなると線形関係から外れる場合がある。
主な非線形要因は次のとおりである。
大変形
幾何学的非線形
接触
材料非線形
ゴムの超弾性
摩擦
座屈
スナップスルー
小変位では線形モデルを使用できるが、大変形では非線形解析が必要である。
46. 応力集中
応力集中は、次の箇所に発生しやすい。
フレクシャノッチ
スリット端部
穴
鋭角部
板厚変化部
応力集中を低減する方法は次のとおりである。
十分なフィレット半径
緩やかな板厚変化
鋭い角の除去
表面仕上げの改善
加工痕方向の管理
適切な熱処理
高応力部の位置変更
疲労寿命が重要な場合、最大応力だけでなく、表面状態および繰返し応力範囲も検討する必要がある。
47. 疲労寿命
コンプライアント機構は繰返し弾性変形を受けるため、疲労が重要な設計要素となる。
疲労寿命へ影響する要素は次のとおりである。
応力振幅
平均応力
繰返し回数
材料
表面粗さ
製造欠陥
腐食
使用温度
残留応力
過負荷履歴
疲労寿命を向上させる方法は次のとおりである。
最大変形量を制限する
応力集中を低減する
高疲労強度材料を使用する
表面を研磨する
ショットピーニングを施す
腐食を防止する
過大変位ストッパを設ける
適切な安全率を適用する
48. クリープおよび応力緩和
ゴム、シリコーン、プラスチックを用いたコンプライアント機構では、長期荷重によってクリープおよび応力緩和が発生する可能性がある。
48.1 クリープ
一定荷重下で、変形量が時間とともに増加する現象である。
48.2 応力緩和
一定変形下で、力が時間とともに低下する現象である。
48.3 影響
把持力低下
シール圧縮力低下
位置変化
予圧低下
調心性能低下
48.4 対策
使用ひずみを低減する
耐クリープ材料を選定する
使用温度を下げる
金属ばねと組み合わせる
定期的に力を検査する
交換周期を設定する
49. 材料選定
49.1 ばね鋼
高い弾性限度
優れた疲労強度
フレクシャおよび弾性フィンガに適している
49.2 ステンレス鋼
耐食性
食品機械
医療機器
真空および湿潤環境
49.3 アルミニウム合金
軽量
加工性が高い
比較的低い縦弾性係数
精密一体型機構に適している
49.4 チタン合金
高い比強度
耐食性
比較的低い縦弾性係数
航空宇宙、医療、精密機構
49.5 銅合金
電気伝導性
非磁性
電気接点
板ばね
49.6 エンジニアリングプラスチック
軽量
低摩擦
電気絶縁性
クリープの検討が必要
49.7 エラストマー
大変形が可能
高い減衰
形状適応性
温度および経年劣化の検討が必要
50. 製造方法
コンプライアント機構は、次の方法で製造できる。
切削加工
ワイヤ放電加工
レーザ切断
ウォータージェット切断
板金成形
エッチング
射出成形
積層造形
ゴム成形
シリコーン注型
精密フレクシャでは、加工によって発生するエッジ、バリ、熱影響部、残留応力が疲労寿命へ影響する可能性がある。
51. 積層造形によるコンプライアント機構
3Dプリンティングを使用すると、複雑な一体型コンプライアント機構を製造できる。
51.1 長所
複雑形状
一体製作
部品点数削減
内部構造設計
迅速な試作
カスタムソフトグリッパ
51.2 短所
積層方向による強度差
表面粗さ
寸法精度の制約
材料の疲労特性
内部欠陥
繰返し性の問題
フレクシャの曲げ方向と積層方向の関係を考慮して設計する必要がある。
52. コンプライアント機構の予圧
コンプライアント機構へ予圧を加えると、次の効果が得られる。
接触維持
すきま除去
振動抑制
安定した基準位置
復帰特性向上
双方向の力伝達
過大な予圧は、次の問題を引き起こす。
作動範囲の減少
最大応力の増加
疲労寿命の低下
摩擦増加
ワーク変形
アクチュエータ負荷増加
53. 過大変位防止
コンプライアント機構は、許容変位を超えると塑性変形または破断が発生する可能性がある。
代表的な保護方法は次のとおりである。
機械式ストッパ
制限ピン
ケーブル
補助リンク
ゴムバンパ
センサによる停止
ソフトウェア位置制限
過負荷クラッチ
ストッパは、正常運転中には接触せず、異常状態でのみ作動するように設計することが望ましい。
54. フェイルセーフ設計
コンプライアント機構が破損しても、危険な部品離脱やワーク落下が発生しないようにする必要がある。
主な対策は次のとおりである。
二重弾性要素
セーフティケーブル
補助支持
保護カバー
破損検出センサ
移動範囲制限
セーフティピン
破損後に荷重を受けるバックアップ構造
ロボットグリッパおよび昇降装置では、コンプライアント要素の破損時にワークが落下しないよう、別途機械式保持装置を設けることができる。
