1. 概要
力増幅機構とは、比較的小さな入力力または入力トルクを、より大きな出力力または出力トルクへ変換する機械機構である。
力増幅は新しいエネルギーを生成するものではない。入力側の移動距離、速度、または角変位を大きく取り、出力側の移動距離や速度を小さくすることで、より大きな力またはトルクを得る。
基本的なエネルギー変換関係は次のとおりである。
小さな力 × 長い移動距離
→ 機械機構による運動変換
→ 大きな力 × 短い移動距離
代表的な力増幅機構には、次のものがある。
レバー機構
複合レバー機構
トグル機構
くさび機構
ねじ機構
カムおよび偏心機構
歯車減速機構
ラック・アンド・ピニオン機構
滑車装置
油圧増圧器
空気圧・油圧増圧器
複合リンク力増幅機構
フレクシャ式力増幅機構
代表的な用途は次のとおりである。
プレス
金型ロック装置
切断機
圧縮装置
リベット締結装置
圧入装置
パンチング装置
工具ロック装置
バルブアクチュエータ
昇降装置
ジャッキ
ロボットグリッパ駆動部
試験機
精密調整機構
力増幅機構を設計する際には、最大出力力だけでなく、次の項目を総合的に検討する必要がある。
機械的利益
入力力または入力トルク
入出力変位比
出力速度
効率
摩擦
すきま
剛性
弾性変形
特異点
セルフロック性
逆駆動性
衝撃
繰返し寿命
過負荷
安全性
2. 力増幅の基本原理
2.1 機械的利益
機械的利益とは、入力力に対する出力力の比である。
MA = F_out / F_in
ここで、
MA:機械的利益
F_out:出力力
F_in:入力力
例えば、100 Nの入力力によって1,000 Nの出力力を得る場合、機械的利益は次のとおりである。
MA = 1,000 / 100 = 10
2.2 トルク増幅比
回転運動では、入力トルクに対する出力トルクの比として表すことができる。
MA_T = T_out / T_in
ここで、
MA_T:トルク増幅比
T_out:出力トルク
T_in:入力トルク
2.3 変位比
理想的な機構では、力増幅比と移動距離比は反比例する。
F_in × s_in = F_out × s_out
したがって、
F_out / F_in = s_in / s_out
入力部が100 mm移動し、出力部が10 mm移動する場合、理想的な機械的利益は10となる。
2.4 速度比
動力損失を無視すると、次の関係が成立する。
F_in × v_in = F_out × v_out
したがって、
F_out / F_in = v_in / v_out
出力力が大きくなるほど、一般に出力速度は低下する。
2.5 エネルギー保存
理想的な機械機構では、入力仕事と出力仕事は等しい。
W_in = W_out
実際の機構では、摩擦や変形による損失が存在する。
W_out = ηW_in
ここで、ηは機械効率である。
2.6 実際の出力力
機械効率を考慮した実際の出力力は、次のように表すことができる。
F_out = η × MA_ideal × F_in
機械的利益が大きくても、効率が低ければ実際の出力力は大幅に低下する。
3. 力増幅とエネルギーの関係
力増幅機構は力を増加させるが、エネルギーそのものを増幅するわけではない。
例えば、入力力が100 N、入力移動距離が100 mmの場合、入力仕事は次のとおりである。
W_in = 100 × 0.1 = 10 J
効率が100%で、出力移動距離が10 mmの場合、出力力は次のようになる。
F_out = 10 / 0.01 = 1,000 N
出力力は10倍になるが、移動距離は10分の1になる。
実際の効率が80%の場合、出力仕事は次のとおりである。
W_out = 0.8 × 10 = 8 J
したがって、実際の出力力は次のようになる。
F_out = 8 / 0.01 = 800 N
4. 瞬間機械的利益
一部の機構では、機械的利益が運動位置によって変化する。
これを瞬間機械的利益という。
IMA = F_out / F_in
レバーや一定減速比の歯車機構は比較的一定の機械的利益を持つが、次の機構では位置によって大きく変化する。
トグル機構
カム機構
偏心機構
四節リンク
クランク機構
可変角度くさび
複合リンク機構
力増幅機構の選定では、平均機械的利益よりも、最終作業位置における瞬間機械的利益が重要になる場合がある。
5. 力増幅機構の基本分類
5.1 レバー原理
第1種レバー
第2種レバー
複合レバー
ベルクランク
リンクレバー
5.2 特異点接近原理
トグル機構
ニーレバー
オーバーセンタリンク
リンクプレス
5.3 傾斜面原理
単一くさび
二重くさび
テーパ
拡張マンドレル
ローラくさび
5.4 らせん面原理
角ねじ
台形ねじ
ボールねじ
ローラねじ
差動ねじ
5.5 回転半径変化原理
カム
偏心軸
偏心ブッシュ
スパイラルカム
5.6 減速原理
