1. めっきおよびコーティングの基本概念
めっきおよびコーティングは、基材表面に新しい材料層を形成し、母材だけでは十分に得ることができない特性を付与する表面工学技術である。
主な目的は次のとおりである。
防食
耐摩耗性向上
硬度向上
摩擦係数の制御
潤滑性向上
電気伝導性の付与
電気絶縁性の付与
はんだ付け性および接合性向上
装飾性向上
熱反射および遮熱
耐薬品性向上
防汚性および非付着性の付与
寸法補正
光学機能の付与
生体適合性または食品接触適合性の確保
めっきやコーティングの性能は、単に皮膜材料の名称だけで決まるものではない。
次の要素を総合的に考慮する必要がある。
基材の種類
表面前処理の状態
皮膜の化学組成
皮膜厚さ
気孔率
結晶粒径
内部応力
界面密着性
後処理
使用温度
腐食環境
相手材
荷重および摩擦条件
2. めっきとコーティングの違い
2.1 めっき
めっきとは、金属、合金または金属系複合層を基材表面に析出させる処理である。
代表的な方法:
電気めっき
無電解めっき
溶融めっき
置換めっき
機械めっき
拡散被覆
代表的な皮膜:
亜鉛
ニッケル
クロム
銅
すず
銀
金
亜鉛–ニッケル
ニッケル–リン
ニッケル–ホウ素
2.2 コーティング
コーティングは、金属だけでなく、高分子、セラミックス、酸化物、炭化物および複合材料の皮膜形成を含む、より広い概念である。
代表的な方法:
液体塗装
粉体塗装
電着塗装
溶射
PVD
CVD
DLCコーティング
セラミックコーティング
フッ素樹脂コーティング
ゴムライニング
ガラスライニング
ゾル–ゲルコーティング
2.3 化成皮膜処理
化成皮膜処理は、外部材料を単に積層するのではなく、基材表面を化学的または電気化学的に反応させて皮膜を形成する処理である。
代表的な方法:
陽極酸化
りん酸塩皮膜処理
クロメート処理
黒染め処理
不動態化処理
ジルコニウム系化成処理
チタン系化成処理
3. 表面皮膜システムの基本構成
一般的な表面処理システムは、次の層から構成される。
基材
前処理層
界面層
主機能層
封孔層またはシーラー
上塗り層または潤滑層
一般的な亜鉛めっき鋼材では、次のような構成となる。
鉄鋼基材
亜鉛めっき層
クロメートまたはクロムフリー不動態化層
シーラー
必要に応じた塗装層
一般的な塗装システムは、次のように構成される。
基材
表面処理層
プライマー
中塗り
上塗り
4. 皮膜材料の一般的な組成
4.1 金属めっき皮膜
金属めっき皮膜は、主金属、合金元素、共析物質および微量不純物から構成される。
皮膜の種類 | 主成分 | 代表的な副成分 |
|---|---|---|
亜鉛めっき | Zn | Fe、有機添加剤残留物 |
亜鉛–ニッケルめっき | Zn | Ni 約8~16 wt.% |
電気ニッケルめっき | Ni | 微量のS、Cなど |
無電解ニッケル–リンめっき | Ni | P 約2~13 wt.% |
無電解ニッケル–ホウ素めっき | Ni | B 約0.5~8 wt.% |
硬質クロムめっき | Cr | O、H、微細亀裂 |
すずめっき | Sn | Pb、Bi、Cuなど、グレードによる |
銅めっき | Cu | 微量のS、C、Cl |
金めっき | Au | Co、Ni、Feなどの硬化元素 |
銀めっき | Ag | Sb、Seなど、グレードによる |
4.2 有機コーティング
塗料および樹脂コーティングは、一般に次の成分から構成される。
構成成分 | 代表範囲 | 主な役割 |
|---|---|---|
バインダー樹脂 | 約20~70 wt.% | 皮膜形成、密着、耐久性 |
顔料 | 約1~30 wt.% | 色、隠蔽、防錆 |
充填材 | 約5~50 wt.% | 硬度、粘度、コスト、寸法安定性 |
溶剤または水 | 約0~60 wt.% | 塗布粘度の調整 |
硬化剤 | 樹脂に対して約5~50 wt.% | 架橋構造形成 |
添加剤 | 約0.1~5 wt.% | 消泡、分散、レベリング、UV安定化 |
金属・セラミック粒子 | 約5~85 wt.% | 導電、防錆、耐摩耗 |
固形分とは、塗布前の塗料中で、乾燥後に皮膜として残る成分の割合を示す。
4.3 溶射および薄膜コーティング
溶射、PVDおよびCVD皮膜には、次の材料が使用される。
単一金属
金属合金
酸化物セラミックス
炭化物
窒化物
炭素系皮膜
金属–セラミックス複合層
多層構造
傾斜機能層
代表的な組成:
WC-Co
WC-CoCr
Cr₃C₂-NiCr
Al₂O₃
Al₂O₃-TiO₂
ZrO₂-Y₂O₃
TiN
CrN
TiAlN
AlCrN
DLC
SiC
Si₃N₄
5. 防食機構
5.1 バリア防食
皮膜によって、水、酸素、塩分および化学物質が基材に到達することを防止する。
代表的な皮膜:
ニッケル
クロム
塗装
エポキシ
フッ素樹脂
セラミックコーティング
バリア皮膜にピンホールや亀裂がある場合、欠陥部で局部腐食が集中することがある。
5.2 犠牲防食
皮膜が母材より先に腐食することによって母材を保護する。
代表的な皮膜:
亜鉛
亜鉛–アルミニウム
一部のアルミニウム溶射皮膜
鉄鋼上の亜鉛皮膜は、皮膜が部分的に損傷した場合でも、一定範囲で鉄を電気化学的に保護する。
5.3 不動態化
表面に安定した酸化物または化合物層を形成し、腐食反応を抑制する。
代表例:
ステンレス鋼の不動態化
アルミニウムの陽極酸化
クロメート処理
チタン酸化皮膜
5.4 防錆顔料
塗膜内部の防錆顔料によって腐食反応を抑制する。
