機械設計で使用される非鉄金属の詳細分類

機械設計で使用される非鉄金属の詳細分類

1. 非鉄金属の基本概念

非鉄金属とは、鉄を主成分としない金属材料を意味する。

厳密には、鉄をまったく含まない金属だけを指すものではない。一部の非鉄合金には少量の鉄が含まれることがあるが、材料の基本的な性質を決定する主成分が鉄ではなく、アルミニウム、銅、マグネシウム、チタン、ニッケル、亜鉛などである点で鉄鋼材料と区別される。

機械設計において、非鉄金属は主に次の目的で使用される。

  • 部品の軽量化

  • 耐食性の向上

  • 熱伝導性の確保

  • 電気伝導性の確保

  • 非磁性特性の確保

  • 摩擦特性および軸受性能の改善

  • 高温性能の確保

  • 特殊な化学環境への対応

  • 外観および表面品質の向上

  • 鋳造性および成形性の改善

非鉄金属は一般に鉄鋼材料より高価であるが、密度、耐食性、伝導性、鋳造性、高温特性などにおいて、鉄鋼では代替しにくい固有の長所を持つ。

2. 非鉄金属の主な分類

機械設計でよく使用される非鉄金属は、次のように分類できる。

  1. アルミニウムおよびアルミニウム合金

  2. 銅および銅合金

  3. マグネシウムおよびマグネシウム合金

  4. チタンおよびチタン合金

  5. ニッケルおよびニッケル合金

  6. 亜鉛および亜鉛合金

  7. すず系および鉛系合金

  8. その他の特殊非鉄金属

各材料群は、密度、強度、耐食性、熱伝導性、溶接性、鋳造性、コストなどが大きく異なる。

3. 主な合金元素の役割

非鉄金属の機械的性質は、母材金属そのものだけでなく、添加される合金元素の種類と含有量によって大きく変化する。

3.1 シリコン — Si

主な役割:

  • アルミニウム合金の鋳造性を向上させる。

  • 溶湯の流動性を高める。

  • 鋳造収縮および熱膨張を低減する。

  • 耐摩耗性を向上させることがある。

  • 過剰に含まれると、延性や切削性が低下する場合がある。

アルミニウムダイカスト合金にシリコンが多く含まれるのは、複雑な金型内部まで溶湯を流れやすくするためである。

3.2 マグネシウム — Mg

主な役割:

  • アルミニウム合金の強度を高める。

  • 加工硬化特性を向上させる。

  • 耐食性を改善する場合がある。

  • シリコンと結合してMg₂Si析出物を形成する。

  • 熱処理型アルミニウム合金の強化に寄与する。

マグネシウムは、5000系および6000系アルミニウム合金における重要な合金元素である。

3.3 銅 — Cu

主な役割:

  • アルミニウム合金の強度と熱処理性を高める。

  • 時効硬化を可能にする。

  • 高温強度を向上させる。

  • 黄銅では亜鉛とともに強度および加工性を調整する。

  • 過剰な銅は、アルミニウム合金の耐食性を低下させる場合がある。

2000系アルミニウム合金の高い強度は、主として銅の添加と時効硬化によって形成される。

3.4 亜鉛 — Zn

主な役割:

  • アルミニウム合金で高い強度を実現する。

  • マグネシウムと組み合わせることで、強い時効硬化効果を生じさせる。

  • 銅と合金化することで黄銅を形成する。

  • ダイカスト合金の鋳造性と寸法精度を向上させる。

7000系アルミニウム合金は、亜鉛とマグネシウムの添加によって非常に高い強度を得る。

3.5 マンガン — Mn

主な役割:

  • アルミニウム合金の強度と耐食性を補完する。

  • 結晶粒を微細化する。

  • 鉄系不純物の悪影響を低減する。

  • 固溶強化によって強度を高める。

マンガンは、3000系アルミニウム合金の主要合金元素である。

3.6 すず — Sn

主な役割:

  • 銅合金の耐食性および軸受特性を改善する。

  • 青銅の強度と耐摩耗性を高める。

  • はんだ付け性および接合性を改善する。

  • 低融点合金を形成する。

すず青銅は、耐摩耗性と耐食性に優れるため、軸受、ブッシュ、ウォームギアなどに使用される。

3.7 ニッケル — Ni

主な役割:

  • 銅合金およびニッケル合金の耐食性を高める。

  • 高温強度を改善する。

  • チタン合金および超耐熱合金の組織を安定化する。

  • 化学環境および海水環境への耐性を向上させる。

3.8 クロム — Cr

非鉄合金における主な役割:

  • ニッケル合金の耐酸化性および高温腐食抵抗性を高める。

  • 銅合金の強度と耐摩耗性を高める。

  • 一部のアルミニウム合金で結晶粒組織や応力腐食割れ抵抗性を改善する。

3.9 鉄 — Fe

非鉄金属では、鉄は一般に不純物または補助的な合金元素として存在する。

主な影響:

  • アルミニウムでは、過剰な鉄が脆い金属間化合物を形成することがある。

  • 銅では、電気伝導性を低下させる場合がある。

  • ニッケル合金では、組織の安定化やコスト調整に使用される場合がある。

  • チタンでは強度を高めるが、延性や耐食性を低下させる場合がある。

4. アルミニウムおよびアルミニウム合金

4.1 基本特性

アルミニウムは、機械設計で最も広く使用される非鉄金属の一つである。

主な特徴:

  • 密度は約2.7 g/cm³で、鉄鋼の約3分の1である。

  • 比較的優れた耐食性を持つ。

  • 熱伝導性と電気伝導性が良い。

  • 切削、押出し、圧延、鋳造が可能である。

  • 自然に酸化皮膜を形成する。

  • アルマイト処理が可能である。

  • 弾性係数が鉄鋼より低い。

  • 高温になると強度が急速に低下する。

アルミニウムは単に軽い材料ではなく、軽量化、耐食性、加工性、熱伝導性を同時に確保できる材料である。

4.2 アルミニウム合金の系統分類

展伸用アルミニウム合金は、一般に次のように分類される。

系統

主な合金元素

代表的特徴

1000系

高純度アルミニウム

高い伝導性、優れた耐食性

2000系

Cu

高強度、耐食性は比較的低い

3000系

Mn

良好な成形性、中程度の強度

4000系

Si

低融点、溶接材・鋳造材

5000系

Mg

優れた耐食性と溶接性

6000系

Mg-Si

強度・加工性・耐食性のバランス

7000系

Zn-Mg

非常に高い強度

8000系

その他の元素

特殊用途

4.3 純アルミニウム — A1050

代表的な化学成分

成分

代表含有量、wt.%

Al

99.50以上

Fe

0.40以下

Si

0.25以下

Cu

0.05以下

Mn

0.05以下

Mg

0.05以下

Zn

0.05以下

Ti

0.03以下

成分と特性の関係

アルミニウム純度が高いため、次の特性を示す。

  • 電気伝導性が高い。

  • 熱伝導性が高い。

  • 耐食性が良い。

  • 成形性が非常に良い。

  • 強度と硬度は低い。

  • 切削時に工具へ付着しやすい。

鉄とシリコンは不純物として存在する。これらの含有量が増えると強度はわずかに上昇するが、伝導性と延性は低下することがある。

主な用途

  • 電気導体

  • ヒートシンク

  • 化学用容器

  • 反射板

  • カバー

  • 装飾板

  • 熱交換器用フィン

4.4 A5052

A5052は、マグネシウムを主要合金元素とする5000系アルミニウム合金である。

代表的な化学成分

成分

代表範囲、wt.%

Mg

2.2~2.8

Cr

0.15~0.35

Fe

0.40以下

Si

0.25以下

Cu

0.10以下

Mn

0.10以下

Zn

0.10以下

Al

残部

成分と特性の関係

マグネシウム

マグネシウムはアルミニウムの結晶格子に固溶し、強度と加工硬化性を高める。

マグネシウムの添加により、次の特性が向上する。

  • 強度

  • 耐食性

  • 海洋環境への抵抗性

  • 溶接後の強度

  • 板金成形性

クロム

クロムは結晶粒組織と耐食性を安定化し、応力腐食割れ感受性の低減に寄与する。

機械的特性

  • 中程度の強度

  • 優れた耐食性

  • 良好な溶接性

  • 良好な板金曲げ性

  • 熱処理硬化不可

  • 冷間加工による強度向上が可能

主な用途

  • 機械カバー

  • 板金フレーム

  • 食品機械の非接触部

  • 海洋構造物

  • 燃料タンク

  • ケース