歯車減速機
ウォームギヤ
遊星歯車
ラック・アンド・ピニオン
チェーン・スプロケット
ベルト・プーリ
5.7 流体圧力原理
油圧シリンダ
油圧増圧器
空気圧・油圧増圧器
差動ピストン
流体式レバー
5.8 弾性変形原理
フレクシャレバー
ブリッジ形フレクシャ増幅器
多段フレクシャ
圧電式変位・力変換機構
6. レバー機構
6.1 定義
レバーは、支点を中心とした入力腕と出力腕の長さの差を利用して力を増幅する最も基本的な機構である。
6.2 基本的な力の関係
理想的なレバーでは、モーメントの釣合いから次の関係が成立する。
F_in × L_in = F_out × L_out
したがって、
F_out = F_in × L_in / L_out
ここで、
L_in:入力力作用点から支点までの距離
L_out:出力力作用点から支点までの距離
6.3 機械的利益
MA = L_in / L_out
入力腕が出力腕より長いほど、出力力は大きくなる。
6.4 実際の力の関係
支点摩擦および機構効率を考慮すると、次のように近似できる。
F_out = ηF_inL_in / L_out
6.5 主なレバー形式
第1種レバー
第2種レバー
第3種レバー
ベルクランク
両腕レバー
片腕レバー
曲線レバー
7. 第1種レバー
7.1 構造
支点が入力力と出力力の間に位置する。
入力力 — 支点 — 出力力
7.2 特徴
力を増幅できる
力の方向を反転できる
入力腕と出力腕を入れ替えられる
双方向動作に適している
7.3 用途
プライヤ
はさみ
てこ棒
手動プレス
バルブレバー
リンク駆動装置
8. 第2種レバー
8.1 構造
出力荷重が支点と入力力の間に位置する。
支点 — 出力荷重 — 入力力
8.2 特徴
入力腕が常に出力腕より長いため、力の増幅に有利である。
8.3 用途
手押し車
栓抜き
レバー式圧縮工具
一部のパンチング装置
手動昇降装置
9. 第3種レバー
9.1 構造
入力力が支点と出力荷重の間に位置する。
支点 — 入力力 — 出力荷重
9.2 特徴
第3種レバーは一般に力を増幅しない。
代わりに、次の特性を得る。
出力速度の増加
出力移動距離の増加
高速応答
広い運動範囲
したがって、力増幅機構よりも、変位または速度増幅機構として分類する方が適切である。
10. ベルクランクレバー
10.1 定義
ベルクランクは、通常、直角または所定の角度に配置された二つの腕を用いて、力の方向を変換しながら増幅するレバーである。
10.2 力の関係
作用線が各腕に対して垂直である場合、次の関係が成立する。
F_inL_in = F_outL_out
垂直でない場合は、実際のモーメントアームを使用する。
F_inr_in⊥ = F_outr_out⊥
10.3 主な用途
方向変換リンク
航空機操縦機構
バルブアクチュエータ
プレス
自動化装置
ケーブル駆動機構
11. 複合レバー機構
11.1 定義
二つ以上のレバーを直列に接続し、各段階で力を増幅する機構である。
11.2 全体の機械的利益
各段階の機械的利益をMA₁、MA₂、MA₃とすると、
MA_total = MA₁ × MA₂ × MA₃
11.3 実際の効率
各段階の効率をη₁、η₂、η₃とすると、
η_total = η₁ × η₂ × η₃
したがって、実際の出力力は次のようになる。
F_out = F_in × MA_total × η_total
11.4 長所
限られた空間で大きな増幅比を得られる
力の方向を複数回変更できる
複数の出力を構成できる
複数機構を同期駆動できる
11.5 短所
ジョイント摩擦が増加する
すきまが累積する
弾性変形が増加する
部品点数が増加する
組立精度の要求が高くなる
12. トグル機構
12.1 定義
トグル機構は、二つのリンクがほぼ一直線に近づくとき、非常に大きな瞬間機械的利益を発生する機構である。
12.2 基本構造
入力レバー
駆動リンク
トグルジョイント
出力スライダまたは出力リンク
固定フレーム
ピンおよびブッシュ
12.3 作動原理
トグルリンクが折り畳まれた状態では、出力移動量が大きく、出力力は小さい。
リンクが伸びて一直線に近づくほど、出力移動量は減少し、出力力は増加する。
高速接近
→ リンク展開
→ 出力速度低下
→ 力増幅の増加
→ デッドセンタへの接近
13. トグル機構の力関係
簡略化した対称トグルにおいて、各リンクが出力軸に対して角度θをなす場合、機械的利益は概念的に次の関係を持つ。
MA ∝ 1 / tanθ
構造によっては、出力力は次のような形で表される。
F_out ≈ F_in / 2tanθ
正確な式は、入力点、リンク長さ、駆動方式および力の作用方向によって異なる。
θが小さくなるほど、理論上の出力力は急激に増加する。
しかし、θが0に近づくと、実際の機構ではリンクおよびフレームの変形が支配的になる。