代表的な顔料:
りん酸亜鉛
亜鉛末
カルシウム系防錆顔料
モリブデート系顔料
6. 表面前処理
皮膜不良は、皮膜材料そのものより前処理不良によって発生することが多い。
一般的な前処理工程:
脱脂
水洗
錆および酸化スケール除去
表面活性化
化成処理またはプライマー処理
水洗
乾燥
めっきまたはコーティング
6.1 脱脂
除去対象:
切削油
防錆油
グリース
指紋
研磨剤
離型剤
代表的な方法:
アルカリ脱脂
溶剤脱脂
電解脱脂
超音波洗浄
蒸気脱脂
脱脂が不十分な場合、次の不良が発生する。
未めっき
ピンホール
膨れ
密着不良
クレーター
局部腐食
6.2 酸洗
酸洗は、酸性溶液を使用して錆、スケールおよび酸化皮膜を除去する処理である。
代表的な酸:
塩酸
硫酸
りん酸
硝酸
フッ酸系混合液
高強度鋼は、酸洗や電気めっき中に水素を吸収し、水素脆化を生じる可能性がある。
そのため、工程条件と後ベーキング処理を管理する必要がある。
6.3 ブラスト処理
代表的なブラスト材:
スチールショット
スチールグリット
アルミナ
ガラスビーズ
セラミックビーズ
プラスチックメディア
目的:
錆除去
スケール除去
表面粗さ形成
実効接着面積の増加
既存皮膜の除去
表面粗さが小さすぎると密着力が不足する。
一方、粗さが大きすぎると表面の山部を皮膜が完全に覆えない場合がある。
7. 電気めっき
電気めっきは、外部の直流電源を使用し、電解液中の金属イオンを陰極である製品表面に還元析出させる方法である。
基本構成:
被めっき物:陰極
可溶性金属陽極または不溶性陽極
金属塩電解液
電源装置
添加剤
温度・撹拌装置
7.1 電気めっきの膜厚分布
電流密度が高くなる部分:
突出部
角部
外周部
電極に近い部分
電流密度が低くなる部分:
深い溝
内径
穴内部
遮蔽された部分
そのため、複雑形状では膜厚差が生じる。
改善方法:
補助陽極
遮蔽板
治具設計
電極距離調整
電流波形制御
製品配置最適化
8. 亜鉛めっき
8.1 基本構成
亜鉛めっき皮膜の主成分はZnである。
一般的な電気亜鉛めっきシステム:
Zn:主成分
Feおよびその他の不純物:微量
有機光沢剤残留物:微量
不動態化層およびシーラー:別途形成
8.2 代表膜厚
一般的な適用範囲:
屋内用小型部品:約3~8 μm
一般産業部品:約8~15 μm
高耐食仕様:約15~25 μm以上
最終的な要求膜厚は、腐食環境、後処理および適用規格によって決定する。
8.3 特性
長所:
鉄鋼に対する犠牲防食
低コスト
大量生産に適する
良好な外観
多様な不動態化処理が可能
ボルトや締結部品に広く使用
制限:
高温で耐食性が低下
酸・アルカリ環境に制限
白錆の発生
膜厚差
高強度鋼の水素脆化
接触環境による異種金属接触腐食
8.4 主な用途
ボルト
ナット
ブラケット
板金部品
電装部品
自動車部品
機械フレーム付属部品
9. 亜鉛–ニッケル合金めっき
9.1 基本構成
代表組成:
Zn:約84~92 wt.%
Ni:約8~16 wt.%
高耐食性の市販亜鉛–ニッケルめっきでは、Ni含有量約12~15 wt.%が多く使用される。
9.2 特性
一般亜鉛めっきより高い耐食性
比較的薄い皮膜で高い防錆性能
高温履歴後の耐食性保持に優れる
自動車部品および高耐食締結部品に適する
工程管理が難しい
一般亜鉛めっきより高コスト
合金組成の変動によって性能が変化する
9.3 代表膜厚
約5~15 μm
高耐食仕様では、不動態化処理とシーラーを併用する
10. ニッケルめっき
10.1 電気ニッケルめっき
代表的なめっき浴:
ワット浴
スルファミン酸浴
硫酸塩浴
塩化物浴
一般的なワット浴の構成:
硫酸ニッケル:主なニッケルイオン供給源
塩化ニッケル:陽極溶解性および導電性向上
ホウ酸:緩衝剤
光沢剤・湿潤剤:微量添加
10.2 ニッケル皮膜の種類
無光沢ニッケル
添加剤含有量が少ない
比較的延性が高い
内部応力を低くできる場合がある
下地および機能用途に適する
半光沢ニッケル
低硫黄含有
多層装飾めっきの耐食性向上
銅–ニッケル–クロム系に使用
光沢ニッケル
高い光沢
優れたレベリング性
有機添加剤によって硫黄が共析する場合がある
装飾用途に広く使用
スルファミン酸ニッケル
低内部応力を実現可能
厚付け、電鋳および寸法復元に適する
精密部品に使用
10.3 代表膜厚
装飾用下地:約5~25 μm
機能用:約10~100 μm
電鋳・寸法復元:数百μm以上
10.4 特性
良好な耐食性
高い硬度
装飾性
はんだ付け性および接合性
下地めっきとして使用可能
磁性を持つ
ニッケルアレルギーへの配慮が必要
ピンホールがある場合、鉄鋼基材で局部腐食が発生する
11. 無電解ニッケル–リンめっき
無電解ニッケルめっきは、外部電源を使用せず、溶液中の還元反応によってニッケル合金を析出させる自己触媒型処理である。
11.1 基本皮膜組成
Ni:主成分
P:約2~13 wt.%
不純物:微量
11.2 リン含有量による分類
低リンタイプ
P:約2~5 wt.%
高硬度
結晶質的性格が強い
アルカリ環境に有利なグレードがある
耐食性は高リンタイプより低い場合がある
中リンタイプ
P:約6~9 wt.%
硬度、耐摩耗性、耐食性のバランスが良い
最も一般的な産業用グレード
高リンタイプ
P:約10~13 wt.%
非晶質構造を形成する場合がある
高い耐食性
非磁性
めっき状態の硬度は中リンタイプより低い場合がある
11.3 代表的な浴成分
ニッケル塩
次亜りん酸塩還元剤
錯化剤
緩衝剤
安定剤
湿潤剤
pH調整剤
