1. 概要
機械システムにおいて、MechanismとMotionは互いに独立した概念ではない。
Motionとは、部品や作業部の位置または姿勢が時間の経過に伴って変化する現象である。Mechanismとは、入力された力や運動を、定められた関係に基づいて出力運動へ変換し、伝達する機械的構造である。
つまり、Motionは機械に現れる結果としての動きであり、Mechanismはその動きを生成し、制約する構造的な手段である。
機械の基本的な接続関係は、次のように表すことができる。
エネルギー源 → アクチュエーター → 動力伝達要素 → メカニズム → 出力モーション → 作業
さらに詳細に表すと、次のようになる。
エネルギー供給 → 力またはトルクの発生 → 運動伝達 → 運動変換 → 運動拘束 → 出力位置・速度・力の形成 → 工程の実行
例えば、モーターが回転するだけでは、製品を直線方向へ搬送することはできない。モーターの回転運動を、ボールねじ、ベルト、ラック・アンド・ピニオンなどのメカニズムを通じて直線運動へ変換することで、初めて搬送機能が成立する。
したがって、Mechanismは、アクチュエーターが発生した基本運動を、目的に適したMotionへ構成する接続構造であるといえる。
2. Motionの定義
Motionとは、物体の位置または姿勢が時間に応じて変化する現象である。
物体の位置をx、回転角度をθ、時間をtとすると、直線速度と角速度は次のように表すことができる。
v = dx / dt
ω = dθ / dt
各記号の意味は次のとおりである。
v:直線速度
x:直線位置
ω:角速度
θ:回転角度
t:時間
Motionには、単なる移動経路だけでなく、次のような特性も含まれる。
運動軌跡
移動距離
回転角度
速度
加速度
移動方向
反復周期
停止位置
位置決め精度
運動中に作用する力
運動間の同期関係
したがって、同じ直線運動であっても、速度、加速度、反復方式、位置決め精度によって、機械的な性能は大きく異なる。
3. Mechanismの定義
Mechanismとは、一つ以上の剛体部品、関節、ガイド、または接触要素が一定の関係で接続され、入力運動を出力運動へ変換する機械的構成である。
Mechanismの主な機能は次のとおりである。
運動の伝達
運動方向の変更
運動形態の変換
移動距離の拡大または縮小
速度の変更
トルクおよび力の変換
軌跡の生成
運動範囲の制限
複数軸の同期
停止位置の形成
機械的ロック
反復運動の生成
代表的なMechanismには、次のようなものがある。
歯車機構
ベルト・プーリー機構
チェーン・スプロケット機構
ボールねじ機構
ラック・アンド・ピニオン機構
スライダークランク機構
4節リンク機構
カム・フォロワー機構
ゼネバ機構
トグル機構
ラチェット機構
差動機構
平行リンク機構
ロボットリンク機構
4. Machine、Mechanism、Motionの区分
Machine、Mechanism、Motionは互いに接続された概念であるが、その意味は異なる。
4.1 Machine
Machineとは、エネルギーを使用して特定の作業または工程を実行するシステム全体である。
代表的な例は次のとおりである。
包装機
切断機
充填機
プレス
コンベヤ
ロボット
食肉加工機械
4.2 Mechanism
Mechanismとは、Machineの内部で運動を伝達または変換する機械的構造である。
例えば、包装機内部の次の構造がMechanismに該当する。
フィルム搬送ローラー
シールバー昇降リンク
製品プッシャー
カムインデクサー
切断刃駆動機構
4.3 Motion
Motionとは、Mechanismの部品および出力部で実際に発生する動きである。
代表的な例は次のとおりである。
ローラーの回転
シールバーの直線往復
切断刃の上下移動
製品プッシャーの前進と復帰
インデックステーブルの間欠回転
これらの関係は、次のように整理できる。
Machineは工程を実行する。
Mechanismは工程に必要な運動を生成する。
MotionはMechanismで実際に発生する動きである。
5. MechanismとMotionの基本関係
MechanismとMotionの関係は、次の四つの機能に整理できる。
5.1 運動の生成
アクチュエーターがMechanismへ入力運動を供給する。
例:
モーターの回転
シリンダーの直線移動
ばねによる復帰
重力による落下
5.2 運動の伝達
入力運動を離れた位置にある出力部へ伝達する。
例:
シャフト