14. デッドセンタおよび特異点
14.1 デッドセンタ
二つのトグルリンクが完全に一直線になる位置である。
この位置では、入力運動に対する出力方向の変位がほとんど発生しない。
14.2 特異点
デッドセンタは、機構学的特異点の一種である。
特異点付近では、次の現象が発生する。
理論的機械的利益の急増
出力速度の急減
リンク内部圧縮力の急増
組立誤差に対する感度増加
摩擦の影響増加
解析上の数値不安定性
14.3 実際の出力力の限界
デッドセンタで無限大の力が発生するわけではない。
実際の出力力は、次の要因によって制限される。
リンクの圧縮変形
フレーム変形
ピンの曲げ
ブッシュ変形
接触部変形
アクチュエータの最大荷重
材料の降伏
座屈
15. オーバーセンタ機構
15.1 定義
トグルリンクがデッドセンタをわずかに通過した状態をオーバーセンタという。
15.2 特徴
オーバーセンタ位置では、出力荷重がリンクを容易に逆方向へ折り畳むことができず、機械的なロック効果が生じる。
15.3 設計検討事項
オーバーセンタ移動量
ストッパ位置
リンクの弾性変形
解除力
組立公差
摩耗後のロック状態
衝撃および振動
15.4 注意点
オーバーセンタ量が大きすぎると、次の問題が発生する。
解除力の増加
内部荷重の増加
衝撃の増加
部品摩耗の増加
作動時間の増加
16. トグル機構の主な種類
単一トグル
二重トグル
対称トグル
非対称トグル
直線出力形トグル
回転出力形トグル
ニーレバー
複合トグル
多点同期トグル
16.1 単一トグル
一つのトグルジョイントを使用して力を増幅する。
16.2 二重トグル
二つのトグル構造が出力部に対して対称に作用する。
偏心荷重を低減し、大きな力を発生させるのに有利である。
16.3 複合トグル
レバーまたは追加リンクと組み合わせ、多段で力を増幅する。
17. トグル機構の長所と短所
17.1 長所
非常に大きな最終出力力
高速な初期接近
短い駆動ストローク
オーバーセンタロックが可能
繰返し運転に適している
手動、空気圧、油圧、電動駆動に対応可能
17.2 短所
最終位置で内部荷重が非常に大きい
出力力が位置によって大きく変化する
リンクおよびピンの疲労解析が必要
特異点通過時の制御が難しい
芯ずれに敏感である
挟まれおよび圧壊の危険が大きい
18. くさび機構
18.1 定義
くさび機構は、傾斜面を移動させることで、入力方向とは異なる方向に大きな出力力を発生させる機構である。
くさびは、移動する斜面として考えることができる。
18.2 基本構成
くさび
スライダ
支持面
出力ブロック
ガイド
駆動部
18.3 理想的な力関係
摩擦を無視し、くさび角をαとすると、
F_in = F_outtanα
したがって、
F_out = F_in / tanα
くさび角が小さいほど、機械的利益は大きくなる。
19. くさび機構の摩擦
19.1 摩擦角
摩擦係数をμとすると、摩擦角φは次のとおりである。
φ = tan⁻¹μ
19.2 くさび挿入力
摩擦を考慮したくさび挿入力は、概念的に次のように表される。
F_in ≈ F_outtan(α + φ)
19.3 くさび解除力
くさびを引き抜く場合、摩擦力の作用方向は挿入時と反対になる。
構造および荷重条件によって、解除力が挿入力より大きくなる場合も、小さくなる場合もある。
19.4 効率
くさび角が小さすぎると、機械的利益は大きくなるが、すべり距離と摩擦損失も増加する。
20. くさびのセルフロック性
出力荷重によって、くさびが自然に抜け出さない性質をセルフロック性という。
一般に、次の条件ではセルフロックしやすい。
φ > α
または、
μ > tanα
ただし、次の条件ではセルフロック性が低下する可能性がある。
潤滑
振動
衝撃
表面摩耗
硬さの変化
汚染物除去
温度変化
安全上重要な機構では、摩擦によるセルフロックだけに依存してはならない。
21. くさび機構の主な種類
単一くさび
二重くさび
対称くさび
クロスくさび
ローラくさび
テーパスリーブ
拡張くさび
円すいくさび
らせんくさび
21.1 二重くさび
一つの入力運動によって、互いに反対方向の二つの出力力を発生できる。
21.2 対称くさび
二つの出力部に対称に荷重を伝達し、偏心を低減する。
21.3 ローラくさび
すべり接触の代わりにローラを使用し、摩擦および摩耗を低減する。
22. くさび機構の長所と短所
22.1 長所
大きな力増幅
コンパクトな構造
力方向の変換
複数出力への対応
セルフロックが可能
高い構造剛性
22.2 短所
すべり摩擦
接触面の摩耗
潤滑条件による出力力の変化
解除力が大きくなる可能性
高精度な傾斜面加工が必要
異物による焼付きの可能性
23. ねじ機構
23.1 定義
ねじ機構は、入力回転トルクを大きな軸方向力へ変換する力増幅機構である。