11.4 特性
長所:
複雑形状でも均一な膜厚
内径や溝にも比較的均一に析出
高い耐食性
良好な耐摩耗性
熱処理による硬度向上
寸法精度が重要な部品に適する
制限:
電気めっきより高コスト
浴寿命および組成管理が必要
局部過熱やピット発生の可能性
厚膜では内部応力と剥離の可能性
アルミニウムには特殊な前処理が必要
11.5 代表膜厚
一般防錆:約5~15 μm
耐摩耗・精密部品:約15~50 μm
寸法復元・過酷環境:約50~100 μm以上
11.6 熱処理効果
熱処理によってNi₃Pなどが析出し、硬度が上昇する場合がある。
ただし、熱処理は次の項目にも影響する。
耐食性
寸法
基材硬度
変形
界面拡散
皮膜亀裂
熱処理条件は、基材と使用目的に合わせて指定する必要がある。
12. クロムめっき
12.1 装飾クロムめっき
一般的な構成:
基材
銅めっき
半光沢ニッケル
光沢ニッケル
薄いクロム層
クロム層は外観と変色防止機能を提供する。
代表膜厚:
クロム層:約0.1~1 μm
下地ニッケル層:数μm~数十μm
12.2 硬質クロムめっき
代表膜厚:
約10~100 μm
寸法復元では数百μmまで適用可能
特性:
高硬度
高耐摩耗性
低摩擦係数
良好な耐熱性
寸法復元が可能
微細亀裂構造
引張残留応力の可能性
角部で膜厚が増加
水素脆化管理が必要
12.3 主な用途
油圧シリンダーロッド
金型
ローラー
シャフト
ピストンリング
バルブ部品
測定工具
12.4 環境および安全上の考慮事項
六価クロム化合物は、高い有害性と環境負荷を持つ。
代替技術として次を検討する。
三価クロムめっき
クロムフリー後処理
HVOFコーティング
その他の硬質皮膜
規制適合性は、適用国と製品分野の最新要求事項を確認する必要がある。
13. 銅めっき
13.1 主な機能
高い電気伝導性
高い熱伝導性
ニッケル・クロムめっきの下地
表面平滑化
電子回路配線
電鋳
浸炭防止マスキング
13.2 めっき浴の種類
酸性硫酸銅浴
ピロりん酸銅浴
シアン化銅浴
無電解銅浴
シアン化物工程は、安全および環境面で厳格な管理が必要であり、可能な場合は非シアン系代替処理を検討する。
13.3 代表膜厚
下地:約5~30 μm
電子回路:数μm~数十μm
電鋳:数百μm以上
14. すずめっき
14.1 特性
優れたはんだ付け性
比較的低い毒性
電気接点に使用
食品容器材料として長い使用実績
軟質皮膜
摩擦による摩耗
すずウィスカ発生の可能性
14.2 代表組成
純すず
Sn:一般に99%以上
すず合金
Sn-Bi
Sn-Cu
Sn-Ag
Sn-Ni
合金元素によって、次の特性を調整する。
硬度
はんだ付け性
ウィスカ発生
融点
電気接触特性
14.3 代表膜厚
電子端子:約1~10 μm
一般防錆・はんだ付け用途:約5~30 μm
15. 銀めっきおよび金めっき
15.1 銀めっき
特性:
非常に高い電気伝導性
高い熱伝導性
良好なはんだ付け性
低い接触抵抗
硫化による変色
イオンマイグレーションの可能性
比較的軟らかい皮膜
主な用途:
電気接点
大電流部品
RF部品
軸受および摺動部品
食品設備における限定的な特殊用途
15.2 金めっき
特性:
高い耐食性
低く安定した接触抵抗
優れたはんだ付け性とワイヤーボンディング性
高価格
薄膜では気孔管理が必要
代表的な種類:
軟質金
高純度
ワイヤーボンディングおよび電子部品に使用
低硬度
硬質金
AuにCo、Ni、Feなどを微量添加
高硬度および高耐摩耗性
コネクター接点に使用
代表膜厚:
フラッシュ金:約0.05~0.2 μm
電子接点:約0.5~2 μm
特殊機能用途:数μm以上
16. 溶融亜鉛めっき
溶融亜鉛めっきは、鉄鋼製品を溶融亜鉛浴に浸漬し、亜鉛–鉄合金層と外側の亜鉛層を形成する処理である。
16.1 基本皮膜構造
基材から表面方向に、次の層を形成する。
鉄鋼基材
Fe-Zn合金層
中間合金層
外部亜鉛層
16.2 代表的な浴組成
Zn:主成分
Al、Ni、Bi、Snなど:工程性や外観調整のために少量添加する場合がある
16.3 代表膜厚
製品厚さおよび材質により、一般に次の範囲となる。
約45~100 μm以上
実際の膜厚は、鋼材組成、浸漬時間、表面状態および適用規格によって変化する。
16.4 特性
長所:
厚い防錆皮膜
犠牲防食
角部および内面も被覆可能
屋外構造物に適する
長い防錆寿命
制限:
寸法変化
粗い表面
変形の可能性
ねじ部のはめあい余裕が必要
通気・排液穴が必要
溶接部や鋼材中のシリコン含有量により外観・膜厚が変化
精密部品には制限
17. 溶融アルミニウムおよび亜鉛–アルミニウム皮膜
17.1 溶融アルミニウムめっき
特性:
高温酸化抵抗
熱反射性
硫黄含有環境への耐性
排気系および加熱部品に使用
成形性と溶接性の検討が必要
17.2 亜鉛–アルミニウム皮膜
代表的な合金系:
Zn-Al
Zn-Al-Mg
Al-Zn
合金元素の役割:
Al:バリア性および耐熱性向上
Mg:切断面や損傷部の腐食生成物を安定化
Zn:犠牲防食
18. 陽極酸化
陽極酸化は、アルミニウムなどの金属を電解槽内で陽極として使用し、自然酸化膜を厚く制御された酸化皮膜に変換する電気化学処理である。
18.1 皮膜組成
アルミニウム陽極酸化皮膜:
主成分:Al₂O₃
水和酸化物:封孔処理により形成
染料または無機着色成分:着色製品
合金元素の酸化物:基材合金によって含まれる
18.2 一般陽極酸化
代表膜厚:
約5~25 μm
主な特性:
耐食性
装飾性
着色可能