歯車
ベルト
チェーン
リンク
5.3 運動の変換
入力運動の形態を別の運動形態へ変換する。
例:
回転 → 直線運動
回転 → 往復運動
回転 → 揺動運動
直線運動 → 回転
連続回転 → 間欠回転
5.4 運動の拘束
出力部品が必要な方向と経路だけに沿って動くように制限する。
例:
リニアガイド
回転軸と軸受
リンク関節
カム溝
曲線レール
機械式ストッパー
Mechanismは運動を発生させるだけでなく、不要な運動を除去し、必要な自由度だけを残す役割も持つ。
6. 全体接続構造
MechanismとMotionの接続構造は、機能的に次のように区分できる。
6.1 エネルギー経路
エネルギー源 → 駆動装置 → 動力伝達部 → 作業部
例:
電源 → サーボドライブ → サーボモーター → 減速機 → リンク → グリッパー
6.2 運動経路
入力運動 → 伝達運動 → 変換運動 → 出力運動
例:
モーター回転 → 減速回転 → クランク回転 → スライダーの直線往復
6.3 力の伝達経路
アクチュエーター力 → 伝達部品 → 関節またはガイド → 出力部 → ワーク
この経路を荷重経路、またはLoad Pathという。
6.4 信号経路
センサー → 制御装置 → ドライブまたはバルブ → アクチュエーター
6.5 フィードバック経路
実位置・実速度・実力 → センサー → 制御装置 → 補正指令 → アクチュエーター
システム全体は、次のように表すことができる。
指令 → 制御装置 → アクチュエーター → Mechanism → Motion → 作業
出力結果は、次の経路で再び制御装置へ戻る。
Motion → センサー → 制御装置 → 補正
7. 入力運動と出力運動
Mechanismは、一般的に入力部と出力部を持つ。
7.1 入力運動
入力運動とは、アクチュエーターまたは外力によってMechanismへ供給される運動である。
代表的な入力運動は次のとおりである。
連続回転
制限角回転
直線移動
往復移動
振動
手動操作
重力落下
7.2 出力運動
出力運動とは、Mechanismが実際の作業に必要な形態として生成する運動である。
代表的な出力運動は次のとおりである。
直線搬送
回転搬送
往復運動
揺動運動
間欠回転
複合軌跡
クランプ運動
切断運動
7.3 入出力関係
Mechanism設計の中心は、入力運動と出力運動の関係を定義することである。
出力位置は一般的に次のように表すことができる。
q_out = f(q_in)
各記号の意味は次のとおりである。
q_in:入力位置または入力角度
q_out:出力位置または出力角度
f:Mechanismの形状と寸法によって決定される変換関係
例えば、ボールねじでは、モーター回転数と移動距離の関係は次のようになる。
x = n × L
各記号の意味は次のとおりである。
x:直線移動距離
n:ねじの回転数
L:ねじリード
8. 運動連鎖
運動連鎖、またはKinematic Chainとは、複数のリンクが関節を介して接続された構造である。
入力リンクの運動は、他のリンクへ順次伝達される。
8.1 リンク
リンクとは、運動を伝達する剛体部品である。
例:
レバー
クランク
コネクティングロッド
スライダー
ロボットアーム
カム
8.2 関節
関節とは、二つのリンク間に特定の相対運動を許容しながら、その他の運動方向を制限する接続部である。
代表的な関節は次のとおりである。
回転関節
直動関節
ねじ関節
球面関節
円筒関節
カム接触
歯車接触
8.3 固定リンク
運動連鎖の一つのリンクをフレームへ固定すると、実際のMechanismになる。
つまり、すべてのリンクが自由に動く構造は運動連鎖であり、一つ以上のリンクが基準構造へ固定され、入力と出力が定義されるとMechanismになる。
9. 自由度と運動拘束
自由度とは、Mechanismが独立して動くことのできる運動変数の数である。
三次元空間で自由な剛体は、最大6自由度を持つ。
X軸方向の移動
Y軸方向の移動
Z軸方向の移動
X軸周りの回転
Y軸周りの回転
Z軸周りの回転
Mechanismは、関節とガイドによって不要な自由度を除去する。
例えば、リニアガイドは移動体の自由度を一方向の直線移動に制限する。
回転軸と軸受は、軸を中心とする回転自由度だけを許容する。
Mechanismの自由度は、概念的に次のような関係を持つ。
Mechanismの自由度 = 全体で可能な運動 - 関節と拘束によって除去された運動