ねじ山は、円筒の周囲に巻き付けられた傾斜面として考えることができる。
23.2 主な種類
角ねじ
台形ねじ
メートルねじ
のこ歯ねじ
ボールねじ
ローラねじ
差動ねじ
23.3 基本的な力関係
ねじのリードをL、入力トルクをT、効率をηとすると、軸方向力は次のように近似できる。
F ≈ 2πηT / L
同一トルクでは、リードが小さいほど大きな軸力を得られる。
24. ねじのリードおよびリード角
24.1 リード
ねじが1回転したとき、ナットが軸方向へ移動する距離である。
24.2 リード角
ねじの平均径をd_mとすると、リード角λは次のように表される。
tanλ = L / πd_m
リード角が小さいほど力増幅比は大きくなるが、移動速度は低下する。
25. ねじ機構の入力トルク
角ねじにおいて、荷重を上昇させるために必要なトルクは次のように近似できる。
T_raise = Fd_m / 2 × tan(λ + φ)
荷重を下降させるトルクは、条件に応じて次のように表される。
T_lower = Fd_m / 2 × tan(φ − λ)
ここで、
F:軸方向荷重
d_m:ねじ平均径
λ:リード角
φ:摩擦角
実際のねじ機構では、カラーまたはスラスト軸受の摩擦も考慮する必要がある。
26. ねじのセルフロック性および逆駆動
26.1 セルフロック条件
一般に、次の条件を満たす場合、セルフロック性を持つ。
λ < φ
リード角が摩擦角より小さい場合、荷重によってねじが逆回転しにくい。
26.2 逆駆動
出力側の軸力によって、ねじが回転する現象を逆駆動という。
ボールねじおよびローラねじは効率が高いため、逆駆動されやすい。
26.3 設計上の注意
垂直軸や安全上重要な装置では、次の追加装置を検討する必要がある。
モータブレーキ
セーフティナット
ラチェット
機械式ロックピン
ウォーム減速機
落下防止装置
27. ねじ機構の効率
角ねじの上昇効率は、次のように表すことができる。
η = tanλ / tan(λ + φ)
リード角が小さいと機械的利益は大きくなるが、効率は低下する可能性がある。
したがって、力増幅のみを目的としてリードを過度に小さくすると、次の問題が発生する。
発熱
摩耗
作動時間の増加
エネルギー消費の増加
ねじ山の焼付き
28. 差動ねじ
28.1 定義
差動ねじは、異なるリードを持つ二つのねじを組み合わせ、非常に小さな実効出力変位を得る機構である。
28.2 実効リード
二つのねじのリードをL₁およびL₂とすると、
L_eff = |L₁ − L₂|
実効リードが非常に小さくなるため、大きな力増幅および微細調整が可能になる。
28.3 用途
精密調整装置
光学ステージ
測定機器
微細圧縮装置
精密プレス
29. ボールねじおよびローラねじ
29.1 ボールねじ
ボールの循環転がり接触を利用し、高効率でトルクを軸力へ変換する。
特徴
高効率
低摩擦
高速運転
高精度位置制御
逆駆動されやすい
29.2 ローラねじ
ねじ軸とナットの間に、ねじ形状を持つローラを配置する。
特徴
非常に高い軸方向荷重容量
高い剛性
長寿命
小リードの実現が可能
高コストかつ高精度な組立が必要
29.3 力増幅の観点
ボールねじおよびローラねじは大きな軸力を発生できるが、セルフロック機構としては適さない場合がある。
30. カム機構
30.1 定義
カム機構は、回転するカムのプロファイル変化によって、フォロワへ変位と力を伝達する機構である。
30.2 力増幅原理
カム表面の局部的な傾斜角が小さいほど、大きな出力力を得ることができる。
カムトルクTが有効半径rに作用する場合、接線力は次のとおりである。
F_t = T / r
フォロワ運動方向の出力力は、接触角および圧力角によって変化する。
30.3 圧力角
圧力角は、カムがフォロワへ力を伝える方向とフォロワ運動方向との間の角度である。
圧力角が大きくなると、次の問題が発生する。
側面荷重の増加
摩擦増加
ガイド荷重増加
摩耗増加
効率低下
31. カム機構の主な種類
円板カム
円筒カム
フェースカム
スパイラルカム
ラジアルカム
くさびカム
コンジュゲートカム
31.1 円板カム
半径変化によってフォロワを移動させる。
31.2 スパイラルカム
回転角に応じて半径が連続的に変化する。
31.3 コンジュゲートカム
二つのカム面によってフォロワを両方向から拘束し、すきまを低減する。
32. 偏心機構
32.1 定義
偏心機構は、回転軸中心と出力接触面または円板中心をずらして配置し、回転運動を小さな直線変位と大きな力へ変換する機構である。
32.2 偏心量およびストローク
偏心量をeとすると、全直線ストロークはおよそ次のようになる。
S = 2e
32.3 力特性
偏心機構は、最終接触位置付近で、運動方向と接触半径の幾何学的関係に応じて大きな力を発生できる。
32.4 長所
構造が単純
高速作動