電気絶縁性
接着前処理
寸法変化
18.3 硬質陽極酸化
代表膜厚:
約25~100 μm
約30~60 μmの範囲が広く使用される
特性:
高硬度
高耐摩耗性
高い電気絶縁性
摩擦係数は相手材と潤滑条件に依存
亀裂や脆性の可能性
角部での焼け
皮膜の一部は基材内部に成長し、一部は外側に成長する
18.4 封孔処理
陽極酸化皮膜は多孔質構造を持つため、一般に封孔処理を行う。
代表的な方法:
熱水封孔
ニッケル塩封孔
低温封孔
有機シーラー
PTFE含浸
封孔処理は耐食性および耐汚染性を向上させるが、硬度や接着性に影響する場合がある。
19. 化成皮膜
19.1 りん酸塩皮膜
代表的な種類:
りん酸鉄
りん酸亜鉛
りん酸マンガン
皮膜構成:
金属りん酸塩結晶
酸化物
吸着した油またはシーラー
用途:
塗装下地
防錆油保持
摩擦部品の初期なじみ
冷間加工用潤滑
19.2 りん酸亜鉛
特性:
塗装密着性向上
塗膜下腐食の抑制
結晶質皮膜
自動車および産業塗装の前処理に使用
代表的な皮膜重量:
塗装下地:約1~5 g/m²
重量皮膜ではそれ以上
19.3 りん酸マンガン
特性:
比較的厚い結晶質皮膜
高い油保持性
摩擦部品の初期摩耗を低減
ギヤ、カム、ピストンなどに適用
19.4 クロメートおよびクロムフリー不動態化
クロメート処理は、亜鉛やアルミニウム表面に薄い化成皮膜を形成する。
主な機能:
白錆抑制
塗装密着性
損傷部における限定的な自己修復性
着色
環境および作業安全性の観点から、三価クロム系、ジルコニウム系およびチタン系のクロムフリー処理が拡大している。
19.5 黒染め処理
鉄鋼表面に磁鉄鉱系の黒色酸化皮膜を形成する。
主成分:
Fe₃O₄
特性:
非常に薄い皮膜
寸法変化が小さい
黒色外観
一般に油またはワックスと併用
単独の耐食性は限定的
工具および精密部品に適する
20. ステンレス鋼の不動態化
ステンレス鋼の不動態化は、遊離鉄や汚染物を除去し、クロム酸化物を中心とした安定した表面層の形成を促進する処理である。
代表的な処理液:
硝酸系
クエン酸系
効果:
遊離鉄除去
耐食性回復
溶接・加工後の表面安定化
清浄度向上
注意事項:
不動態化は、スケール除去を目的とする酸洗とは異なる。
深い錆や熱変色には、別途酸洗が必要な場合がある。
塩化物汚染および洗浄残留物を管理する必要がある。
21. 液体塗装
液体塗装は、樹脂、顔料、溶剤または水、添加剤を液体状態で塗布し、乾燥または硬化させて皮膜を形成する。
代表的な塗布方法:
エアスプレー
エアレススプレー
ロールコーティング
刷毛塗り
浸漬
フローコーティング
電着塗装
22. エポキシコーティング
22.1 基本構成
代表的な二液型エポキシ塗料:
構成成分 | 代表範囲 |
|---|---|
エポキシ樹脂 | 約15~40 wt.% |
硬化剤 | 樹脂に対して約15~50 wt.% |
顔料・充填材 | 約15~50 wt.% |
溶剤 | 約0~40 wt.% |
添加剤 | 約0.1~5 wt.% |
22.2 特性
長所:
高い密着性
優れた防食性
高い耐薬品性
高い塗膜強度
厚膜形成が可能
プライマーやタンクライニングに適する
制限:
紫外線によるチョーキング
変色
低温硬化の制限
混合比および可使時間の管理
厚膜で溶剤が閉じ込められる可能性
22.3 主な用途
機械フレーム
タンク
配管
床
海洋構造物
化学設備
重防食プライマー
23. ポリウレタンコーティング
23.1 基本構成
代表的な二液型システム:
ポリオール樹脂
ポリイソシアネート硬化剤
顔料
溶剤
UV安定剤
レベリング剤
23.2 特性
高品質な外観
優れた光沢保持性
優れた耐候性
良好な耐摩耗性
弾性を調整可能
水分と硬化条件に敏感
イソシアネートの取扱管理が必要
主な用途:
機械外装
自動車部品
屋外設備
エポキシ重防食システムの上塗り
24. アクリル、アルキドおよびシリコーンコーティング
24.1 アクリルコーティング
優れた耐候性と色保持性
速乾性
透明コーティングが可能
耐薬品性と耐熱性はグレードにより異なる
24.2 アルキドコーティング
経済的
良好な作業性
空気酸化によって硬化
一般産業塗装に使用
強い化学環境および浸漬環境には制限
24.3 シリコーン樹脂コーティング
高い耐熱性
良好な熱サイクル特性
排気系および加熱設備に使用
機械的強度と耐溶剤性は組成により異なる
25. フッ素樹脂コーティング
代表材料:
PTFE
PFA
FEP
ETFE
PVDF
代表的な皮膜構成:
フッ素樹脂:主成分
プライマー樹脂および密着向上剤
顔料
充填材
機能性粒子
25.1 特性
長所:
低い摩擦係数
非粘着性
高い耐薬品性
良好な耐熱性
優れた洗浄性
制限:
表面エネルギーが低いため密着が難しい
傷および衝撃に対する制限
ピンホール管理が必要
厚膜では寸法変化が大きい
高温焼成が必要なグレードがある
25.2 主な用途
食品機械
金型
ホッパー
ガイド
化学タンク
バルブ
熱交換器部品
半導体湿式工程部品
26. 粉体塗装
粉体塗装は、粉末状塗料を静電気によって製品表面に付着させ、加熱溶融・硬化させる処理である。
代表的な樹脂:
エポキシ
ポリエステル
エポキシ–ポリエステルハイブリッド
アクリル
ナイロン
フッ素系
26.1 一般的な構成
構成成分 | 代表範囲 |
|---|---|
樹脂 | 約40~80 wt.% |
硬化剤 | 約3~20 wt.% |
顔料・充填材 | 約10~50 wt.% |
添加剤 | 約0.5~5 wt.% |