自由度が不足すると、Mechanismは動作できない、または過拘束状態になる可能性がある。
自由度が多すぎると、出力位置が不安定になる。
10. 拘束と案内の役割
Mechanismでは、運動の生成と同様に運動の案内が重要である。
アクチュエーターが力を発生しても、出力部品を適切に案内しなければ、必要なMotionを得ることはできない。
10.1 直線運動の案内
リニアガイド
スライドブッシュ
Vガイド
ローラーガイド
プリズムガイド
10.2 回転運動の案内
ボールベアリング
ローラーベアリング
ブッシュ
ピボット
ターンテーブルベアリング
10.3 曲線運動の案内
カム溝
曲線レール
リンクによる軌跡
ロボットの多軸補間
駆動要素は運動を発生させ、案内要素は運動方向と軌跡を決定する。
ボールねじは軸方向の力を伝達するが、移動テーブルに作用するモーメント荷重や横荷重は、一般的にリニアガイドが支持する。
11. アクチュエーターとMechanismの関係
アクチュエーターとMechanismは異なる役割を持つ。
11.1 アクチュエーターの役割
アクチュエーターは、エネルギーを機械的な力またはトルクへ変換する。
代表的なアクチュエーターは次のとおりである。
電動モーター
サーボモーター
ステッピングモーター
リニアモーター
空圧シリンダー
油圧シリンダー
ソレノイド
圧電アクチュエーター
11.2 Mechanismの役割
Mechanismは、アクチュエーターの出力を作業に必要なMotionへ構成する。
例:
サーボモーター → 回転トルクを発生
ボールねじ → 回転運動を直線移動へ変換
リニアガイド → 直線経路へ拘束
テーブル → 製品を目標位置へ移動
したがって、アクチュエーターは運動のエネルギーを生成し、Mechanismは運動の形態と関係を形成する。
12. 運動伝達機構
運動伝達機構は、入力運動を離れた位置の出力部へ伝達する。
12.1 シャフト伝達
回転軸を通じてトルクと回転運動を伝達する。
12.2 歯車伝達
歯車のかみ合いを利用して、速度、トルク、方向を変更する。
12.3 ベルト伝達
プーリーとベルトを利用し、離れた軸間で運動を伝達する。
12.4 チェーン伝達
チェーンとスプロケットを利用し、滑りのない回転伝達を実現する。
12.5 リンク伝達
リンクと関節を利用し、運動を別の位置へ伝達する。
12.6 流体伝達
空気圧または油圧を通じて、離れた位置のアクチュエーターへ力を伝達する。
伝達機構を選定する際には、距離、荷重、速度、精度、バックラッシ、騒音、保守性を考慮する必要がある。
13. 運動変換機構
Mechanismは、入力Motionを必要な出力Motionへ変換する。
13.1 回転から直線への変換
代表的な機構:
ボールねじ
リードスクリュー
ラック・アンド・ピニオン
ベルトスライダー
カムとフォロワー
13.2 回転から往復への変換
代表的な機構:
スライダークランク機構
偏心カム
スコッチヨーク機構
偏心軸
13.3 回転から揺動への変換
代表的な機構:
クランクロッカー機構
4節リンク
カムロッカー
セクターギア
13.4 連続回転から間欠運動への変換
代表的な機構:
ゼネバ機構
カムインデクサー
ラチェットとポール
クラッチとブレーキ
13.5 直線から回転への変換
代表的な機構:
ラック・アンド・ピニオン
レバー
リンク
ケーブルドラム
14. MechanismがMotion軌跡を決定する方法
Mechanismの形状と接続条件は、出力部の軌跡を決定する。
14.1 ガイドによる軌跡
リニアガイドまたは曲線レールが、出力部の移動経路を直接決定する。
14.2 リンク長さによる軌跡
4節リンクや多節リンクでは、リンク長さと関節位置が出力点の軌跡を決定する。
14.3 カムプロファイルによる軌跡
カム機構では、カム表面の形状がフォロワーの変位と運動法則を決定する。
14.4 多軸制御による軌跡
ロボットやCNCでは、各軸の運動を組み合わせて出力点の軌跡を生成する。
つまり、Motionの軌跡は、単にアクチュエーターの移動方向によって決定されるのではなく、Mechanismの幾何学的構造によって決定される。
15. 位置関係
Mechanismの入力位置と出力位置の間には、幾何学的な関係が存在する。
一般的な位置関係は次のように表すことができる。
x_out = f(x_in, geometry)
回転入力と直線出力の関係は、次のように表すことができる。
x = f(θ)
ここでgeometryには、次の項目が含まれる。
リンク長さ
回転半径