小さな回転角で大きな力を発生
コンパクト
レバーと組み合わせやすい
32.5 短所
有効ストロークが短い
出力力が位置によって変化する
接触応力が高い
摩耗に敏感
セルフロック性の検討が必要
33. 歯車減速によるトルク増幅
33.1 基本原理
歯車減速機は、入力速度を低下させ、出力トルクを増加させる。
T_out = ηiT_in
ここで、
T_out:出力トルク
T_in:入力トルク
i:減速比
η:減速機効率
33.2 速度関係
ω_out = ω_in / i
33.3 多段減速
全体減速比は、各段の減速比の積である。
i_total = i₁ × i₂ × i₃
33.4 実際の出力トルク
T_out = T_in × i_total × η_total
多段減速では、各段の効率が累積するため、損失を必ず考慮する必要がある。
34. 平歯車およびはすば歯車
34.1 平歯車
構造が単純
高効率
軸方向荷重がほとんど発生しない
高速運転時に騒音が発生する可能性がある
34.2 はすば歯車
滑らかなかみ合い
高い荷重容量
騒音が比較的小さい
軸方向荷重が発生する
効率損失が増加する場合がある
力増幅の観点では、減速比だけでなく、歯面強度および軸方向荷重を同時に検討する必要がある。
35. ウォームギヤ
35.1 定義
ウォームとウォームホイールを使用し、大きな減速比とトルク増幅を得る歯車機構である。
35.2 特徴
1段で大きな減速比
軸方向を直角に変更
コンパクトな構造
条件によってはセルフロック可能
35.3 短所
すべり摩擦が大きい
効率が低い場合がある
発熱
潤滑が重要
ウォームホイールの摩耗
35.4 セルフロック性
逆駆動性は、リード角、摩擦係数および潤滑条件によって決定される。
ウォームギヤのセルフロック性を、絶対的な安全機能として扱ってはならない。
36. 遊星歯車機構
36.1 特徴
高いトルク密度
入出力軸が同軸
複数歯車による荷重分担
コンパクトな構造
多段減速が可能
36.2 力増幅用途
サーボプレス
電動アクチュエータ
ロボット関節
昇降装置
回転駆動装置
36.3 設計検討事項
遊星歯車間の荷重分担
キャリア剛性
軸受荷重
バックラッシ
効率
潤滑
発熱
37. ラック・アンド・ピニオン機構
37.1 定義
ピニオンの回転トルクを、ラックの直線力へ変換する機構である。
37.2 出力力
ピニオンのピッチ半径をrとすると、
F_out = ηT_in / r
同一トルクでは、ピニオン半径が小さいほど大きな直線力を得られる。
37.3 減速機との組合せ
モータ
→ 減速機
→ ピニオン
→ ラック
→ 直線出力
全体出力力は、減速比とピニオン半径によって決定される。
F_out = η_total iT_motor / r
37.4 主な用途
大型プレス搬送装置
ガントリ装置
ドア駆動装置
昇降装置
多点同期駆動
センタリング機構
38. 滑車装置
38.1 定義
固定滑車と動滑車を組み合わせ、必要な入力力を低減する機構である。
38.2 理想的な機械的利益
動滑車ブロックを支持するロープ本数をnとすると、
MA = n
38.3 変位関係
入力側のロープ移動距離は、出力移動距離のn倍となる。
38.4 実際の検討事項
滑車軸受の摩擦
ロープ曲げ抵抗
ロープ伸び
滑車の芯合わせ
ロープ寿命
ドラム摩擦
安全率
38.5 主な用途
ホイスト
クレーン
手動昇降装置
張力調整装置
カウンタウェイト機構
39. 油圧による力増幅
39.1 パスカルの原理
密閉された流体に加えられた圧力は、すべての方向へ等しく伝達される。
P = F / A
39.2 油圧シリンダの出力力
F = PA
ここで、
P:流体圧力
A:ピストン有効面積
39.3 面積比による力増幅
小径ピストンに入力力F₁が作用し、大径ピストンから出力力F₂が発生する場合、
F₁ / A₁ = F₂ / A₂
したがって、
F₂ = F₁ × A₂ / A₁
39.4 変位関係
流体体積保存により、次の関係が成立する。
A₁s₁ = A₂s₂
大きな出力力を得る代わりに、出力ピストンの移動距離は減少する。
40. 油圧増圧器
40.1 定義
面積の異なる二つのピストンを直列に接続し、低い入力圧力を高い出力圧力へ変換する装置である。
40.2 圧力増幅比
入力ピストン面積をA₁、出力ピストン面積をA₂とすると、
P₂ = ηP₁A₁ / A₂
40.3 特徴
局所的に高圧を生成できる
大型ポンプなしで高圧を得られる
短い高圧ストロークに適している
空気圧と油圧を組み合わせられる
40.4 短所
出力流量が減少する
出力ストロークが減少する
シール管理が必要
圧力脈動
復帰回路が必要
連続大流量運転には不適
41. 空気圧・油圧増圧器
41.1 定義
大面積の空気圧ピストンで発生した力を、小面積の油圧ピストンへ伝達し、高い油圧を発生させる装置である。