26.2 代表膜厚
一般に約50~120 μm
機能性または重防食用途では、さらに厚くする場合がある
26.3 特性
長所:
高い固形分
溶剤使用量が少ない
厚く比較的均一な塗膜
オーバースプレー粉体を回収可能
高い生産性
良好な外観
制限:
加熱硬化が必要
大型部品には大型炉が必要
角部や深い凹部で膜厚差
色替え時の損失
極薄膜形成に制限
粉じん爆発対策が必要
27. 電着塗装
電着塗装は、電界を利用して水系塗料粒子を導電性製品表面に析出させる処理である。
代表的な方式:
カチオン電着
アニオン電着
特性:
複雑形状や内面にも比較的均一な塗膜
高い自動化性
優れた防錆性
自動車車体および大量生産部品に適する
導電性基材が必要
前処理および水洗管理が重要
代表膜厚:
約15~35 μm
28. 重防食塗装システム
鋼構造物用重防食塗装は、単一塗料ではなく多層システムとして設計する。
代表的なシステム:
亜鉛末プライマー+エポキシ中塗り+ポリウレタン上塗り
犠牲防食
バリア防食
耐候性
屋外鋼構造物に適する
エポキシプライマー+厚膜エポキシ
タンク
浸漬環境
化学設備
溶融亜鉛めっき+塗装
デュプレックスシステム
亜鉛皮膜を保護
長期耐食性
色彩・外観付与
29. 溶射コーティング
溶射は、粉末またはワイヤー材料を加熱・加速し、溶融または半溶融状態の粒子を基材表面に衝突させて皮膜を形成する方法である。
29.1 溶射方式
フレーム溶射
アーク溶射
プラズマ溶射
HVOF
HVAF
コールドスプレー
爆発溶射
29.2 溶射皮膜の構造
溶射皮膜には一般に次の要素が含まれる。
扁平化した積層粒子
粒子間酸化物
気孔
未溶融粒子
界面
シーラー
29.3 代表的な溶射材料
金属
Zn
Al
Ni
NiCr
Mo
Cu
セラミックス
Al₂O₃
Cr₂O₃
ZrO₂
TiO₂
サーメット
WC-Co
WC-CoCr
Cr₃C₂-NiCr
29.4 代表組成
WC-Co
WC:約80~94 wt.%
Co:約6~20 wt.%
WC-CoCr
WC:約80~90 wt.%
Co:約5~12 wt.%
Cr:約3~10 wt.%
Cr₃C₂-NiCr
Cr₃C₂:約70~80 wt.%
NiCr:約20~30 wt.%
アルミナ–チタニア
Al₂O₃:約60~97 wt.%
TiO₂:約3~40 wt.%
29.5 代表膜厚
金属防食溶射:約100~500 μm
耐摩耗HVOF:約50~500 μm
プラズマ溶射セラミック:約100 μm~数mm
30. PVDコーティング
PVDは、真空中で固体原料を蒸発、スパッタリングまたはアーク放電によって気相へ移動させ、基材表面に薄膜として凝縮させる物理蒸着法である。
一般にPVDは、高真空および約150~500℃の範囲で行われる場合が多いが、実際の温度は処理方法と基材によって異なる。
30.1 代表的な方式
真空蒸着
スパッタリング
アークイオンプレーティング
イオンビーム蒸着
反応性PVD
30.2 代表的な皮膜
TiN
CrN
TiCN
TiAlN
AlTiN
AlCrN
ZrN
MoN
金属薄膜
30.3 代表的な皮膜組成
TiN
TiとNの化合物
化学量論比と不純物によって特性が変化する
TiAlN・AlTiN
Ti、Al、N
Al含有量によって酸化抵抗および結晶構造が変化する
CrN
Cr、N
耐食性と耐摩耗性のバランスが良い
30.4 代表膜厚
切削工具:約1~5 μm
金型・機械部品:約2~10 μm
装飾薄膜:約0.1~1 μm
30.5 特性
長所:
高硬度
薄膜
寸法変化が小さい
優れた耐摩耗性
多様な色調
低摩擦性を実現可能
高温酸化抵抗の向上
制限:
真空設備が必要
深い凹部の被覆性に制限
基材表面粗さの影響が大きい
薄膜のため大きな寸法復元は不可能
基材硬度と支持力が不足すると皮膜が破損する
31. CVDコーティング
CVDは、気体状前駆体が加熱された基材表面で化学反応し、固体皮膜を形成する方法である。
代表的な種類:
熱CVD
プラズマCVD
低圧CVD
有機金属CVD
原子層堆積
代表的な皮膜:
TiC
TiN
Al₂O₃
SiC
Si₃N₄
ダイヤモンド
DLC系皮膜
31.1 特性
長所:
複雑形状に対して比較的良好な被覆性
緻密な皮膜
高い密着性
高純度薄膜を形成可能
多層構造を形成可能
制限:
高い処理温度
基材変形や熱処理状態への影響
反応ガスの取扱い
長い処理時間
後処理が必要な場合がある
32. DLCコーティング
DLCは、ダイヤモンド状結合と黒鉛状結合の両方の特徴を持つ非晶質炭素系皮膜である。
代表的な構成:
炭素
水素
Si、W、Crなどのドープ元素
sp²結合
sp³結合
代表的な種類:
a-C
a-C:H
ta-C
Si-DLC
W-DLC
32.1 特性
高硬度
低摩擦係数
高い耐摩耗性
化学的安定性
凝着摩耗の低減
高い内部応力を持つ場合がある
膜厚に制限
温度と湿度により摩擦特性が変化
相手材および潤滑剤の影響が大きい
代表膜厚:
約0.5~5 μm
特殊な多層皮膜では、それ以上となる場合がある
32.2 主な用途
自動車エンジン部品
燃料噴射部品
金型
精密シャフト
バルブ
医療部品
摺動部品
33. セラミックコーティング
代表材料:
Al₂O₃
ZrO₂
Cr₂O₃
TiO₂
SiO₂
SiC
TiN
CrN
主な機能:
耐摩耗
遮熱
電気絶縁
耐食
非粘着
高温酸化防止
33.1 遮熱コーティング
代表的な構成:
金属基材
ボンドコート
熱成長酸化物層
ジルコニア系トップコート