歯車ピッチ
ねじリード
カムプロファイル
関節位置
ガイド方向
Mechanismの形状が固定されている場合、入力位置に対する出力位置は機械的に決定される。
16. 速度関係
出力速度は、入力位置とMechanismの変換関係を時間で微分することで求められる。
入出力関係を次のように仮定する。
x = f(θ)
出力速度は、次のように表すことができる。
v = dx / dt
v = dx / dθ × dθ / dt
v = dx / dθ × ω
この関係は、入力回転速度が一定であっても、Mechanismの位置によって出力速度が変化する可能性を示している。
例えば、スライダークランク機構では、クランクが一定速度で回転しても、スライダー速度は一定ではない。
スライダー速度はストローク両端で0となり、中央付近で大きくなる。
17. 加速度関係
出力加速度は、出力速度の時間変化率である。
a = dv / dt
Mechanismでは、入力速度が一定であっても、幾何学的関係が非線形である場合、出力加速度は継続的に変化する。
加速度の変化は、次の項目に直接影響する。
慣性力
モータートルク
リンク荷重
軸受反力
衝撃
振動
製品の揺れ
騒音
疲労寿命
したがって、Mechanism設計では、出力軌跡だけでなく、速度と加速度の変化も同時に検討する必要がある。
18. 力とトルクの関係
Mechanismは運動だけでなく、力とトルクも変換する。
18.1 レバー
レバーでは、力と距離の間に次の関係が成立する。
F_in × l_in = F_out × l_out
各記号の意味は次のとおりである。
F_in:入力力
l_in:入力側の回転中心からの距離
F_out:出力力
l_out:出力側の回転中心からの距離
出力側の距離が短くなると出力力は増加するが、出力移動距離は小さくなる。
18.2 減速機
理想的な減速機では、出力トルクは次のように増加する。
T_out = T_in × i × η
各記号の意味は次のとおりである。
T_out:出力トルク
T_in:入力トルク
i:減速比
η:効率
18.3 ねじ機構
ねじ機構は、小さな回転トルクを大きな軸方向力へ変換できる。
ねじリードが小さいほど、同じ回転数での移動距離は短くなるが、より大きな軸方向力を得やすい。
Mechanismにおける力の増加は、一般的に移動距離または速度の減少とのトレードオフ関係を持つ。
19. 動力関係
理想的なMechanismでは、入力動力と出力動力は等しい。
P_in = P_out
回転動力は次のように表す。
P = T × ω
直線動力は次のように表す。
P = F × v
したがって、理想的な回転・直線変換機構では、次の関係が成立する。
T × ω = F × v
実際のMechanismでは、摩擦と変形によって損失が発生するため、次のように表す。
P_out = P_in × η
η:Mechanismの効率
Mechanismが力を増加させると出力速度は低下し、速度を増加させると出力力は低下する傾向がある。
20. ダイレクトドライブと間接駆動
20.1 ダイレクトドライブ
ダイレクトドライブとは、アクチュエーター出力を負荷へ直接伝達する方式である。
代表的な例は次のとおりである。
リニアモーター
トルクモーター
ダイレクトドライブ回転テーブル
モーターローラー
長所:
バックラッシが少ない。
応答性が高い。
部品点数が少ない。
伝達効率が高い。
制約:
大型アクチュエーターが必要になる場合がある。
負荷慣性がアクチュエーターへ直接作用する。
熱管理が重要である。
アクチュエーターの費用が高くなる場合がある。
20.2 間接駆動
間接駆動とは、減速機、ベルト、ねじ、リンク、カムなどを通じて運動を伝達または変換する方式である。
長所:
力とトルクを増大できる。
モーターの配置自由度が高い。
多様なMotionを生成できる。
大きな荷重を駆動しやすい。
制約:
バックラッシが発生する場合がある。
伝達損失が発生する。
摩耗部品が増加する。
構造が複雑になる。
21. 直列Mechanism構造
直列Mechanismとは、複数のリンクと関節が順次接続された構造である。
入力から出力まで、運動と荷重が一つの連続した経路に沿って伝達される。
代表的な例は次のとおりである。
多関節ロボット
クレーンブーム
リンク式搬送アーム
多段減速機
多段歯車列
主な特徴
広い作業範囲を作りやすい。
複雑な姿勢を実現できる。
各関節の誤差が出力端に累積する場合がある。
出力部の剛性が低くなる場合がある。