41.2 作動順序
空気圧による高速接近
→ ワークへの接触
→ 増圧ピストン作動
→ 短い高圧油圧ストローク
→ 大きな最終出力力
41.3 長所
高速接近
大きな最終出力力
大型油圧ポンプが不要
比較的容易な自動化
作業工程でのみ大きなエネルギーを使用
41.4 短所
高圧ストロークが短い
回路が複雑
空気の圧縮性の影響を受ける
シールおよびバルブの保守が必要
42. 複合リンク力増幅機構
42.1 定義
複数のリンクを組み合わせ、出力経路と力増幅特性を同時に設計する機構である。
42.2 代表的な構成
レバーとトグル
カムとトグル
くさびとリンク
ねじとトグル
歯車とラック
クランクとリンク
油圧駆動とトグル
42.3 長所
大きな総合増幅比
希望する力曲線を実現可能
高速接近と大きな最終出力
多様な出力方向
複数出力の同期
42.4 短所
解析が複雑
すきまが累積する
摩擦損失が増加する
部品数が増加する
故障箇所が増える
組立および調整が難しい
43. フレクシャ式力増幅機構
43.1 定義
フレクシャ式力増幅機構は、材料の弾性変形とレバー原理を利用し、微小入力を所定方向の出力力または変位へ変換する機構である。
43.2 主な種類
フレクシャレバー
ブリッジ形増幅機構
ひし形フレクシャ
多段フレクシャ
圧電式増幅機構
43.3 特徴
バックラッシがない
摩擦がない
潤滑が不要
高い繰返し精度
精密な力伝達
一体構造として製作可能
43.4 短所
変形範囲が限定される
疲労寿命の検討が必要
応力集中
過負荷許容量が小さい
弾性復元力が存在する
非線形剛性となる場合がある
44. 機械的利益と構造剛性の関係
機械的利益が大きいことが、常に有利であるとは限らない。
増幅比が大きくなるほど、次の問題も増加する可能性がある。
出力移動距離の減少
内部部材荷重の増加
弾性変形の増加
摩擦損失の増加
応力集中の増加
解除力の増加
組立誤差感度の増加
速度の低下
実際の力増幅性能は、次の要素を総合して評価する必要がある。
実際の出力性能
= 機械的利益
× 効率
× 構造剛性
× 芯合わせ精度
× 駆動源性能
45. 荷重経路
45.1 定義
荷重経路とは、出力荷重が機構を通じてフレームおよび支持部へ伝達される経路である。
45.2 良好な荷重経路
短く直接的
対称的
偏心が小さい
主として引張および圧縮で伝達
急激な断面変化が少ない
支持部に近い
45.3 不良な荷重経路
長い片持ちアーム
大きな偏心
薄いフレーム
複雑な迂回経路
単一ピンへの荷重集中
非対称配置
荷重経路が不適切な場合、計算上の出力力が大きくても、実際の作業点では大きな変形が発生することがある。
46. 構造剛性および変形
46.1 剛性
k = F / δ
ここで、
k:剛性
F:荷重
δ:変位
46.2 システム全体の変形
力増幅機構の全変形には、次の要素が含まれる。
リンク変形
レバー曲げ
ピン曲げ
ブッシュ変形
フレーム変形
接触部変形
ねじ変形
軸受変形
アクチュエータ変形
46.3 直列剛性
複数要素が直列に変形する場合、全体剛性は次のとおりである。
1 / k_total
= 1 / k₁ + 1 / k₂ + 1 / k₃ + …
最も剛性の低い部品が、システム全体の変形を支配する場合がある。
47. レバーおよびリンクの曲げ
出力力Fが支点から距離Lの位置に作用する場合、曲げモーメントは次のとおりである。
M = FL
曲げ応力は次のとおりである。
σ = M / Z
ここで、Zは断面係数である。
単純な片持ち部材のたわみは、次のように表される。
δ = FL³ / 3EI
ここで、
E:縦弾性係数
I:断面二次モーメント
たわみは部材長さの3乗に比例して増加する。
48. 圧縮部材および座屈
トグルリンク、プレスロッドおよびくさび支持部には、大きな圧縮荷重が作用する。
細長い部材のオイラー座屈荷重は、次のとおりである。
P_cr = π²EI / (KL)²
ここで、
P_cr:臨界座屈荷重
E:縦弾性係数
I:断面二次モーメント
L:部材長さ
K:有効長係数
トグル機構では、デッドセンタ付近でリンク圧縮力が非常に大きくなるため、座屈解析が重要である。
49. ピンおよびブッシュ設計
49.1 ピンのせん断
単純せん断における平均せん断応力は、
τ = F / A
二重せん断の場合は、
τ = F / 2A
49.2 面圧
ピン径をd、接触厚さをtとすると、
p_b = F / dt
49.3 ピンの曲げ
実際のピンは、支持部間隔によって純粋せん断だけでなく曲げも受ける場合がある。
49.4 設計検討事項
せん断強度
曲げ強度
面圧
疲労
ピンすきま
ブッシュ摩耗
潤滑
ピン抜け防止
50. 接触応力
くさび、カム、ローラ、歯車およびねじ接触部には、高い局部接触応力が発生する。
代表的な損傷形態は次のとおりである。