代表的なトップコート:
Y₂O₃安定化ZrO₂
特性:
低い熱伝導性
高温部品の基材温度を低減
熱サイクルによる剥離の可能性
酸化層の成長
熱膨張差の管理が必要
34. ゴムおよびライニングコーティング
代表材料:
天然ゴム
ブチルゴム
EPDM
ネオプレン
硬質ゴム
ポリウレタン
PVC
PE
PP
主な用途:
酸・アルカリタンク
配管
スラリー設備
振動・衝撃保護
耐摩耗ライニング
注意事項:
接着層の劣化
膨れ
ピンホール
熱膨張
透過
溶剤および薬品との適合性
35. めっきおよびコーティングの機械的特性
35.1 硬度
皮膜硬度は、次の要因の影響を受ける。
化学組成
結晶粒径
熱処理
気孔率
内部応力
共析元素
測定荷重
皮膜厚さ
基材硬度
薄膜の硬度測定では、基材の影響を最小限に抑える必要がある。
35.2 密着性
密着機構:
機械的かみ込み
化学結合
拡散結合
金属結合
静電的相互作用
密着性低下の原因:
油
酸化膜
水分
不十分な表面粗さ
過大な内部応力
熱膨張差
汚染
不適切な硬化
35.3 残留応力
皮膜には引張または圧縮残留応力が存在する場合がある。
過大な引張応力による問題:
亀裂
剥離
疲労寿命低下
過大な圧縮応力による問題:
膨れ
座屈剥離
変形
35.4 摩擦および摩耗
摩擦性能は皮膜硬度だけで決まるものではない。
確認項目:
相手材
潤滑剤
接触圧力
速度
温度
表面粗さ
摩耗粒子
皮膜厚さ
基材硬度
36. 代表的なめっき・コーティング欠陥
36.1 ピンホール
原因:
ガス発生
表面汚染
樹脂の閉じ込め
粉体の溶融不良
気孔
影響:
局部腐食
漏れ
絶縁破壊
汚染物の侵入
36.2 剥離
原因:
前処理不良
界面汚染
過大な内部応力
熱膨張差
衝撃
水分浸入
36.3 膨れ
原因:
界面腐食
水分・溶剤の浸透圧
水素またはガス
硬化不良
表面塩分
36.4 亀裂
原因:
過大な皮膜厚さ
脆性
急激な温度変化
曲げ変形
残留応力
基材変形
36.5 エッジ部の厚膜化および焼け
電気めっきや粉体塗装では、電界集中によって角部の皮膜が厚くなることがある。
発生する問題:
組立干渉
角部欠け
外観不良
寸法ばらつき
36.6 オレンジピールおよびたれ
オレンジピールは、塗装表面が柑橘類の皮のように不均一になる現象である。
たれは、塗料が下方に流れて不均一になる現象である。
原因:
粘度
スプレー距離
溶剤蒸発速度
塗膜厚さ
硬化温度
レベリング不良
37. 水素脆化
高強度鋼は、酸洗、電解洗浄および電気めっき中に原子状水素を吸収する場合がある。
発生する可能性のある問題:
遅れ破壊
延性低下
亀裂
締結部品破損
高リスク部品:
高強度ボルト
ばね
ギヤ
航空部品
高硬度工具鋼
対策:
酸洗時間を最小化する。
可能な場合は機械的前処理を使用する。
適切な後ベーキングを行う。
低水素工程を使用する。
電流効率を管理する。
めっき後速やかにベーキングを開始する。
工程を検証する。
ベーキング条件は、材料強度、製品形状、皮膜種類および適用規格に合わせて指定する必要がある。
38. 寸法および公差設計
めっきおよびコーティングは部品寸法を変化させる。
軸外径の変化:
片側の皮膜厚さを (t) とすると、外径は約 (2t) 増加する。
穴内径の変化:
片側の皮膜厚さを (t) とすると、内径は約 (2t) 減少する。
ねじ部では次の項目を検討する。
有効径変化
おねじ・めねじのめっき代
ゲージ検査の実施時期
マスキング
めっき後加工
締付トルクおよび摩擦係数
39. めっきおよびコーティングを考慮した形状設計
39.1 排液穴および通気穴
溶融めっき、浸漬塗装および化学処理を行う閉鎖構造には、適切な通気穴と排液穴が必要である。
理由:
爆発防止
処理液滞留防止
洗浄性向上
均一な皮膜形成
乾燥性向上
39.2 鋭い角部
液体塗装では、表面張力によって鋭い角部の塗膜が薄くなることがある。
一方、電気めっきと粉体塗装では、電界集中によって角部が厚くなることがある。
対策:
適切な面取り
フィレット
角部の丸み
ストライプコート
遮蔽設計
39.3 重なり部および隙間
重なり継手や狭い隙間では、次の問題が生じる。
処理液残留
毛細管腐食
水洗不良
ガス発生
皮膜未到達
局部腐食
可能であれば、完全にシール溶接するか、十分に開放された構造とする。
39.4 溶接部
溶接部で確認する項目:
スラグ
スパッタ
アンダーカット
気孔
熱変色
シリコン汚染
酸化スケール
めっきまたは塗装前に、溶接部を平滑かつ清浄に仕上げる必要がある。
40. 皮膜厚さの選定
皮膜は厚ければ常に良いわけではない。
厚膜化の長所:
防食寿命向上
摩耗寿命向上
気孔低減
寸法復元
厚膜化の短所:
内部応力増加
亀裂および剥離
寸法干渉
コスト増加
皮膜脆化
硬化不良
熱膨張応力
皮膜厚さは、次の条件に基づいて決定する。
使用環境
目標寿命
予想摩耗量
許容公差
皮膜材料
後処理
基材強度
製造方法
41. めっきおよびコーティングの検査
41.1 膜厚測定
代表的な方法:
磁気式
渦電流式
蛍光X線式
顕微鏡断面測定
重量法
電解式
超音波式
測定方法は、皮膜と基材の組合せに応じて選定する。
41.2 密着性試験
代表的な試験:
クロスカット試験
プルオフ試験
曲げ試験
衝撃試験
熱サイクル試験
テープ試験
スクラッチ試験
41.3 耐食試験
代表的な試験:
中性塩水噴霧試験
複合腐食試験
湿潤試験
浸漬試験
結露試験
屋外暴露試験
電気化学試験
塩水噴霧試験時間を実際の使用寿命へ直接換算してはならない。