出力端の慣性が増加する場合がある。
22. 並列Mechanism構造
並列Mechanismとは、複数のリンクまたはアクチュエーターが一つの出力プラットフォームを同時に支持し、駆動する構造である。
代表的な例は次のとおりである。
デルタロボット
スチュワートプラットフォーム
並列リンク位置決め装置
3点または4点昇降装置
主な特徴
高い剛性を確保できる。
荷重を複数の経路へ分散できる。
移動部質量を低減できる。
高速運動に適している。
運動学と制御が複雑である。
作業範囲が制限される場合がある。
23. 閉ループ機械構造
閉ループ機械構造とは、リンクが一つ以上の閉じたループを形成するMechanismである。
代表的な例は次のとおりである。
4節リンク
スライダークランク機構
トグル機構
平行リンク
並列ロボット
閉ループMechanismでは、複数リンクの位置関係が互いに拘束される。
したがって、一つの入力だけで、複数部品を定められた関係に従って動かすことができる。
ただし、組立公差や関節位置が不正確な場合、過拘束、かじり、内部応力が発生する可能性がある。
24. 機械式同期と電子式同期
24.1 機械式同期
一つの駆動源を、歯車、ベルト、チェーン、カムシャフト、ラインシャフトなどによって分配し、複数の運動を同期させる方式である。
長所:
位相関係が機械的に維持される。
制御構造が単純である。
高い繰返し性を得られる。
制約:
運動条件の変更が難しい。
構造が長く複雑になる場合がある。
機械的なバックラッシと摩耗が発生する。
一部の異常がシステム全体へ影響する場合がある。
24.2 電子式同期
各軸に個別のサーボモーターを使用し、制御装置によって速度と位置を同期させる方式である。
代表的な機能は次のとおりである。
電子ギア
電子カム
マスター・スレーブ制御
位置補間
位相補正
長所:
運動条件をプログラムで変更できる。
製品別の設定変更が容易である。
軸ごとの補正が可能である。
機械式伝達部品を削減できる。
制約:
制御システムが複雑である。
エンコーダーと通信性能が重要である。
通信遅延と制御周期の影響を受ける。
25. Mechanismと制御システムの接続
従来のMechanismでは、運動関係が機械形状によって決定されていた。
現代の自動化装置では、Mechanismと制御システムが組み合わされてMotionを生成する。
基本構造は次のとおりである。
モーション指令 → モーションコントローラー → サーボドライブ → モーター → Mechanism → 出力Motion
25.1 位置制御
目標位置と実位置との差を補正する。
e_p = x_cmd - x_act
各記号の意味は次のとおりである。
e_p:位置誤差
x_cmd:指令位置
x_act:実位置
25.2 速度制御
指令速度と実速度との差を補正する。
e_v = v_cmd - v_act
25.3 力またはトルク制御
ワークに加わる力、または軸トルクを目標値に合わせて調整する。
Mechanismは制御指令を実際の機械運動へ変換するが、バックラッシ、摩擦、剛性、慣性は制御性能に直接影響する。
26. センサーとフィードバック構造
センサーは、Mechanismで発生した実際のMotionを測定する。
26.1 位置センサー
エンコーダー
リニアスケール
ポテンショメーター
レゾルバー
近接センサー
リミットスイッチ
26.2 速度センサー
エンコーダー信号による速度計算
タコジェネレーター
レーザー速度センサー
26.3 力およびトルクセンサー
ロードセル
トルクセンサー
圧力センサー
ひずみゲージ
26.4 状態センサー
振動センサー
温度センサー
圧力スイッチ
ドアセンサー
製品検出センサー
フィードバック構造は次のように表すことができる。
指令 → アクチュエーター → Mechanism → Motion
Motion → センサー → 制御装置 → 補正指令
27. 剛性と弾性変形
実際のMechanismは完全な剛体ではない。
軸、リンク、フレーム、ベルト、チェーン、カップリングなどは、荷重によって変形する。
Mechanismの変形は、概念的に次のように表すことができる。
δ = F / k
各記号の意味は次のとおりである。
δ:変形量
F:作用力
k:Mechanismの剛性
剛性が低い場合、次の問題が発生する可能性がある。
位置誤差
振動
整定時間の増加
共振
加工品質の低下
クランプ力の変化
出力運動の遅れ