ピッチング
スポーリング
ブリネリング
スコーリング
表面圧痕
塑性変形
摩耗
接触応力を低減する方法は次のとおりである。
接触面積を大きくする
ローラ径を大きくする
曲率半径を大きくする
表面硬さを高くする
潤滑を改善する
荷重を分散する
芯合わせ精度を向上する
51. 摩擦および効率
51.1 主な摩擦箇所
ピンとブッシュ
くさび面
ねじ山
カムとフォロワ
歯車歯面
シール
すべりガイド
ロープと滑車
51.2 摩擦の影響
出力力の低下
発熱の増加
入力力の増加
解除力の変化
セルフロック性の変化
摩耗増加
繰返し精度の低下
51.3 効率改善方法
転がり接触を使用する
適切な潤滑を行う
表面仕上げを改善する
芯合わせ精度を向上する
接触圧力を低減する
シール抵抗を低減する
不要なジョイントを削減する
52. すきまおよびバックラッシ
52.1 主な発生原因
ピンと穴のすきま
歯車バックラッシ
ねじとナットのすきま
軸受すきま
カムとフォロワのすきま
締結部の緩み
摩耗
52.2 影響
出力応答の遅れ
衝撃
位置誤差
力の変動
振動
繰返し精度の低下
荷重反転時の不安定性
52.3 低減方法
予圧
高精度はめあい
分割ナット
デュアルピニオン
コンジュゲートカム
予圧軸受
調整式ギブ
定期的なすきま補正
53. 力増幅機構の出力特性
力増幅機構は、出力力特性によって次の三つに分類できる。
53.1 一定増幅形
運動範囲全体で比較的一定の増幅比を持つ。
例:
単純レバー
一定減速比歯車列
油圧面積比
53.2 漸増形
運動が進むにつれて出力力が増加する。
例:
トグル
偏心機構
カム
一部のリンク機構
53.3 二段増幅形
初期段階では高速移動し、最終段階で大きな力を発生する。
例:
空気圧・油圧増圧器
レバーとトグルの組合せ
ねじとくさびの組合せ
二段プレス
54. 力–変位曲線
力増幅機構は、最大力だけでなく、力–変位曲線によって評価する必要がある。
代表的な形状は次のとおりである。
一定出力力
線形増加
非線形急増
段階的増加
最大点通過後の減少
ヒステリシス
力–変位曲線は、次の性能に影響する。
接触衝撃
成形品質
圧入深さ
過負荷
モータ容量
エネルギー消費
構造変形
55. 入力源と力増幅機構の組合せ
55.1 手動入力
ハンドレバー
ハンドホイール
フットペダル
レンチ
クランクハンドル
55.2 空気圧入力
空気圧シリンダ
ロータリアクチュエータ
エアモータ
55.3 油圧入力
油圧シリンダ
油圧モータ
油圧ポンプ
55.4 電動入力
サーボモータ
ステッピングモータ
誘導モータ
電動シリンダ
ソレノイド
55.5 選定基準
必要な力
ストローク
速度
サイクル数
制御性
エネルギー効率
設置空間
使用環境
安全性
56. 過負荷保護
56.1 過負荷の原因
ワークの誤挿入
機械的干渉
ストッパへの衝突
材料強度の増加
組立誤差
センサ異常
過大な駆動トルク
過大な圧力設定
56.2 保護方式
トルクリミッタ
スリップクラッチ
せん断ピン
リリーフバルブ
サーボトルク制限
ばね緩衝
ショックアブソーバ
荷重センサ
機械式ストッパ
ソフトウェアインターロック
56.3 せん断ピン
設定荷重を超えたときにピンがせん断し、主要機構を保護する。
単純で確実な方式であるが、作動後には交換が必要である。
57. セルフロックおよび安全ロック
摩擦を利用したセルフロック機構は、動力供給がなくても荷重を保持できる。
代表的なセルフロック機構は次のとおりである。
小リードねじ
小角度くさび
オーバーセンタトグル
一部のウォームギヤ
ただし、摩擦係数は次の条件によって変化する。
潤滑
温度
表面摩耗
振動
汚染
湿気
表面処理
したがって、安全上重要な装置では、次のような追加ロック装置を使用する必要がある。
ブレーキ
ラチェット
ロックピン
セーフティナット
機械式ラッチ
パイロットチェックバルブ
58. 主な故障形態
58.1 レバーおよびリンク
曲げ変形
疲労亀裂
ピン穴変形
リンク座屈
溶接部亀裂
58.2 トグル機構
ピンおよびブッシュの摩耗
リンク座屈
過大なオーバーセンタ移動
ストッパ破損
フレーム変形
特異点付近の衝撃
58.3 くさび機構
くさび面の摩耗
スコーリング
焼付き
塑性変形
解除不良
潤滑不良
58.4 ねじ機構
ねじ山摩耗
かじり
疲労破損
ナット亀裂
座屈
過熱
58.5 歯車機構
歯面ピッチング
歯元疲労
歯の破損
バックラッシ増加
潤滑不良
軸受損傷
58.6 油圧機構
シール漏れ
圧力低下
バルブ固着
作動油汚染
ホース破損
空気混入
59. 保守および点検
59.1 日常点検
出力力の変化
異常音
振動
発熱
油漏れ
すきま
作動時間の変化
ロック状態
解除状態
59.2 定期点検
リンク変形
ピンおよびブッシュの摩耗
くさび面
ねじ山
カム接触面
歯車歯面
軸受
取付ボルト