これらの試験は、主に工程比較および品質管理に使用し、実環境との相関は別途検討する必要がある。
41.4 気孔および欠陥検査
フェロキシル試験
染色浸透試験
電気的気孔試験
高電圧ホリデー試験
顕微鏡検査
断面分析
SEM・EDS
X線検査
41.5 表面粗さおよび外観
検査項目:
光沢
色差
粗さ
うねり
むら
焼け
たれ
オレンジピール
異物粒子
クレーター
42. 食品機械におけるめっきおよびコーティング
食品機械では、耐食性だけでなく、皮膜剥離および異物混入のリスクも検討する必要がある。
主な候補:
無電解ニッケル
硬質クロム
すず
ステンレス鋼不動態化
PTFE・PFAコーティング
セラミックコーティング
食品接触用エポキシ
電解研磨
DLC
42.1 主な要求事項
食品接触適合性
洗浄薬品への耐性
高温水および蒸気への耐性
低溶出性
非吸水性
低い表面粗さ
ピンホールや亀裂がないこと
剥離および摩耗粉の抑制
洗浄・検査が容易であること
42.2 注意事項
皮膜損傷後の基材腐食
ニッケルアレルギーおよび金属溶出
クロム皮膜の亀裂
フッ素樹脂皮膜の傷
皮膜片の食品混入
金属検出器による検出性
洗浄時の熱衝撃
加工エッジ部の膜厚不足
食品接触適合性は、皮膜の主成分だけでなく、前処理、顔料、硬化剤、シーラーおよび完成品全体として確認する必要がある。
43. 半導体および精密機械用コーティング
代表的な処理:
無電解ニッケル
硬質陽極酸化
PVD
DLC
セラミックコーティング
フッ素樹脂
黒色表面処理
Al₂O₃絶縁コーティング
主な要求事項:
低アウトガス
低発塵
耐プラズマ性
耐薬品性
電気絶縁または接地
低摩擦
高い寸法精度
均一な膜厚
クリーン洗浄への適合性
44. 代表的な表面処理の比較
表面処理 | 代表膜厚 | 主な長所 | 主な制限 | 代表用途 |
|---|---|---|---|---|
電気亜鉛めっき | 3~25 μm | 経済性、犠牲防食 | 高温・強薬品環境に制限 | ボルト、板金 |
Zn-Niめっき | 5~15 μm | 高耐食性 | 高コスト、工程管理 | 自動車用締結部品 |
電気ニッケルめっき | 5~100 μm | 硬度、外観、下地機能 | 膜厚差 | 機械・装飾部品 |
無電解Ni-P | 5~100 μm | 均一膜厚、耐食・耐摩耗 | コスト、浴管理 | 精密部品 |
硬質クロム | 10~500 μm | 硬度、耐摩耗、寸法復元 | 亀裂、環境負荷 | ロッド、ロール |
溶融亜鉛めっき | 45~100 μm以上 | 長期防食 | 変形、粗い表面 | 屋外構造物 |
一般陽極酸化 | 5~25 μm | 耐食、装飾、絶縁 | アルミニウム系に限定 | ハウジング |
硬質陽極酸化 | 25~100 μm | 耐摩耗、絶縁 | 脆性、寸法変化 | 摺動部品 |
エポキシ塗装 | 50~500 μm以上 | 防食、耐薬品 | UVチョーキング | フレーム、タンク |
粉体塗装 | 50~120 μm | 生産性、外観 | 加熱硬化が必要 | 装置外装 |
金属溶射 | 100~500 μm | 長期防食、現地補修 | 気孔、粗い表面 | 大型構造物 |
PVD | 1~10 μm | 高硬度、寸法変化が小さい | 深い凹部の被覆制限 | 工具、金型 |
DLC | 0.5~5 μm | 低摩擦、耐摩耗 | 応力、温度依存 | 精密摺動部品 |
フッ素樹脂 | 20~1,000 μm | 非粘着、耐薬品 | 傷、密着性 | 食品・化学設備 |
セラミック溶射 | 100 μm~数mm | 耐熱、耐摩耗、絶縁 | 脆性、気孔 | ロール、ヒーター部品 |
表中の膜厚は一般的な設計範囲であり、実際の値は処理方法、規格、形状および供給メーカーのグレードによって異なる。
45. 部品別の表面処理選定
45.1 一般鉄鋼製締結部品
推奨:
電気亜鉛めっき
Zn-Niめっき
亜鉛フレークコーティング
りん酸塩皮膜+油
選定基準:
一般屋内用途:電気亜鉛めっき
高耐食用途:Zn-Ni
水素脆化に敏感な高強度ボルト:非電解式亜鉛フレークシステムを検討
組立摩擦制御:シーラーおよび潤滑トップコートを指定
45.2 油圧シリンダーロッド
推奨:
硬質クロム
HVOF WC-CoCr
無電解Ni-P
DLC
選定基準:
一般産業用途:硬質クロム
高摩耗・腐食環境:HVOF
複雑形状と均一膜厚:無電解ニッケル
低摩擦精密用途:DLC
45.3 アルミニウムハウジング
推奨:
一般陽極酸化
硬質陽極酸化
化成皮膜+塗装
無電解ニッケル
選定基準:
外観と一般防食:一般陽極酸化
耐摩耗と絶縁:硬質陽極酸化
導電接地面:選択的マスキングまたは導電性化成皮膜
高精度耐摩耗用途:無電解ニッケル
45.4 切削工具および金型
推奨:
TiN
TiAlN
AlCrN
CrN
DLC
硬質クロム
45.5 化学タンクおよび配管
推奨:
エポキシライニング
ビニルエステルライニング
フッ素樹脂
ゴムライニング
ガラスライニング
セラミックライニング
正確な薬品種類、濃度、温度および浸漬時間を基準に選定する必要がある。
45.6 屋外鋼構造物
推奨:
溶融亜鉛めっき
亜鉛・アルミニウム溶射
重防食塗装
溶融亜鉛めっき+塗装
46. 図面および仕様書への表記方法
単に「亜鉛めっき」「ニッケルめっき」「塗装」とだけ記載するのは十分ではない。
次の項目をあわせて指定する必要がある。
46.1 基材
例:
SPCC
S45C
SCM435
SUS304
A6061-T6
ADC12