55. 状態検出
コンプライアント機構の状態は、次のセンサを利用して監視できる。
変位センサ
位置センサ
力センサ
トルクセンサ
ひずみゲージ
近接センサ
圧力センサ
ビジョンセンサ
振動センサ
主な監視項目は次のとおりである。
最大変位
接触力
復帰位置
剛性変化
疲労亀裂
永久変形
組立完了
把持状態
56. 安全設計
コンプライアント機構に関する主な危険は次のとおりである。
蓄積エネルギーの急激な放出
フレクシャ破断
弾性部品の飛散
指の挟まれ
コンプライアントフィンガの破損
加圧式ソフトアクチュエータの破裂
ワーク落下
過大な接触力
保守中の急激な復帰動作
保護対策は次のとおりである。
保護カバー
過大変位ストッパ
圧力制限
抜け止め装置
予圧除去手順
破損監視
交換周期管理
補助支持
残留エネルギーの放出
57. 食品機械におけるコンプライアント機構
食品機械では、柔軟性だけでなく、衛生性、洗浄性、耐食性、破損部品の脱落防止を考慮する必要がある。
57.1 主な用途
製品形状へ適応するグリッパ
製品ガイド
押しつぶし防止ストッパ
シール部の圧力均等化
センサ用フローティングマウント
カバーおよびドアの公差補償
コンベヤガイド
57.2 主な要求事項
食品残渣の蓄積防止
開放的で洗浄しやすい構造
耐食性材料
食品適合エラストマー
潤滑の最小化
破損片の脱落防止
洗浄薬品への耐性
表面亀裂の管理
57.3 注意事項
複雑なスリット、薄いノッチ、およびフレクシャ内部は洗浄が難しい場合があるため、食品直接接触区域では衛生適合性を優先して検討する必要がある。
58. 包装機械におけるコンプライアント機構
包装機械では、次の用途にコンプライアント機構が使用される。
フィルム張力補償
製品ガイド
シールジョー圧力の均等化
ラベル貼付けローラ
センサ高さ補償
カッター衝撃低減
製品位置ばらつきの吸収
クイックチェンジ部品の位置合わせ
主な要求事項:
高速応答
高い繰返し寿命
低慣性
製品損傷防止
粉じんおよびフィルム片への耐性
容易な清掃および交換
59. 工作機械におけるコンプライアント機構
工作機械では、次の用途に使用される。
精密フレクシャステージ
工具測定プローブ
軸カップリング
センサ接触機構
軸受の自動調心
熱膨張補償
研削接触力制御
工具衝突緩和
コンプライアンスによって加工精度が低下しないよう、作動方向と荷重支持方向の剛性差を明確に設計する必要がある。
60. ロボットおよび自動化装置におけるコンプライアント機構
代表的な用途は次のとおりである。
RCC組立装置
フローティンググリッパ
コンプライアントフィンガ
シリーズ弾性アクチュエータ
衝突緩和ジョイント
ツールチェンジャ位置合わせ装置
柔軟ケーブル支持
センサ用フローティングマウント
主な設計要素:
ロボットの位置決め精度
組立公差
接触力
コンプライアンス方向
復帰特性
剛性
疲労寿命
ワーク落下防止
61. 半導体および精密装置におけるコンプライアント機構
半導体装置および精密装置では、次の特性が重要である。
バックラッシがない
パーティクル発生が少ない
潤滑が不要
高い繰返し精度
低摩擦
真空適合性
熱安定性
代表的な用途:
ウェハ位置合わせ
光学ミラー調整
精密フォーカス
微動ステージ
センサプローブ
真空バルブ
ナノ位置決め
62. 適用事例
62.1 ピン挿入用RCC
ピンが穴へ接近
→ ピンが穴のエッジへ接触
→ 横力が発生
→ RCCが横方向移動および回転を許容
→ ピンが穴中心へ整列
→ 挿入完了
主な検討事項:
位置誤差
角度誤差
コンプライアンス中心位置
横方向剛性
回転剛性
挿入力
最大変位
62.2 空気圧シリンダ用フローティング接続部
シリンダ前進
→ ガイド付き可動部との間に微小な軸ずれが存在
→ フローティングジョイントが偏心を吸収
→ 横荷重を低減
→ 安定した直線運動を維持
主な検討事項:
許容偏心
許容角度
ロッド荷重
ジョイントすきま
繰返し寿命
潤滑
62.3 柔軟製品用グリッパ
フィンガ接近
→ 製品へ接触
→ 弾性フィンガが変形
→ 製品形状へ適応
→ 接触力を分散
→ 安定した把持を実現
主な検討事項:
製品剛性
把持力
フィンガ変形量
摩擦係数
疲労
製品損傷
62.4 精密フレクシャステージ
アクチュエータ入力
→ 平行フレクシャが変形
→ 可動プレートが直線移動
→ 位置測定
→ 入力除去後に初期位置へ復帰
主な検討事項:
移動量
最大応力
寄生変位
剛性
固有振動数
繰返し精度
