汎用機械における状態認識・判断制御

汎用機械における状態認識・判断制御

1. Control State Recognition and Decisionの定義

Control State Recognition and Decisionとは、センサ、アクチュエータ、通信装置、および制御システム内部の情報を用いて機械の実際の状態を認識し、その状態が正常であるか、次の動作を許可できるか、あるいは調整・停止・復旧が必要であるかを判断する制御領域である。

機械は、単に指令を実行するだけでは安定して動作できない。

次のような問いに継続的に答えられなければならない。

  • 装置は実際に指令どおり動作したか

  • 製品は要求された位置にあるか

  • 目標位置・速度・力に到達したか

  • 次の機能を実行する準備が整っているか

  • 現在の信号を信頼できるか

  • 複数の信号が互いに整合しているか

  • 正常条件から外れた状態ではないか

  • 運転を継続するか、制限するか、停止するか

  • 現在の機械状態を既知の状態として扱えるか

したがって、状態認識・判断制御の本質は、単に信号を読み取ることではない。

物理的な状態を意味のある機械状態へ変換し、その状態に基づいて次の動作を決定することが重要である。

2. 制御システムにおける位置

汎用機械の制御フローは、次のように表現できる。

機能実行 → 物理的変化 → 信号検出 → 状態認識 → 状態判断 → 次の指令または応答

各領域の役割は次のとおりである。

領域

役割

Control Function Execution

機械へ実行指令を出力する

Sensing and Detection

位置・速度・圧力・温度などの物理量を検出する

State Recognition

検出した信号を意味のある機械状態へ変換する

Decision Control

動作の許可・遷移・停止・調整の要否を決定する

Interlock Control

特定条件下で危険または不適切な動作を遮断する

Fault and Recovery

異常状態や不確実な状態に対応し、復旧を行う

Safety-Related Control

危険状態において一般制御より優先して安全機能を実行する

センサは物理量を検出するが、センサ信号そのものが必ずしも実際の機械状態を表すわけではない。

例えば、近接センサがONであるという事実だけでは、製品が正常な位置にあると判断できない場合がある。

  • センサが汚れている可能性がある。

  • 製品が異常な向きで引っ掛かっている可能性がある。

  • センサブラケットが移動している可能性がある。

  • 別の物体がセンサを作動させている可能性がある。

したがって、検出と状態認識は区別しなければならない。

3. 信号・状態・判断の区別

3.1 信号

Signal

信号とは、センサまたは制御装置から提供される生の情報である。

例:

  • センサON/OFF

  • エンコーダ位置値

  • 圧力:0.48 MPa

  • 温度:82°C

  • Servo Ready

  • Inverter Fault

  • 通信データ受信

  • 安全ドアスイッチ状態

3.2 状態

State

状態とは、一つまたは複数の信号を解釈することによって定義される、意味のある機械条件である。

例:

  • 製品到着完了

  • クランプ正常

  • 軸停止

  • 加工準備完了

  • 圧力不足

  • 位置不確定

  • 製品詰まりの疑い

  • 自動運転可能

3.3 判断

Decision

判断とは、認識された状態に基づいて、制御システムが実行すべき対応を決定することである。

例:

  • 次の機能を許可する

  • 現在の動作を維持する

  • 速度を低下させる

  • 再試行する

  • 警告を発生させる

  • 通常停止を行う

  • 異常停止を行う

  • 安全停止を行う

  • 作業者による確認を要求する

信号は入力であり、状態はその解釈結果であり、判断はその状態に対する制御応答である。

4. 状態認識の階層

機械状態は、一つの階層だけで定義されるものではない。

熟練した制御設計では、状態を複数の階層に分けて扱う。

4.1 物理状態

Physical State

実際の物理量または物理的条件である。

  • 位置

  • 速度

  • 力

  • 圧力

  • 温度

  • 電流

  • 振動

  • 製品の有無

4.2 装置状態

Device State

個別装置の現在の作動状態である。

  • モータ停止

  • Servo Ready

  • シリンダ前進完了

  • バルブ作動

  • ヒータ加熱中

  • ブレーキ作動

  • センサ異常

4.3 機能状態

Functional State

特定の機能単位における進行状態である。

  • 供給待機

  • 位置決め中

  • クランプ完了

  • 加工中

  • 検査完了

  • 排出失敗

4.4 工程状態

Process State

製品または工程全体の進行状態である。

  • 製品未投入

  • 加工準備完了

  • 工程実行中

  • 検査合格

  • 再加工必要

  • 工程中断

4.5 機械状態

Machine State

機械全体の運転状態である。

  • 初期化

  • Ready

  • 自動運転

  • 手動運転

  • 一時停止

  • 異常停止

  • 復旧

  • 保守

4.6 安全状態

Safety State

危険動作および安全機能に関する状態である。

  • 安全条件成立

  • 危険領域への接近検出

  • 安全停止実行中

  • 安全出力遮断

  • 停止確認完了

  • 再起動禁止

これらの状態階層は、相互に関連付けなければならない。

例えば、シリンダ前進センサのON信号は装置状態を表す。さらに圧力正常と製品位置信号が確認された場合、機能状態をクランプ完了として認識できる。

5. 状態変数の定義

状態変数とは、機械が現在どのような条件にあるかを判断するために使用する値である。

5.1 離散状態変数

限定された状態値を持つ。

例:

  • ON/OFF

  • Open/Closed

  • Ready/Not Ready

  • Present/Absent

  • Normal/Fault

  • Automatic/Manual/Maintenance

5.2 連続状態変数

連続的な数値によって表される。

例:

  • 位置

  • 速度

  • 温度

  • 圧力

  • トルク

  • 電流

  • 振動値

5.3 派生状態変数

Derived State Variable

一つまたは複数の信号を組み合わせて生成される状態である。

例:

  • 位置値が目標範囲内にあり、速度が停止判定値以下であれば、位置到達と認識する。

  • 圧力値が基準以上で、一定時間維持された場合、クランプ安定と認識する。

  • モータ電流が増加し、位置変化がない場合、製品詰まりの疑いと認識する。

  • 二つのドアセンサがともに正常で、安全リレーがReadyの場合、安全ドア正常と認識する。

派生状態は、実際の制御判断において非常に重要である。

制御装置は、個々の生信号よりも、意味付けされた状態に基づいて動作することが望ましい。

6. 直接状態認識と間接状態推定

6.1 直接状態認識

最終的に確認したい対象そのものを直接測定する。

例:

  • リニアスケールでテーブル位置を検出する

  • 光電センサで製品の有無を直接確認する

  • ロードセルでクランプ力を測定する

  • 速度センサで回転速度を測定する

直接検出は状態の信頼性を高められるが、センサコストや設置の複雑さが増加する場合がある。

6.2 間接状態推定

他の信号を利用して状態を推定する。

例:

  • モータ軸エンコーダからテーブル位置を推定する

  • モータ電流から接触状態を推定する

  • シリンダ圧力からクランプ状態を推定する

  • バルブ出力と経過時間からシリンダ位置を推定する

間接推定は構造を簡素化できるが、次のような制約がある。

  • 伝達機構の破損を検出できない場合がある。

  • 荷重や摩擦の変化に影響される。

  • 実際の最終結果と推定結果に差が生じる可能性がある。

  • 誤差が累積する可能性がある。

重要度の高い機能では、可能な限り最終結果を直接確認する必要がある。

7. 状態認識に必要な信号の種類

7.1 位置・変位信号

  • 近接センサ

  • リミットスイッチ

  • 光電センサ

  • リニアスケール

  • ロータリエンコーダ

  • 変位センサ

7.2 速度・運動信号

  • エンコーダ速度

  • 回転センサ

  • 移動時間

  • 軸追従誤差

  • モーションコントローラ状態

7.3 力・負荷信号

  • ロードセル

  • トルクセンサ

  • モータ電流

  • サーボ負荷率

  • シリンダ圧力

7.4 熱・工程信号

  • 温度

  • 圧力

  • 流量

  • 真空

  • 重量

  • レベル

  • 張力

7.5 製品・環境信号

  • 製品の有無

  • 製品の向き

  • 製品サイズ

  • ドア状態

  • 材料供給状態

  • 冷却水状態

  • 潤滑状態

7.6 制御装置内部信号

  • Drive Ready

  • Servo On

  • In Position

  • Torque Limit

  • Alarm

  • Communication Healthy

  • Safety Ready

状態認識には、外部センサだけでなく、ドライブや制御装置が持つ内部状態情報も利用する必要がある。

8. 信号の有効性確認

センサ値が入力されたという理由だけで、直ちに有効な状態として扱ってはならない。

まず、信号が有効であるかを確認する必要がある。

8.1 範囲確認

Range Check

測定値が物理的に成立し得る範囲にあるかを確認する。

例:

  • 圧力値がセンサの測定範囲を超えていないか

  • 温度値が異常に低い、または高くないか

  • エンコーダ値が軸の移動限界を超えていないか

8.2 変化率確認

Rate-of-Change Check

値の変化速度が物理的に可能であるかを確認する。

例:

  • 温度が1秒間に数百度変化する

  • 停止している軸の位置値が急変する

  • 圧力値が非現実的な速度で変化する

8.3 時間的整合性確認

Temporal Consistency

信号が必要な時間だけ維持されているかを確認する。

例:

  • ドア閉信号が最小確認時間以上維持されているか

  • 位置到達信号が瞬間的にしか発生していない状態ではないか

8.4 相互整合性確認

Cross Consistency

関連する信号同士が論理的に整合しているかを確認する。

例:

  • 前進センサと後退センサが同時にONになっていないか

  • モータ停止信号があるにもかかわらず、エンコーダ速度が検出されていないか

  • バルブがOFFであるにもかかわらず、シリンダが移動し続けていないか

8.5 指令と応答の整合性

実行指令と実際の応答が一致しているかを確認する。

例:

  • 前進指令後、位置値が前進方向へ変化しているか

  • ヒータ出力後、温度が上昇しているか

  • モータ停止指令後、速度が低下しているか

9. 信号フィルタリングと安定化

物理センサの信号には、ノイズ、チャタリング、瞬間的な変動が含まれる場合がある。

9.1 デバウンス処理

Debouncing

機械式接点やデジタルセンサの高速なON/OFFの繰返しを除去する。

9.2 オンディレイ・オフディレイ

On-Delay / Off-Delay

信号が一定時間継続した後に、状態変化として認識する。

9.3 平均化とフィルタリング

アナログ信号の瞬間的な変動を低減する。

  • 移動平均

  • ローパスフィルタ

  • メディアンフィルタ

  • 外れ値除去

9.4 ヒステリシス

しきい値付近で状態が繰り返し切り替わることを防止する。

例:

  • 0.50 MPa以上で圧力正常と判断する

  • 0.45 MPa以下で圧力不足と判断する

信号フィルタリングはノイズを低減する必要があるが、過度なフィルタリングによって重要な異常検出を遅らせてはならない。

10. 状態の確実性と不確実性

機械状態は、常に正常または異常として明確に区別できるわけではない。

実際の状態を信頼できない場合も存在する。

10.1 Confirmed State

必要な信号が整合し、状態が明確に確認されている場合である。

10.2 Unconfirmed State

必要な情報が十分でない、または完了確認がまだ得られていない場合である。

10.3 Unknown State

電源復帰、通信断、位置情報消失などによって、実際の状態が不明な場合である。

10.4 Conflicting State

関連する信号が互いに矛盾している場合である。

例:

  • 前進完了信号と後退完了信号が同時にONになっている。

  • Door Open信号とDoor Closed信号が同時に発生している。

  • 軸位置は停止を示しているが、速度信号が存在する。

10.5 Estimated State

直接確認できず、他の信号から推定されている状態である。

重要な動作は、Unknown、Conflicting、またはEstimatedの状態で自動実行してはならない。

11. 状態判断の基本構造

状態判断は、一般的に次の流れで構成される。

信号収集 → 信号検証 → 状態生成 → 状態分類 → 優先順位評価 → 制御判断

11.1 信号収集

センサ、ドライブ、PLC、外部設備からデータを収集する。

11.2 信号検証

範囲、時間、変化率、および相互整合性を確認する。

11.3 状態生成

有効な信号を組み合わせ、意味のある状態を生成する。

11.4 状態分類

状態を正常・注意・警告・異常・安全関連状態に分類する。

11.5 優先順位評価

複数の判断が同時に発生した場合、どの対応を優先するかを決定する。

11.6 制御判断

  • 運転を継続する

  • 次の工程へ遷移する

  • 出力を調整する

  • 機能を制限する

  • 再試行する

  • 停止する

  • 安全動作を実行する

12. 判断方式

12.1 しきい値判断

Threshold Decision

測定値が設定範囲を超えたかどうかによって判断する。

例:

  • 温度が90°C以上の場合に警告する。

  • 圧力が0.4 MPa未満の場合に運転を禁止する。

  • 位置誤差が±0.2 mm以内の場合に完了と判断する。

12.2 論理条件判断

Logical Decision

複数のデジタル条件を組み合わせて判断する。

例:

Product Present AND Clamp Complete AND Door Closed

12.3 時間条件判断

Temporal Decision

信号の発生順序や継続時間を含めて判断する。

例:

  • 指令後2秒以内に完了する。

  • 圧力が1秒以上維持される。

  • 二つの信号が100 ms以内に成立する。

12.4 状態遷移判断

State-Transition Decision

現在の状態と入力条件に基づいて、次の状態を決定する。

例:

  • Ready + Start Command → Automatic

  • Automatic + Timeout → Fault Stop

  • Fault Stop + Reset + Condition Verified → Recovery

12.5 傾向判断

Trend-Based Decision

現在値だけでなく、変化の方向や傾向を用いて判断する。

例:

  • ベアリング温度の継続的な上昇

  • サイクルタイムの段階的な増加

  • モータ電流の長期的な増加

  • 位置誤差の反復的な拡大

13. 動作許可判断

状態認識の結果は、機能実行の許可条件として使用される。

13.1 開始許可

機能を開始できるかを判断する。

例:

  • 装置Ready

  • 前機能完了

  • 製品状態正常

  • 安全条件成立

13.2 継続許可

現在の機能を継続してよいかを判断する。

例:

  • 圧力が正常に維持されている

  • 製品位置のずれがない

  • 過負荷がない

  • 危険領域への接近がない

13.3 完了許可

機能が正常に完了したと認められるかを判断する。

例:

  • 目標位置へ到達している

  • 圧力が維持されている

  • 製品結果が確認されている

  • 許容時間内に完了している

13.4 次工程許可

次の機能へ移行できるかを判断する。

例:

  • 現在機能が完了している

  • 次の装置がReadyである

  • 製品搬送経路が正常である

  • インターロック条件が成立している

14. 状態に応じた制御判断

14.1 Continue

正常条件が維持されているため、現在の機能を継続する。

14.2 Transition

現在の機能が完了したため、次の機能または状態へ遷移する。

14.3 Adjust

目標値と実際値との差を小さくするように出力を調整する。

14.4 Hold

必要な条件が再び成立するまで、現在の動作を保留する。

14.5 Restrict

速度、出力、または許可機能を制限する。

14.6 Retry

安全かつ限定された条件下で、同じ機能を再実行する。

14.7 Fault Stop

正常な機能実行ができないため停止し、作業者の介入を要求する。

14.8 Safety Stop

人および設備への危険を制限するため、安全関連停止を実行する。

15. 状態重大度の分類

すべての異常状態を同じ方法で処理してはならない。

状態レベル

意味

一般的な対応

Normal

正常範囲内

運転継続

Deviation

小さな偏差

自動補正

Caution

異常の兆候

監視強化

Warning

品質または設備への影響の可能性

制限運転または警告

Fault

機能を完了できない

異常停止

Safety Critical

人または設備への危険

安全停止

Unknown

状態を信頼できない

動作禁止または復旧要求

重大度は、測定値の大きさだけで決定してはならない。

次の事項も考慮する必要がある。

  • 機械機能への影響

  • 製品品質への影響

  • 設備損傷の可能性

  • 人への危険

  • 復旧可能性

  • 認識した状態の信頼性

16. 複数信号を用いた状態判断

重要な状態は、一つの信号だけで判断しないことが望ましい。

16.1 同一状態の冗長検出

二つ以上のセンサで同じ状態を確認する。

例:

  • 二つのドアセンサ

  • 二つの位置センサ

  • エンコーダとリミットセンサ

16.2 異なる物理量による相互確認

異なる種類の信号を組み合わせて状態を判断する。

例:

  • 位置+圧力でクランプ完了を判断する

  • 速度+ブレーキフィードバックで停止を判断する

  • モータ電流+位置変化で詰まりを判断する

  • 温度+ヒータ出力で加熱異常を判断する

16.3 指令・応答・結果の比較

次の三つの要素を比較する。

  • どのような指令が出力されたか

  • 装置がどのように応答したか

  • 最終結果が発生したか

この比較は、伝達機構の不具合や装置故障を早期に検出するために有効である。

17. 運転モードに応じた状態判断

同じ信号でも、運転モードによって異なる解釈が必要になる場合がある。

17.1 自動運転

  • すべての機能完了条件を適用する

  • 厳格な工程インターロックを適用する

  • 状態を自動遷移させる

  • タイムアウトを自動判定する

17.2 手動運転

  • 個別装置の状態を中心に判断する

  • 自動状態遷移を制限する

  • 必須の衝突防止条件を維持する

  • 作業者操作中も状態を継続的に確認する

17.3 調整運転

  • 設定値変更後に状態を再評価する

  • 制限速度および制限ストロークを適用する

  • 段階ごとに状態を確認する

17.4 復旧モード

  • 既存の位置情報の信頼性を再評価する

  • 未完了機能の状態を確認する

  • 製品および工具の位置を確認する

  • 自動運転へ再移行できるかを判断する

17.5 保守モード

  • 一部の一般条件をバイパスできる場合がある

  • 安全条件および制限条件を維持する

  • 装置ごとの状態を直接表示する

  • バイパス状態を記録する

18. イベントベース判断と連続状態判断

18.1 イベントベース判断

Event-Based Decision

特定の信号変化が発生した時点で判断を行う。

例:

  • 製品到着

  • ボタン入力

  • 完了信号発生

  • アラーム発生

  • ドア開放

18.2 連続状態判断

Continuous Decision

状態値を継続的に監視する。

例:

  • 位置誤差

  • 温度

  • 圧力

  • 電流

  • 速度

  • 振動

イベントベース判断はシーケンスの遷移に適し、連続状態判断はフィードバック制御や異常監視に適している。

実際の機械では、両方の方式を組み合わせて使用する。

19. 異常状態と診断

状態認識では、単に異常を検出するだけでなく、想定される原因を区別できることが望ましい。

19.1 信号異常

  • センサ断線

  • 短絡

  • 信号固着

  • 電気ノイズ

  • 通信異常

  • 物理的に不自然な測定値

19.2 装置異常

  • モータが作動しない

  • シリンダが完了位置へ到達しない

  • バルブが応答しない

  • ブレーキが作動しない

  • ヒータ出力が異常である

19.3 機構異常

  • ベルト破損

  • カップリング離脱

  • 機械的な詰まり

  • 過度な摩擦

  • バックラッシ増加

19.4 工程異常

  • 製品が到着しない

  • 製品が重複している

  • 位置決め不良

  • クランプ不良

  • 検査不合格

19.5 状態不整合

  • 指令と実際の動作が一致しない

  • センサ同士が矛盾している

  • 工程状態と製品状態が一致しない

  • 制御装置内部の状態と実際の機械状態が一致しない

20. 状態復旧と再検証

異常が解除されたという理由だけで、状態を直ちに正常へ変更してはならない。

次の手順が必要である。

  1. 異常原因を除去する。

  2. 関連する信号が正常に復帰したことを確認する。

  3. 装置の実際の位置と状態を確認する。

  4. 必要に応じて原点復帰を実行する。

  5. 製品および工具の状態を確認する。

  6. 未完了の機能を整理する。

  7. インターロックと安全条件を再確認する。

  8. 作業者による意図的なリセットを確認する。

  9. Ready状態へ遷移する。

復旧後は、状態を再認識し、再検証しなければならない。

以前の状態を単純に復元する方法は、危険を伴う可能性がある。

21. 状態判断の優先順位

複数の判断が同時に発生する場合、優先順位を定義する必要がある。

一般的な優先順位は次のとおりである。

  1. Safety-Related Decision

  2. Equipment Protection Decision

  3. Fault Decision

  4. Process Quality Decision

  5. Functional Transition Decision

  6. Performance Optimization Decision

例えば、次の機能へ遷移する条件が成立していても、安全ドアが開いた場合は、状態遷移よりも安全停止を優先しなければならない。

優先順位が定義されていない場合、異なる制御指令が競合する可能性がある。

22. Control Function Executionとの関係

Control Function Executionは、実行すべき機能と指令を定義する。

Control State Recognition and Decisionは、次の事項を判断する。

  • 機能を開始できるか

  • 機能が正常に進行しているか

  • 機能が完了したか

  • 次の機能を開始できるか

  • 中断・再試行・復旧が必要か

すなわち、

Function Executionは動作を作り出し、State Recognition and Decisionはその動作の結果を評価して、次の動作を決定する。

23. Feedback Controlとの関係

状態認識は現在値を確認する。一方、フィードバック制御は目標値と実際値との差を小さくするため、出力を継続的に調整する。

例:

  • 状態認識:温度が正常範囲内にあるか

  • フィードバック制御:設定温度を維持するようにヒータ出力を調整する

  • 状態認識:位置が目標範囲に到達したか

  • フィードバック制御:位置誤差を小さくするようにモータ出力を調整する

状態認識は判断情報を提供し、フィードバック制御は継続的な調整を実行する。

24. Interlock Controlとの関係

状態認識の結果は、インターロックの入力条件として使用される。

例:

  • Clamp Complete状態でなければ、加工軸の下降を禁止する。

  • Product Present状態でなければ、加圧を禁止する。

  • Axis Stopped状態でなければ、ドアロックの解除を禁止する。

  • Pressure Normal状態でなければ、自動運転を禁止する。

インターロックは状態そのものを認識する機能ではない。認識された状態を利用して、動作を許可または遮断する機能である。

25. Safety-Related Controlとの関係

安全関連状態には、一般的な工程状態よりも高い信頼性と独立性が要求される。

例:

  • 安全ドア状態

  • 非常停止状態

  • 安全速度状態

  • 停止確認状態

  • ブレーキ状態

  • 危険領域への接近状態

安全状態の判断では、次の事項を考慮する必要がある。

  • 断線および接点溶着の検出

  • 二重チャンネル

  • 相互監視

  • 安全制御装置の診断

  • 安全出力のフィードバック

  • 再起動防止

一般PLCによる工程状態の判断だけで、安全機能を代替してはならない。

26. Assemblyとの連携

状態認識の信頼性は、センサの実際の取付状態に大きく影響される。

必要な組立情報

  • センサ取付基準面

  • 検出方向

  • 検出距離

  • 調整範囲

  • ブラケット剛性

  • ケーブル引出し方向

  • 汚れおよび衝撃からの保護

  • センサと検出対象物の関係

  • 繰返し組立時の基準位置

  • 交換後の再調整方法

組立誤差が状態判断の許容範囲より大きい場合、信号の再現性を確保できない。

したがって、センサ取付公差と状態判断の許容範囲を併せて検討する必要がある。

27. Manufacturingとの連携

製造されるすべての機械で、同一の状態判断を再現できなければならない。

管理すべき項目

  • センサ設定値

  • しきい値

  • ヒステリシス

  • デバウンス時間

  • フィルタ条件

  • タイムアウト

  • 許容偏差

  • 警告および停止基準

  • 信号論理

  • センサ校正値

製造・試運転試験

  • センサON/OFF試験

  • アナログ値範囲試験

  • 信号断線試験

  • 相反信号試験

  • タイムアウト試験

  • 状態遷移試験

  • モード別判断試験

  • 通信断試験

  • 電源復帰後の状態試験

  • センサ交換後の再設定試験

28. 主要な設計成果物

成果物

目的

State Variable List

認識すべき状態変数を定義する

Signal List

状態判断に使用する信号を定義する

State Definition Table

各状態の意味と成立条件を定義する

State Logic Diagram

信号を状態へ変換する論理を定義する

State Transition Diagram

状態間の遷移条件を定義する

Decision Table

状態別の制御判断を定義する

Threshold List

しきい値と許容範囲を定義する

Signal Validation List

信号の有効性判断基準を定義する

Timing Condition List

保持時間・遅延・タイムアウトを定義する

Conflict Matrix

相反信号とその対応を定義する

Severity Classification

状態の重大度と対応レベルを定義する

Diagnostic List

異常状態と想定原因を定義する

Recovery Validation List

復旧後に再確認する条件を定義する

State Recognition Test Sheet

状態認識試験と合格基準を定義する

29. 状態認識・判断制御の確認事項

状態定義

  • 必要な状態が明確に定義されているか

  • 信号と状態が区別されているか

  • 装置状態と最終的な機能状態が区別されているか

  • Unknown状態およびConflicting状態が定義されているか

信号の信頼性

  • センサ信号が実際の状態を表しているか

  • 範囲確認と変化率確認が行われているか

  • ノイズとチャタリングが処理されているか

  • 相反する信号を検出できるか

  • 指令と応答の関係が確認されているか

判断基準

  • 正常範囲と異常範囲が定義されているか

  • しきい値とヒステリシスが適切か

  • 時間条件が含まれているか

  • 複数の信号が適切に組み合わされているか

  • 判断の優先順位が定義されているか

動作判断

  • 開始・継続・完了の許可条件が区別されているか

  • Hold、Restrict、Retry、Stopの条件が明確か

  • 次状態への遷移条件が定義されているか

  • 状態が不確実な場合に動作が遮断されるか

復旧

  • 状態を信頼できない場合の復旧方法があるか

  • 原点復帰の要否が定義されているか

  • 復旧後に状態を再検証しているか

  • 自動運転へ再移行する条件が明確か

組立と製造

  • センサ位置の公差が定義されているか

  • 判断パラメータを一貫して再現できるか

  • すべての状態を試験できるか

  • 信号故障および相反状態を試験しているか

30. 結論

Control State Recognition and Decisionは、機械の物理的信号を意味のある状態へ変換し、その状態に基づいて機能の実行・継続・完了・中断・復旧を決定する制御領域である。

その目的は、センサの数を増やすことではない。

次の関係を明確に設計することが重要である。

  • どの状態を把握しなければならないか

  • どの信号によってその状態を確認するか

  • その信号を信頼できるか

  • 複数の信号が相互に整合しているか

  • 状態を正常・異常・不確実のどれに分類するか

  • その状態でどの動作を許可または遮断するか

  • いつ次の状態へ遷移するか

  • 状態情報を失った場合、どのように復旧し再検証するか

優れた状態認識・判断制御は、正常な信号だけを処理するものではない。

センサ故障、相返信号、位置情報喪失、通信断、電源復帰などの不確実な状態においても、機械が誤った判断を行わないように設計される。

これにより、Control Function Executionは実際の機械状態に基づいて実行され、Interlock、Fault Recovery、およびSafety-Related Controlは、一貫した状態情報を基に安定して機能できる。