46.2 皮膜種類および組成
例:
Zn electroplating
Zn-Ni, Ni 12~15 wt.%
Electroless Ni-P, P 10~13 wt.%
Hard anodizing
TiAlN PVD
Epoxy/polyurethane system
46.3 皮膜厚さ
例:
Zn, 8 μm minimum
Electroless Ni-P, 25 ±5 μm
Hard anodizing, 40 ±10 μm
Dry film thickness, 250 μm minimum
最小膜厚、平均膜厚または局部膜厚のいずれであるかを明確にする必要がある。
46.4 後処理
Trivalent passivation
Sealer
Hot-water sealing
PTFE impregnation
Baking
Polishing
Lubricant topcoat
46.5 色および外観
Black
Clear
Yellow
Natural
Gloss
Semi-gloss
Matte
標準色番号
46.6 機能要求
塩水噴霧試験要求
密着性
硬度
摩擦係数
電気抵抗
耐電圧
表面粗さ
耐薬品性
耐熱性
食品接触適合性
46.7 マスキング範囲
代表的なマスキング対象:
ねじ部
はめあい面
接地面
溶接面
軸受座
シール面
電気接点
精密公差部
図面上でマスキング境界および許容される皮膜のはみ出し範囲を明確に表示する。
47. めっきおよびコーティングの選定手順
47.1 主目的の確認
防食か。
耐摩耗か。
低摩擦か。
電気絶縁か。
電気伝導か。
装飾か。
遮熱か。
耐薬品か。
寸法復元か。
47.2 基材の確認
炭素鋼
高強度鋼
ステンレス鋼
アルミニウム
銅
チタン
鋳鉄
プラスチック
セラミックス
47.3 環境の確認
屋内
屋外
海洋
高温
浸漬
酸
アルカリ
溶剤
食品
真空
プラズマ
47.4 機械条件の確認
接触圧力
往復運動
回転運動
衝撃
曲げ
疲労
摩耗粒子
潤滑条件
相手材
47.5 寸法および形状の確認
公差
ねじ
内径
深い溝
角部
閉鎖空間
排液穴
マスキング
皮膜形成後の研削加工
47.6 製造および品質条件の確認
生産数量
治具
最大処理寸法
処理温度
変形
検査方法
再処理可能性
排水・環境管理
供給メーカーの工程能力
48. めっきおよびコーティング選定の基本原則
めっきおよびコーティングは、基材の不足特性を補うことはできるが、母材の構造的限界を完全に解消するものではない。
軟らかい基材上に非常に硬い薄膜を形成しても、高い接触荷重によって基材が変形すると、皮膜が亀裂または剥離する可能性がある。
耐食皮膜も、表面前処理、エッジ被覆、ピンホールおよび損傷部の管理が不十分であれば、期待寿命を確保できない。
したがって、次の項目を一つの統合システムとして設計する必要がある。
基材
前処理
界面
皮膜材料
皮膜厚さ
後処理
公差
摩擦条件
腐食環境
検査基準
49. 最終まとめ
めっきは、主として金属または合金層を析出させる表面処理である。
一方、コーティングは、金属、高分子、セラミックスおよび複合皮膜を含む、より広い概念である。
電気亜鉛めっきは、低コストと犠牲防食性に優れ、一般鉄鋼部品に広く使用される。
亜鉛–ニッケルめっきは、一般亜鉛めっきより高い耐食性と熱安定性を持ち、自動車部品および高耐食締結部品に適する。
ニッケルめっきは、耐食性、装飾性、硬度および下地機能を提供する。
無電解ニッケル–リンめっきは、複雑形状でも均一な膜厚と良好な耐食・耐摩耗性能を提供し、精密機械部品に適する。
硬質クロムは、高い硬度、耐摩耗性および寸法復元性を持つが、皮膜亀裂、水素脆化および環境負荷を考慮する必要がある。
溶融亜鉛めっきは、厚い亜鉛–鉄合金皮膜を形成し、屋外鋼構造物に長期防食性を提供する。
陽極酸化は、アルミニウム表面を酸化アルミニウム皮膜へ変換し、耐食性、耐摩耗性、電気絶縁性および装飾性を向上させる。
りん酸塩皮膜、不動態化および黒染めなどの化成皮膜は、塗装密着、防錆、潤滑油保持および外観調整に使用される。
エポキシコーティングは、高い密着性、防食性および耐薬品性を提供する。
ポリウレタンコーティングは、耐候性および外観保持性に優れる。
粉体塗装は、厚く比較的均一な塗膜、高い生産性および低い溶剤使用量を特徴とする。
溶射は、金属、セラミックスおよびサーメットを比較的厚く形成し、防食、耐摩耗、耐熱および寸法復元機能を提供する。
PVDおよびCVDは、数μm程度の高硬度機能性薄膜を形成し、工具、金型、精密部品および半導体装置に使用される。
DLCは、高硬度と低摩擦係数を同時に提供するが、内部応力、処理温度、相手材および潤滑条件を検討する必要がある。
フッ素樹脂コーティングは、低摩擦、非粘着性および高い耐薬品性を提供し、食品機械や化学設備に広く使用される。
ただし、めっきおよびコーティングは、一般的な処理名称だけで選定してはならない。
次の項目をあわせて指定・確認する必要がある。
基材材質および熱処理状態
表面前処理
皮膜種類および化学組成
最小・平均皮膜厚さ
後処理および封孔
色および外観
マスキング範囲
寸法公差
水素脆化対策
密着性
硬度および摩擦係数
耐食・耐薬品要求
検査方法
適用規格
供給メーカーの工程グレード
めっきおよびコーティングの選定は、単に表面へ保護層を形成する作業ではない。
基材、界面、皮膜、形状、荷重、使用環境および製造工程を一つのシステムとして設計し、要求される機能と寿命を確保する表面工学設計プロセスである。