したがって、高精度Motionでは、アクチュエーターの分解能だけでなく、Mechanism全体の剛性も同時に検討する必要がある。
28. バックラッシとすきま
バックラッシとは、運動方向が反転した際、Mechanism内部のすきまによって入力運動が出力部へ直ちに伝達されない現象である。
代表的な発生箇所は次のとおりである。
歯車のかみ合い
減速機
ボールねじナット
ラック・アンド・ピニオン
チェーン
リンク関節
カップリング
バックラッシによって、次の問題が発生する。
方向反転時の位置誤差
繰返し精度の低下
衝撃
騒音
追従誤差
サーボ制御の不安定化
低減方法は次のとおりである。
予圧の適用
精密減速機
デュアルピニオン
予圧付きボールねじ
一方向からの接近
ソフトウェア補正
ダイレクトドライブ
29. 摩擦と効率
摩擦はMechanismの運動を妨げ、エネルギー損失と発熱を発生させる。
摩擦は次の項目に影響する。
必要モータートルク
低速安定性
位置繰返し精度
Mechanismの効率
発熱
摩耗
寿命
スティックスリップ
特に低速運動では、静止摩擦と動摩擦の差によってスティックスリップが発生する場合がある。
したがって、精密搬送軸では、ガイド方式、潤滑、シール抵抗、予圧を同時に検討する必要がある。
30. 慣性とMotion応答
Mechanismの各部品は、質量と慣性を持つ。
直線運動では、質量が必要な加速力に影響する。
F = m × a
回転運動では、慣性モーメントが必要な加速トルクに影響する。
T = J × α
各記号の意味は次のとおりである。
T:加速トルク
J:慣性モーメント
α:角加速度
減速機を使用する場合、出力側の慣性はモーター側へ換算されて作用する。
Mechanismの移動質量と回転慣性が大きい場合、次の影響が発生する。
モーター容量の増加
加速時間の増加
制動距離の増加
エネルギー消費の増加
振動の増加
構造荷重の増加
高速Mechanismでは、可能な限り移動部質量を低減することが重要である。
31. Mechanismの種類と代表的なMotion
Mechanism | 入力運動 | 出力運動 | 代表的な機能 |
|---|---|---|---|
歯車 | 回転 | 回転 | 速度・トルク・方向の変換 |
ベルトとプーリー | 回転 | 回転または直線 | 長距離伝達 |
チェーンとスプロケット | 回転 | 回転または直線 | 同期伝達 |
ボールねじ | 回転 | 直線 | 精密位置決め |
ラック・アンド・ピニオン | 回転 | 直線 | 長距離搬送 |
スライダークランク | 回転 | 直線往復 | 反復搬送・切断 |
4節リンク | 回転 | 揺動または曲線運動 | 姿勢・経路変換 |
カムとフォロワー | 回転 | 直線・揺動・停止 | 運動法則の生成 |
ゼネバ機構 | 連続回転 | 間欠回転 | インデックス動作 |
トグル機構 | 直線または回転 | 短い直線・大きな力 | クランプ |
差動機構 | 複数の回転 | 合成回転 | 速度分配 |
ロボットリンク | 複数の回転 | 空間運動 | 位置と姿勢の制御 |
32. 接続事例1:ボールねじ搬送軸
ボールねじ搬送軸の接続構造は、次のとおりである。
サーボドライブ → サーボモーター → カップリング → ボールねじ → ナット → 移動テーブル
独立した案内構造は、次のとおりである。
フレーム → リニアガイド → 移動テーブル
フィードバック構造は、次のとおりである。
モーターエンコーダーまたはリニアスケール → 制御装置
各要素の役割
サーボモーター:回転トルクを発生
カップリング:回転を伝達し、軸心ずれを吸収
ボールねじ:回転運動を直線運動へ変換
リニアガイド:直線経路を形成し、モーメント荷重を支持
テーブル:ワークを移動
エンコーダー:実位置を検出
33. 接続事例2:スライダークランク機構
接続構造は次のとおりである。
モーター → 減速機 → クランク軸 → コネクティングロッド → スライダー → 作業部
運動関係
モーター:連続回転
減速機:回転速度を低下させ、トルクを増加
クランク:回転半径を生成
コネクティングロッド:運動を伝達
スライダー:直線往復運動を生成
作業部:切断、圧着、または搬送を実行
主な特徴
ストロークはクランク半径によって決定される。
スライダー速度は一定ではない。
ストローク両端で速度が0になる。
方向反転時に慣性荷重が増加する。
34. 接続事例3:カムとフォロワー
接続構造は次のとおりである。
モーター → カム軸 → カムプロファイル → フォロワー → 出力リンクまたはスライダー