62.5 フレキシブルカップリング
モータ軸が回転
→ カップリングがトルクを伝達
→ 軸偏心および角度ずれによって弾性変形
→ 従動軸が回転
→ 軸受横荷重を低減
主な検討事項:
伝達トルク
ねじり剛性
回転速度
許容偏心
許容角度ずれ
疲労寿命
63. 解析および設計ツール
63.1 静解析
荷重と変位
方向別剛性
最大応力
接触力
許容位置ずれ
予圧
63.2 非線形構造解析
大変形
接触
ゴムの超弾性
座屈
スナップスルー
材料非線形
63.3 疲労解析
応力振幅
平均応力
繰返し回数
ノッチ効果
表面欠陥
温度および腐食
63.4 運動解析
自由度
コンプライアンス中心
寄生運動
リンク運動
組立軌跡
干渉
63.5 動力学解析
固有振動数
共振
減衰
衝突
復帰時間
振動伝達率
63.6 最適化
最小応力
最大移動量
方向別剛性比
最小質量
寄生変位の最小化
疲労寿命の最大化
64. コンプライアント機構の選定手順
64.1 必要機能を定義する
組立誤差補正
自動調心
力制限
衝撃低減
防振
公差補償
バックラッシ除去
形状適応
64.2 必要な自由度を定義する
直線移動方向
回転方向
許容変位
許容回転角
拘束すべき自由度
64.3 荷重条件を定義する
直線力
トルク
衝撃
繰返し回数
静荷重
動荷重
偏荷重
64.4 機構形式を選定する
フレクシャ
フローティングジョイント
球面ジョイント
RCC
フレキシブルカップリング
エラストマー
コンプライアントグリッパ
空気圧コンプライアンス装置
64.5 剛性を設計する
作動方向剛性
拘束方向剛性
剛性比
復元力
予圧
軸間結合
64.6 変位および応力を検討する
最大変位
最大応力
弾性限度
応力集中
過大変位
安全率
64.7 動的特性を検討する
固有振動数
共振
減衰
応答速度
衝撃
繰返し振動
64.8 寿命を検討する
疲労
摩耗
クリープ
応力緩和
腐食
温度
材料劣化
64.9 環境条件を検討する
湿度
洗浄
薬品
真空
クリーンルーム
食品接触
高温および低温
粉じん
64.10 試験および検証
力–変位試験
剛性試験
繰返し寿命試験
位置ずれ補償試験
挿入試験
衝撃試験
振動試験
過大変位試験
破損試験
65. 結論
コンプライアント機構および柔軟機構は、構造の弾性変形、制限された相対運動、または柔軟材料の変形を利用して力と運動を伝達しながら、位置誤差、形状ばらつき、衝撃および組立公差を受け入れる機械機構である。
コンプライアント機構は、全方向に柔らかい構造ではない。必要な方向には十分な変位を許容し、荷重を支持したり位置を維持したりする方向には高い剛性を確保する、方向性コンプライアンス設計が重要である。
フレクシャ機構は、バックラッシおよび摩擦がほとんどなく、高い繰返し精度を提供するため、精密位置決め装置、半導体装置、光学システムに適している。フローティングジョイントおよび球面ジョイントは、シリンダ、軸、組立接続部の位置ずれを吸収する。
リモートセンターコンプライアンス機構は、ロボットによるピン挿入やコネクタ接続において、接触力を利用して部品を自動的に位置合わせする。フレキシブルカップリングは軸の偏心および角度ずれを吸収しながらトルクを伝達し、コンプライアントグリッパはワーク形状および位置のばらつきへ適応する。
コンプライアント機構は、組立性、接触安定性および衝撃吸収性を向上させる。一方、剛性が低すぎると位置精度および荷重支持能力が低下し、剛性が高すぎると誤差吸収および衝撃緩和機能が低下する。
設計時には、剛性および変位だけでなく、応力集中、疲労、寄生運動、非線形性、共振、減衰、クリープおよび温度影響を総合的に検討する必要がある。フレクシャや弾性フィンガは繰返し変形を受けるため、静的強度よりも疲労寿命が重要となる場合がある。
コンプライアント機構は、次の順序で設計および選定することが適切である。
必要機能および組立誤差を定義
→ 必要自由度および拘束自由度を決定
→ 力・トルク・衝撃条件を分析
→ コンプライアント機構形式を選定
→ 方向別剛性および許容変位を決定
→ 復元力および予圧を決定
→ 最大応力および応力集中を確認
→ 寄生運動および非線形性を確認
→ 疲労・クリープ・温度影響を確認
→ 共振・減衰・応答速度を確認
→ 過大変位保護およびフェイルセーフ機能を設計
→ 環境・衛生・清浄度要求を確認
→ 力–変位・寿命・組立性能試験を実施
適切に設計されたコンプライアント機構は、機械の精度と繰返し性を維持しながら、組立誤差、製品ばらつき、外部衝撃に対する適応性を高める重要な機械構成要素である。