  • ブラケット

4.5 A6061

A6061は、マグネシウムとシリコンを主要合金元素とする代表的な6000系熱処理型合金である。

代表的な化学成分

成分

代表範囲、wt.%

Mg

0.8~1.2

Si

0.4~0.8

Cu

0.15~0.40

Cr

0.04~0.35

Fe

0.70以下

Mn

0.15以下

Zn

0.25以下

Ti

0.15以下

Al

残部

成分と特性の関係

マグネシウムとシリコン

マグネシウムとシリコンは結合してMg₂Si析出物を形成する。

溶体化処理と時効処理を行うことで、微細なMg₂Si粒子が転位の移動を妨げ、強度を高める。

銅

銅は強度と時効硬化反応を補強するが、含有量が増えると耐食性がわずかに低下する場合がある。

クロム

クロムは結晶粒組織および靭性を安定化する。

機械的特性

  • 強度と加工性のバランスが良い。

  • 切削性が良い。

  • 押出し加工性が優れている。

  • 溶接性が比較的良い。

  • 耐食性が良好である。

  • T6状態で高い強度を持つ。

  • 溶接熱影響部では強度が低下する場合がある。

主な用途

  • 機械フレーム

  • アルミニウムプロファイル

  • ロボット構造物

  • 治具

  • ベース

  • プレート

  • シャフトハウジング

  • 自動化装置

4.6 A7075

A7075は、亜鉛とマグネシウムを主要合金元素とする高強度7000系合金である。

代表的な化学成分

成分

代表範囲、wt.%

Zn

5.1~6.1

Mg

2.1~2.9

Cu

1.2~2.0

Cr

0.18~0.28

Fe

0.50以下

Si

0.40以下

Mn

0.30以下

Ti

0.20以下

Al

残部

成分と特性の関係

亜鉛とマグネシウム

亜鉛とマグネシウムはMgZn₂系析出物を形成し、非常に強い時効硬化効果を生じさせる。

銅

銅は強度と高温特性をさらに向上させる。

クロム

クロムは結晶粒組織と応力腐食割れ抵抗性を改善する。

機械的特性

  • 非常に高い強度

  • 高い疲労強度

  • 低密度

  • 良好な切削性

  • 溶接性が低い

  • 6061より耐食性が低い

  • 応力腐食割れに注意が必要

  • 高価である

主な用途

  • 航空機構造

  • 高強度治具

  • 軽量ロボットアーム

  • 高荷重アルミニウム部品

  • 金型プレート

  • 精密構造部品

4.7 ADC12アルミニウムダイカスト合金

ADC12は、広く使用されているAl-Si-Cu系ダイカスト合金である。

代表的な化学成分

成分

代表範囲、wt.%

Si

9.6~12.0

Cu

1.5~3.5

Fe

1.3以下

Mn

0.5以下

Mg

0.3以下

Zn

1.0以下

Ni

0.5以下

Sn

0.3以下

Al

残部

成分と特性の関係

高いシリコン含有量

  • 溶湯の流動性を高める。

  • 複雑形状の鋳造に有利である。

  • 収縮を低減する。

  • 耐摩耗性を高める。

銅

  • 強度と硬度を高める。

  • 切削性を改善する。

  • 耐食性を低下させる場合がある。

鉄

鉄は金型への焼付きや溶着を低減するが、過剰になると脆い金属間化合物を形成する。

機械的特性

  • 鋳造性が非常に良い。

  • 複雑な薄肉部品を製作できる。

  • 寸法精度が良い。

  • 切削性が良好である。

  • 溶接性と延性は限定的である。

  • 展伸材より疲労強度と靭性が低い。

  • 内部に気孔が存在する場合がある。

主な用途

  • モーターハウジング

  • 減速機ケース

  • 電子機器ハウジング

  • 自動車部品

  • ポンプケース

  • 複雑な機械カバー

5. 銅および銅合金

5.1 基本特性

銅は、優れた電気伝導性と熱伝導性を持つ代表的な非鉄金属である。

主な特徴:

  • 電気伝導性が非常に高い。

  • 熱伝導性に優れる。

  • 耐食性が良い。

  • 延性と成形性が良い。

  • 抗菌性を持つ。

  • 密度は約8.9 g/cm³で比較的重い。

  • 純銅の強度は低い。

  • 合金化によって強度と耐摩耗性を高めることができる。

5.2 純銅 — C1100

代表的な化学成分

成分

代表含有量、wt.%

Cu

99.90以上

O

約0.02~0.05

その他

微量

成分と特性

高い銅純度により、優れた電気伝導性と熱伝導性を示す。

少量の酸素はCu₂Oとして存在する場合があり、水素雰囲気中で加熱すると水素脆化が発生する可能性がある。

機械的特性

  • 強度が低い。

  • 延性が高い。

  • 伝導性が非常に優れている。

  • 成形性が良い。

  • はんだ付け性が良い。

  • 切削性は低い。

  • 加工硬化が可能である。

主な用途

  • 電気端子

  • バスバー

  • ケーブル

  • 放熱部品

  • 熱交換器

  • 電極

  • 接地部品

5.3 黄銅 — C2600系

黄銅は、銅と亜鉛の合金である。

代表的な化学成分

成分

代表範囲、wt.%

Cu

約68.5~71.5

Zn

残部、約28.5~31.5

Pb

微量

Fe

微量

成分と特性の関係

亜鉛

亜鉛は銅より安価であり、銅に添加すると次の効果が得られる。

  • 強度の増加

  • 硬度の増加

  • 切削性および成形性の変化

  • 材料費の低減

  • 色調の変化

亜鉛含有量が増えると一般に強度は高くなるが、組成や環境によっては延性や耐食性が低下する場合がある。

機械的特性

  • 純銅より強度が高い。

  • 成形性が良い。

  • 外観が良い。

  • 耐食性が良好である。

  • 快削黄銅は非常に優れた切削性を持つ。

  • アンモニア環境では応力腐食割れに注意が必要である。

主な用途

  • 継手

  • バルブ部品

  • 端子

  • ねじ

  • 装飾部品

  • センサー部品

  • 精密切削部品

5.4 快削黄銅 — C3604

代表的な化学成分

成分

代表範囲、wt.%

Cu

約57~61

Pb

約1.8~3.7

Fe

0.5以下

Zn

残部

成分と特性の関係

鉛

鉛は銅-亜鉛母相にほとんど固溶せず、微細な粒子として存在する。

切削時に鉛粒子が切りくずを細かく分断し、工具との摩擦を低減するため、非常に優れた切削性を示す。

ただし、鉛は環境規制、食品接触、飲料水用途において使用が制限される場合がある。

機械的特性

  • 非常に優れた切削性

  • 良好な寸法精度

  • ねじ加工に適している

  • 冷間成形性は限定的

  • 溶接性は限定的

  • 食品および飲料水接触用途では鉛フリー黄銅を検討する必要がある

主な用途

  • バルブ

  • 継手

  • 精密ねじ

  • コネクター

  • ノズル

  • 自動旋盤部品

5.5 すず青銅 — CAC406または類似材

すず青銅は、銅とすずを主成分とする合金である。

代表的な化学成分例

成分

代表範囲、wt.%

Cu

約83~87

Sn

約4~6

Zn

約4~6

Pb

約4~6

その他

微量

実際の成分は鋼種によって大きく異なる。

成分と特性の関係

すず

  • 強度と硬度を高める。

  • 耐食性と耐摩耗性を改善する。

  • 海水環境での性能を向上させる。

鉛

  • 潤滑性を高める。

  • 軸受特性を改善する。

  • 切削性を向上させる。

  • 衝撃強度を低下させる場合がある。

亜鉛

鋳造性および溶湯流動性を改善し、コスト調整にも寄与する。

機械的特性

  • 優れた耐摩耗性

  • 良好な摺動特性

  • 良好な耐食性

  • 比較的高い荷重支持能力

  • 純銅より低い伝導性

  • 高価である

主な用途

  • ブッシュ

  • すべり軸受

  • ウォームホイール

  • バルブ

  • ポンプインペラー

  • 海洋部品

5.6 アルミニウム青銅

アルミニウム青銅は、銅にアルミニウムを添加した高強度銅合金である。

代表的な化学成分例

成分

代表範囲、wt.%

Cu

約80~90

Al

約8~12

Fe

約1~5

Ni

鋼種により0~5

Mn

少量

成分と特性の関係

アルミニウム

銅母相に強い固溶強化を与え、表面に安定したアルミニウム酸化皮膜を形成する。

鉄およびニッケル

組織を微細化し、強度、耐食性、耐エロージョン性を向上させる。

機械的特性

  • 銅合金の中では高い強度を持つ。

  • 海水耐食性に優れる。

  • 耐摩耗性と耐キャビテーション性が良い。

  • 火花を発生しにくい。

  • 黄銅より切削性が低い。

主な用途

  • 海水ポンプ

  • プロペラ

  • バルブ

  • ウォームギア

  • 高荷重ブッシュ

  • 防爆工具

5.7 ベリリウム銅

ベリリウム銅は、高強度と電気伝導性を両立する析出硬化型銅合金である。

代表的な化学成分

成分

代表範囲、wt.%

Be

約1.8~2.0

Co + Ni

約0.2~0.6

Cu

残部

成分と特性の関係

ベリリウムは熱処理後に微細な析出物を形成し、強度を大幅に高める。

コバルトとニッケルは析出挙動および結晶粒組織を調整する。

機械的特性

  • 非常に高い強度

  • 高い疲労強度

  • 良好な電気伝導性

  • 優れたばね特性

  • 火花を発生しにくい

  • 優れた耐摩耗性

  • 高価である

  • 加工時のベリリウム粉じん管理が必要

主な用途

  • ばね接点

  • 精密端子

  • 金型部品

  • 防爆工具

  • センサースプリング

  • 高荷重電気接点

6. マグネシウムおよびマグネシウム合金

6.1 基本特性

マグネシウムは、実用構造用金属の中で最も軽い部類に属する。

密度は約1.74 g/cm³で、アルミニウムより約35%軽い。

主な特徴:

  • 非常に低い密度

  • 優れた切削性

  • 良好な振動減衰性

  • ダイカストに適している

  • 弾性係数が低い

  • 耐食性が限定的

  • 高温強度が限定的

  • 粉末や切りくずに火災リスクがある

6.2 AZ91D

AZ91Dは、代表的なマグネシウムダイカスト合金である。

代表的な化学成分

成分

代表範囲、wt.%

Al

8.3~9.7

Zn

0.35~1.0

Mn

0.15~0.50

Si

0.10以下

Cu

0.030以下

Ni

0.002以下

Fe

0.005以下

Mg

残部

成分と特性の関係

アルミニウム

  • 強度と鋳造性を高める。

  • 耐食性を改善する。

  • 硬度を高める。

亜鉛

  • 強度と鋳造性を向上させる。

  • 過剰になると耐食性や熱間割れに悪影響を与える場合がある。

マンガン

鉄系不純物と結合し、それらが耐食性に及ぼす悪影響を低減する。

機械的特性

  • 非常に軽い。

  • 鋳造性に優れる。

  • 振動減衰性が良い。

  • 切削性が非常に良い。

  • 衝撃靭性は限定的である。

  • 高温でクリープ性能が低下する。

  • ガルバニック腐食に注意が必要である。

主な用途

  • 電子機器ケース

  • 自動車用ハウジング

  • 軽量機械カバー

  • 携帯型装置

  • 減速機ケース

  • ロボット部品

7. チタンおよびチタン合金

7.1 基本特性

チタンは、比強度に優れ、非常に高い耐食性を持つ金属である。

主な特徴:

  • 密度は約4.5 g/cm³

  • 高い比強度

  • 優れた耐食性

  • 海水および塩化物環境に強い

  • 生体適合性が高い

  • 非磁性

  • 熱伝導性が低い

  • 弾性係数が低い

  • 切削および成形が難しい

  • 高価である

7.2 純チタン Grade 2

代表的な化学成分

成分

代表含有量、wt.%

Ti

残部

Fe

0.30以下

O

0.25以下

C

0.08以下

N

0.03以下

H

0.015以下

成分と特性の関係

酸素

チタンにおいて酸素は強力な固溶強化元素である。

酸素含有量が増えると:

  • 強度が増加する。

  • 硬度が増加する。

  • 延性が低下する。

  • 衝撃靭性が低下する。

鉄

鉄は強度を高めるが、過剰になると延性および耐食性を低下させる場合がある。

機械的特性

  • 中程度の強度

  • 非常に優れた耐食性

  • 良好な成形性

  • 優れた溶接性

  • 非磁性

  • 低い熱伝導性

主な用途

  • 化学用タンク

  • 熱交換器

  • 海水配管

  • 医療機器

  • 食品・医薬設備

  • 腐食性環境用部品

7.3 Ti-6Al-4V、Grade 5

代表的な化学成分

成分

代表範囲、wt.%

Al

5.5~6.75

V

3.5~4.5

Fe

0.40以下

O

0.20以下

C

0.08以下

N

0.05以下

H

0.015以下

Ti

残部

成分と特性の関係

アルミニウム

α相を安定化し、高温強度と剛性を高める。

バナジウム

β相を安定化し、熱処理性および強度と靭性のバランスを調整する。

酸素

固溶強化によって強度を高めるが、延性を低下させる。

機械的特性

  • 非常に高い比強度

  • 高い疲労強度

  • 優れた耐食性

  • 熱処理可能

  • 切削加工が難しい

  • 摩擦時にかじりが発生しやすい

  • 弾性係数が鉄鋼より低い

  • 高価である

主な用途

  • 航空機部品

  • 高強度軽量シャフト

  • 医療用インプラント

  • ロボット部品

  • 高性能締結部品

  • 化学設備

8. ニッケルおよびニッケル合金

8.1 基本特性

ニッケル合金は、高温、高圧、強い腐食性を持つ化学環境で使用される。

主な特徴:

  • 優れた高温強度

  • 優れた耐酸化性

  • 優れた耐食性

  • 優れた耐クリープ性

  • 良好な熱疲労特性

  • 高価である

  • 切削性が悪い

  • 切削負荷が大きい

8.2 Inconel 625

代表的な化学成分

成分

代表範囲、wt.%

Ni

約58以上

Cr

20~23

Mo

8~10

Nb + Ta

3.15~4.15

Fe

5以下

Co

1以下

C

0.10以下

Mn

0.5以下

Si

0.5以下

成分と特性の関係

ニッケル

母相を形成し、高温および腐食環境で組織を安定化する。

クロム

耐酸化性および高温腐食抵抗性を高める。

モリブデン

還元性酸および塩化物環境における耐食性を向上させる。

ニオブ

固溶強化および析出強化によって強度を高める。

機械的特性

  • 優れた高温強度

  • 非常に高い耐食性

  • 海水環境に強い

  • 溶接性が比較的良い

  • 加工硬化が大きい

  • 切削性が非常に悪い

  • 高価である

主な用途

  • 化学設備

  • 海洋配管

  • 高温ダクト

  • タービン部品

  • 熱交換器

  • 高温用締結部品

8.3 Hastelloy C-276

代表的な化学成分

成分

代表範囲、wt.%

Ni

残部、約50以上

Mo

15~17

Cr

14.5~16.5

Fe

4~7

W

3~4.5

Co

2.5以下

C

0.01以下

成分と特性の関係

高いモリブデン含有量

強い還元性環境およびすきま腐食への抵抗性を向上させる。

クロム

酸化性環境に対する耐性を与える。

タングステン

局部腐食抵抗性および高温強度を補完する。

低炭素

溶接部での炭化物析出および粒界腐食リスクを低減する。

主な用途

  • 強酸設備

  • 化学反応器

  • 排ガス処理設備

  • 腐食性配管

  • 医薬・化学生産設備

9. 亜鉛および亜鉛合金

9.1 基本特性

亜鉛は、耐食性、優れた鋳造性、低い融点を特徴とする。

主な特徴:

  • ダイカスト性が非常に良い。

  • 精密な形状を製作できる。

  • 表面品質が良い。

  • 鉄鋼の犠牲防食用めっきに使用される。

  • 密度が比較的高い。

  • 高温強度が低い。

  • 長期荷重下ではクリープに注意が必要である。

9.2 ZDC2またはZamak 3系

代表的な化学成分

成分

代表範囲、wt.%

Al

約3.5~4.3

Mg

約0.02~0.06

Cu

約0.25以下

Fe

約0.10以下

Zn

残部

成分と特性の関係

アルミニウム

強度、硬度、溶湯流動性を高める。

マグネシウム

粒界腐食を抑制し、組織を安定化する。

銅

強度と耐摩耗性を高めるが、寸法安定性や腐食特性に影響を与える場合がある。

機械的特性

  • 非常に優れたダイカスト性

  • 高い寸法精度

  • 良好な表面品質

  • 薄肉鋳造が可能

  • 衝撃特性が良い

  • 高温クリープに弱い

  • 比較的重い

主な用途

  • ハンドル

  • レバー

  • 小型ハウジング

  • 精密機械部品

  • ロック機構

  • 電子機器部品

  • 低荷重用ギアおよびカム

10. すず系および鉛系合金

10.1 すず系軸受合金

すず系バビットメタルは、すべり軸受に使用される。

代表的な組成例

成分

代表範囲、wt.%

Sn

約80~90

Sb

約7~12

Cu

約3~8

成分と特性の関係

すず

軟らかい母相と耐食性を提供する。

アンチモン

硬度を高め、荷重支持能力を向上させる。

銅

硬質金属間化合物を形成し、耐摩耗性と疲労強度を向上させる。

機械的特性

  • 優れたなじみ性

  • 良好な埋込み性

  • 低い摩擦

  • 軸の損傷を低減

  • 高温強度は限定的

  • 軸受ライニング材に適する

10.2 鉛系合金の注意点

鉛は次の特性を持つ。

  • 低い融点

  • 高い密度

  • 優れた放射線遮蔽性

  • 良好な振動減衰性

  • 低い強度

  • 毒性および環境規制上の問題

現在、食品、飲料水、電気・電子機器、生活用品では鉛の使用が大きく制限されている。

鉛を含む黄銅、青銅、はんだ材については、適用される環境規制および製品安全基準を必ず確認する必要がある。

11. 主な非鉄金属の比較

材料群

密度

強度

耐食性

熱伝導性

加工性

代表用途

アルミニウム

低い

低~非常に高い

良好

高い

良好

フレーム、カバー、ハウジング

銅

高い

低~高い

優秀

非常に高い

合金により異なる

電極、ブッシュ、熱交換器

マグネシウム

非常に低い

中程度

限定的

中程度

非常に良い

軽量ハウジング

チタン

中程度

高い

非常に優秀

低い

困難

高強度・耐食部品

ニッケル合金

高い

高い

非常に優秀

低い

非常に困難

高温・化学設備

亜鉛合金

高い

中程度

良好

中程度

鋳造性に優れる

精密ダイカスト

すず系合金

高い

低い

良好

中程度

良好

軸受ライニング

12. 機械部品別の非鉄金属選定

12.1 軽量フレーム

推奨材料:

  • A6061

  • A6063

  • A5052

選定基準:

  • 押出しプロファイル:6063または6061

  • 切削加工フレーム:6061

  • 板金カバーおよびフレーム:5052

  • 高強度軽量構造:7075

12.2 ハウジング

推奨材料:

  • ADC12

  • AZ91D

  • A6061

  • ZDC2

選定基準:

  • 複雑な量産部品:ADC12

  • 超軽量ハウジング:AZ91D

  • 精密切削ハウジング:A6061

  • 小型精密ダイカスト:ZDC2

12.3 ブッシュおよびすべり軸受

推奨材料:

  • すず青銅

  • 鉛青銅

  • アルミニウム青銅

  • ベリリウム銅

  • バビットメタル

選定基準:

  • 一般ブッシュ:すず青銅

  • 高荷重・海水環境:アルミニウム青銅

  • 高い伝導性とばね性:ベリリウム銅

  • 軸受ライニング:バビットメタル

12.4 熱交換部品

推奨材料:

  • 純銅

  • アルミニウム

  • 純チタン

  • ニッケル合金

選定基準:

  • 最大の熱伝導性:銅

  • 軽量放熱:アルミニウム

  • 海水・腐食環境:チタン

  • 高温・化学環境:ニッケル合金

12.5 電気端子および接点

推奨材料:

  • 純銅

  • 黄銅

  • ベリリウム銅

  • りん青銅

選定基準:

  • 最大の電気伝導性:純銅

  • 切削性とコスト:黄銅

  • ばね性と伝導性:ベリリウム銅

  • 繰返し弾性と耐摩耗性:りん青銅

13. 食品機械で非鉄金属を使用する際の注意点

食品機械では、非鉄金属を強度だけで評価してはならない。

次の項目をあわせて検討する必要がある。

  • 食品適合性

  • 腐食

  • 金属イオンの溶出

  • 表面損傷

  • 洗浄薬品との反応

13.1 アルミニウム

使用可能部位:

  • 非接触フレーム

  • カバー

  • ハウジング

  • ガイド

  • 放熱部品

注意点:

  • 強アルカリおよび強酸環境で腐食する場合がある。

  • 食品接触用途では表面処理の損傷を検討する必要がある。

  • アルマイト層が摩耗すると母材が露出する。

  • 塩分および強い洗浄薬品環境では腐食の可能性がある。

13.2 銅および銅合金

使用可能部位:

  • 熱交換器

  • 電気部品

  • 非接触ブッシュ

  • 一部のバルブおよび継手

注意点:

  • 酸性食品と直接接触すると、銅イオンが溶出する場合がある。

  • 鉛を含む黄銅は、食品および飲料水接触用途で制限される。

  • 緑青や表面腐食を管理する必要がある。

13.3 チタン

チタンは、食品、医薬、化学設備で高い耐食性と衛生性が要求される場合に有利である。

長所:

  • 優れた耐食性

  • 金属イオンの溶出が少ない

  • 塩化物環境に強い

  • 非磁性

  • 生体適合性

限界:

  • 高価である。

  • 切削加工が難しい。

  • かじりや摩擦問題が発生しやすい。

  • 適切な供給体制と溶接技術が必要である。

13.4 鉛およびベリリウム

鉛

  • 食品接触部への使用を避ける必要がある。

  • 適用される環境規制および衛生規制を確認する必要がある。

ベリリウム銅

  • 完成部品は安定して使用できるが、加工中に発生する粉じんやヒュームは有害である。

  • 切削、研磨、溶接作業では厳格な安全管理が必要である。

14. 非鉄金属の選定手順

非鉄金属は、次の順序で選定することが望ましい。

14.1 機能の確認

  • 構造を支持するのか。

  • 軽量化が重要なのか。

  • 熱を伝達する必要があるのか。

  • 電気を伝導する必要があるのか。

  • 摩擦や摩耗を受けるのか。

  • 高温または腐食環境で使用されるのか。

  • 食品と接触するのか。

14.2 荷重の確認

  • 引張

  • 圧縮

  • 曲げ

  • ねじり

  • 衝撃

  • 繰返し疲労

  • 接触荷重

  • クリープ

アルミニウムとマグネシウムは鉄鋼より弾性係数が低いため、強度だけでなく、たわみや振動もあわせて検討する必要がある。

14.3 環境の確認

  • 水

  • 塩分

  • 酸

  • アルカリ

  • 海水

  • 高温

  • 真空

  • 電気化学的接触

  • 洗浄薬品

異種金属が接触し、電解質が存在すると、ガルバニック腐食が発生する場合がある。

14.4 製造工程の確認

  • 切削

  • 押出し

  • 板金加工

  • 鍛造

  • 鋳造

  • ダイカスト

  • 溶接

  • ろう付け

  • 熱処理

  • 表面処理

同じアルミニウム系材料でも、展伸材と鋳造材では内部組織や疲労性能が大きく異なる。

14.5 コストと入手性の確認

検討項目:

  • 原材料価格

  • 標準形状での供給可否

  • 最小発注量

  • 加工費

  • 熱処理費

  • 表面処理費

  • リサイクル性

  • 修理性

  • 装置寿命

高性能材料が常に最も経済的であるとは限らない。

15. 図面および材料仕様書に記載すべき事項

15.1 材料名と規格

例:

  • JIS H 4000 A5052P-H32

  • JIS H 4040 A6061BE-T6

  • ASTM B221 6061-T6

  • JIS H 3250 C3604

  • ASTM B348 Titanium Grade 2

  • ASTM B443 Alloy 625

材料名とともに、製品形状および熱処理状態を記載することが望ましい。

15.2 調質または熱処理状態

アルミニウムの例:

  • O:焼なまし状態

  • H32:加工硬化後に安定化処理

  • T4:溶体化処理後に自然時効

  • T6:溶体化処理後に人工時効

同じA6061でも、O、T4、T6の状態によって強度と成形性が大きく異なる。

15.3 表面処理

アルミニウム

  • アルマイト処理

  • 硬質アルマイト処理

  • 化成皮膜処理

  • 塗装

  • 無電解ニッケルめっき

銅合金

  • ニッケルめっき

  • すずめっき

  • 銀めっき

  • クロムめっき

チタン

  • 酸洗い

  • アノダイジング

  • 表面研磨

15.4 化学成分証明書

重要部品では、供給業者のミルシートまたは材料証明書を確認する必要がある。

確認項目:

  • 主要合金元素

  • 不純物の上限値

  • 熱処理状態

  • 引張強さ

  • 降伏強さ

  • 伸び

  • 硬度

  • 製品規格

  • ロット番号

16. 最終まとめ

非鉄金属は、単に鉄鋼より軽い、または錆びにくい代替材料ではない。

それぞれの非鉄金属は、特定の合金元素と組織によって独自の機械的特性を形成する。

アルミニウム合金は、マグネシウム、シリコン、銅、亜鉛などの添加によって、板金用、構造用、鋳造用、高強度用に分類される。

  • マグネシウムは強度と耐食性を高める。

  • シリコンは鋳造性と溶湯流動性を高める。

  • 銅は強度と時効硬化性を高める。

  • 亜鉛とマグネシウムは非常に高い強度を形成する。

銅合金は、亜鉛、すず、アルミニウム、ベリリウムの添加によって、電気用、切削用、軸受用、高強度用に分類される。

  • 亜鉛は黄銅の強度と加工性を調整する。

  • すずは青銅の耐摩耗性と耐食性を高める。

  • アルミニウムは高強度と海水耐食性を高める。

  • ベリリウムは析出硬化によって高い強度とばね性を形成する。

マグネシウム合金は、非常に低い密度と優れたダイカスト性を持つが、腐食および高温強度には注意が必要である。

チタン合金は、高い比強度と優れた耐食性を持ち、アルミニウムとバナジウムの添加によって相組織と強度が調整される。

ニッケル合金は、クロム、モリブデン、ニオブ、タングステンなどの添加により、高温強度と極めて高い耐食性を確保する。

亜鉛合金は、アルミニウムとマグネシウムの添加によって、優れたダイカスト性と寸法安定性を確保する。

したがって、非鉄金属を選定する際は、次の項目を総合的に検討する必要がある。

  • 密度

  • 強度

  • 弾性係数

  • 耐食性

  • 熱伝導性

  • 電気伝導性

  • 耐摩耗性

  • 鋳造性

  • 成形性

  • 溶接性

  • 熱処理状態

  • 表面処理

  • ガルバニック腐食

  • 食品および環境規制

  • コストと入手性

非鉄金属の選定は、鉄鋼を単純に置き換える作業ではない。

部品の機能と使用環境に応じて、それぞれの材料が持つ固有の特性を活用する設計プロセスである。