カム形状は、次の特性を決定する。
出力変位
上昇区間
下降区間
停止区間
出力速度
出力加速度
カムは、一つの連続回転入力から複雑な反復Motionを機械的に生成できる。
ただし、運動条件を変更するには、カムプロファイルを変更する必要がある。
35. 接続事例4:空圧シリンダー駆動
接続構造は次のとおりである。
空気圧縮機 → エアタンク → バルブ → 空圧シリンダー → ロッド → 作業部
制御経路は次のとおりである。
センサー → PLC → ソレノイドバルブ → シリンダー
各要素の役割
圧縮空気:エネルギーを供給
バルブ:空気の方向と流量を制御
シリンダー:圧力を直線力へ変換
ガイド:ロッドに作用する横荷重を支持
ストッパーまたはセンサー:位置を決定
空圧シリンダーは直線Motionを直接発生させるが、正確な案内と繰返し精度を確保するため、別途ガイドやストッパーが必要になる場合が多い。
36. 接続事例5:インデックステーブル
インデックステーブルの接続構造は、次のように構成できる。
機械式方式
モーター → 減速機 → カムインデクサー → 回転テーブル
サーボ方式
サーボモーター → 精密減速機 → 回転テーブル
機械式インデクサーは、カムプロファイルによって移動と停止を生成する。
サーボインデクサーでは、移動角度、速度、加速度、停止時間をプログラムで変更できる。
37. 接続事例6:多関節ロボット
多関節ロボットの接続構造は次のとおりである。
サーボモーター → 減速機 → 関節 → リンク → 次の関節 → エンドエフェクター
各関節の回転Motionが組み合わされ、エンドエフェクターの空間位置と姿勢が決定される。
関節座標をqとすると、エンドエフェクター位置は次の関係で表すことができる。
X = f(q)
各記号の意味は次のとおりである。
q:各関節の位置
X:エンドエフェクターの位置と姿勢
f:ロボットのリンク構造によって決定される運動学的関係
直列ロボットでは、関節誤差とリンク変形が先端部へ累積する場合がある。
38. 機能をMotionへ接続する設計手順
機械設計では、最初にMechanismを選定するのではなく、必要な機能をMotion要件へ変換した後、適切なMechanismを選定する必要がある。
基本的な手順は次のとおりである。
38.1 機能の定義
例:
製品を次工程の位置へ移動する。
38.2 必要なMotionの定義
直線移動
移動距離:300 mm
移動時間:1秒
停止繰返し精度:±0.1 mm
反復回数:毎分30回
38.3 荷重の定義
製品質量
移動テーブル質量
摩擦
加速度
外力
38.4 アクチュエーター候補の選定
空圧シリンダー
サーボモーター
ステッピングモーター
リニアモーター
38.5 Mechanism候補の選定
ボールねじ
タイミングベルト
ラック・アンド・ピニオン
シリンダーによる直接駆動
38.6 案内構造の選定
リニアガイド
ローラーガイド
ブッシュ
ガイド付きシリンダー
38.7 センサーと制御方式の選定
両端位置センサー
エンコーダー
リニアスケール
PLC
モーションコントローラー
39. Mechanismの選定基準
Mechanismを選定する際には、次の項目を総合的に検討する必要がある。
39.1 出力Motion
直線
回転
往復
揺動
間欠
複合軌跡
39.2 移動範囲
移動距離
回転角度
作業領域
空間的制約
39.3 速度条件
最高速度
平均速度
加速度
減速度
反復周期
39.4 荷重条件
必要な力
必要なトルク
質量
慣性
モーメント荷重
衝撃荷重
39.5 精度条件
位置決め精度
繰返し精度
経路精度
バックラッシ
整定時間
39.6 環境条件
水および洗浄剤
粉じん
高温と低温
腐食
食品接触
衛生要件
39.7 保守条件
潤滑
摩耗
シール交換
張力調整
洗浄時のアクセス性
部品交換性
40. MechanismとMotion設計の検証
40.1 運動学的検証
目標位置へ到達できるか
必要な軌跡を生成できるか
移動範囲は十分か
リンク間に干渉がないか
特異点が存在しないか
40.2 速度および加速度の検証
最高速度
出力速度の変化
加速度
ジャーク
方向反転時の衝撃
40.3 力およびトルクの検証
アクチュエータートルク
出力力
摩擦力
慣性力
軸受反力
リンク荷重
40.4 構造検証
応力
変形
座屈
ねじり
疲労
共振
40.5 精度検証
バックラッシ
組立公差
熱変形
繰返し精度
整定時間
追従誤差
40.6 寿命検証
軸受寿命
ガイド寿命
ボールねじ寿命
歯車寿命
ベルト疲労
チェーン摩耗
カム接触疲労
リンクピン摩耗
41. 主な故障および性能低下の原因
MechanismとMotionの接続が適切でない場合、次のような問題が発生する可能性がある。
41.1 アクチュエーター容量不足
目標速度に到達できない
過熱
位置誤差
ステッピングモーターの脱調
サーボ過負荷
41.2 ガイド容量不足
テーブルの傾き
摩擦の増加
局部摩耗
繰返し精度の低下
かじり
41.3 バックラッシの増加
方向反転誤差
衝撃
騒音
位置繰返し性の低下
41.4 剛性不足
出力部の変形
振動
整定時間の増加
加工誤差
41.5 軸心ずれ
軸受の過負荷
カップリングの損傷
ボールねじの摩耗
シールの損傷
駆動トルクの増加
41.6 潤滑不足
摩擦の増加
発熱
摩耗
騒音
寿命の低下
42. 安全の観点から見た接続構造
MechanismとMotionの設計では、機能的な運動だけでなく、危険エネルギーの流れも分析する必要がある。
42.1 主な危険
挟まれ
切断
衝突
巻き込まれ
落下
予期しない復帰
残留圧力
ばねエネルギーの解放
慣性による残留運動
42.2 安全接続構造
安全センサー → 安全制御装置 → 駆動エネルギー遮断 → ブレーキまたは停止機構
42.3 機械的安全要素
ストッパー
ブレーキ
ロックピン
トルクリミッター
スリップクラッチ
落下防止装置
過負荷解除装置
安全カバー
非常停止時には、モーター電源を遮断するだけでは不十分な場合がある。垂直軸、大型回転体、ばね、油圧システムなどには、別途機械的なエネルギー制御が必要である。
43. 食品機械における接続構造
食品機械では、一般的な運動性能に加えて、衛生性と洗浄性を考慮する必要がある。
主な考慮事項
食品残留が発生しない構造
開放型フレームとアクセス可能なガイド
洗浄水に耐える軸受とモーター
潤滑油と食品の接触防止
ベルトとチェーンの洗浄性
リンク関節における汚染防止
シール構造
排水構造
空圧排気と製品の接触防止
食品接触領域では、複雑なリンクや露出したねじ機構よりも、洗浄しやすいダイレクトドライブまたは密閉型駆動構造が適している場合がある。
44. MechanismとMotionの接続構造のまとめ
MechanismとMotionの全体的な関係は、次のように整理できる。
機能接続
要求機能 → 必要な作業 → 必要なMotion → 適切なMechanism
エネルギー接続
エネルギー源 → アクチュエーター → 力またはトルク
運動接続
入力Motion → 伝達 → 変換 → 拘束 → 出力Motion
構造接続
フレーム → 軸受・ガイド → リンク・軸 → 出力部
制御接続
指令 → 制御装置 → ドライブ → アクチュエーター
フィードバック接続
出力Motion → センサー → 制御装置 → 補正
作業接続
出力Motion → 作業工具 → 製品または工程
45. 結論
MechanismとMotionの関係は、単にMechanismが動きを作るという関係だけでは説明できない。
アクチュエーターはエネルギーを力とトルクへ変換し、Mechanismはその力とトルクを伝達しながら、運動の方向、距離、速度、軌跡、出力力の大きさを再構成する。
MotionはMechanismの出力であると同時に、Mechanismを設計するための入力条件でもある。
したがって、設計者は最初に必要なMotionを定義し、そのMotionを生成できるMechanismを選定する必要がある。
この過程は、次のように表すことができる。
機能要求 → 必要なMotion → アクチュエーター選定 → Mechanism選定 → 案内構造選定 → センサー・制御構成 → 構造・寿命検証
優れたMechanismとは、単に入力運動を出力運動へ変換する構造ではない。
次の条件を同時に満たす必要がある。
必要な軌跡を正確に生成する。
要求された速度と加速度を達成する。
必要な力とトルクを伝達する。
不要な自由度を安定して拘束する。
バックラッシと変形を制限する。
衝撃と振動を最小化する。
安全に停止し、位置を保持する。
反復運転において十分な寿命を確保する。
洗浄と保守が可能である。
制御システムと安定して接続される。
MechanismはMotionを形成する物理的な論理であり、Motionは機械が機能を実行する方法である。
両者の接続関係を正確に定義することが、機械構造、駆動システム、制御システム、装置全体の性能を決定する出発点となる。