フレーム亀裂
潤滑状態
59.3 出力力の確認
出力力を定期的に測定し、初期基準値と比較する。
測定方法には、次のものがある。
ロードセル
圧力センサ
トルクセンサ
ひずみゲージ
モータ電流
変位センサ
60. 材料および表面処理
60.1 レバーおよびリンク
炭素鋼
合金鋼
鋳鋼
アルミニウム合金
ステンレス鋼
60.2 ピンおよびブッシュ
熱処理合金鋼
軸受鋼
青銅
焼結合金
ポリマーブッシュ
60.3 くさびおよびカム
浸炭鋼
窒化鋼
工具鋼
軸受鋼
60.4 歯車
浸炭鋼
調質鋼
窒化鋼
鋳鉄
エンジニアリングプラスチック
60.5 表面処理
浸炭
窒化
高周波焼入れ
硬質クロムめっき
無電解ニッケルめっき
DLCコーティング
研削
ラッピング
ショットピーニング
61. 力増幅機構の選定手順
61.1 作業内容の定義
圧縮
引張
圧入
パンチング
切断
昇降
ロック
トルク増幅
微細調整
61.2 出力条件の定義
最大出力力
最大出力トルク
出力ストローク
出力速度
作動方向
繰返し寿命
力精度
61.3 入力条件の定義
入力力
入力トルク
入力ストローク
入力速度
入力源の種類
使用可能な動力
61.4 必要な機械的利益の計算
MA_required = F_required / F_available
効率および安全率を考慮すると、
MA_design
≥ SF × F_required / ηF_available
61.5 機構形式の比較
レバー
複合レバー
トグル
くさび
ねじ
カム
歯車
油圧
複合機構
61.6 変位および速度の確認
高い増幅比によって、出力ストロークや出力速度が許容値以下にならないことを確認する。
61.7 強度および剛性の確認
リンク強度
座屈
ピンせん断
ブッシュ面圧
フレーム変形
接触応力
軸受荷重
61.8 摩擦および効率の確認
実際の出力力
発熱
潤滑
解除力
セルフロック性
エネルギー損失
61.9 安全性の確認
過負荷
機構破損
蓄積エネルギー
特異点
逆駆動
非常解除
機械式ロック
61.10 試験および検証
出力力試験
ストローク試験
繰返し寿命試験
変形測定
過負荷試験
温度試験
潤滑試験
非常解除試験
62. 適用事例
62.1 手動レバープレス
作業者の入力力
→ 長いレバー
→ 短い出力腕
→ ラム出力力
主な検討事項:
レバー比
ハンドル長さ
作業者入力力
ラムストローク
フレーム変形
ピン荷重
安全カバー
62.2 トグルプレス
モータまたはシリンダ
→ リンク駆動
→ トグル展開
→ デッドセンタへの接近
→ 大きな最終圧縮力
主な検討事項:
トグル角
リンク座屈
出力力曲線
オーバーセンタ条件
ストッパ
解除力
繰返し寿命
62.3 くさび拡張機構
シリンダ入力
→ 中央くさびの移動
→ 両側スライダの拡張
→ 対称出力力
主な検討事項:
くさび角
摩擦
潤滑
出力同期性
復帰ばね
接触面摩耗
62.4 ねじジャッキ
ハンドルトルク
→ 小リードねじ
→ 軸方向昇降力
→ 荷重支持
主な検討事項:
ねじリード
セルフロック性
ねじ座屈
ナット面圧
ハンドルトルク
安全率
潤滑
62.5 歯車付き電動アクチュエータ
モータ
→ 遊星減速機
→ ボールねじ
→ 大きな直線出力力
主な検討事項:
総減速比
ねじリード
モータトルク
効率
発熱
逆駆動
ブレーキ
62.6 空気圧・油圧増圧プレス
空気圧による高速接近
→ ワークへの接触
→ 油圧増圧
→ 短い高圧ストローク
主な検討事項:
増圧比
高圧ストローク
出力流量
シール
圧力制御
過負荷
復帰時間
63. 解析および設計ツール
63.1 CADモーション解析
リンク角度
入出力変位
デッドセンタ
特異点
干渉
運動範囲
出力速度
63.2 多体系動力学解析
ジョイント反力
リンク荷重
駆動力
衝撃
慣性力
力–変位曲線
63.3 有限要素解析
レバー応力
リンク座屈
ピン穴応力
フレーム変形
くさび接触応力
歯車歯面応力
ねじ応力
63.4 流体回路解析
圧力増幅比
圧力損失
シリンダ速度
出力流量
バルブ応答
漏れ
アキュムレータの影響
63.5 実験検証
ロードセルによる出力力測定
ひずみゲージによる変形測定
高速度カメラによる運動解析
温度測定
振動測定
繰返し寿命試験
64. 結論
力増幅機構は、小さな入力力または入力トルクを、より大きな出力力または出力トルクへ変換する機械機構である。力を増加させる代わりに、出力移動距離および出力速度は低下し、実際の性能は摩擦と構造変形によって制限される。
レバー機構は、腕の長さの比によって比較的一定した機械的利益を提供する。トグル機構は、デッドセンタへ近づくほど瞬間機械的利益が急激に増加する。くさび機構は、傾斜面を利用して力の方向を変えながら増幅し、ねじ機構は回転トルクを大きな軸方向力へ変換する。
カムおよび偏心機構は、小さな回転運動から大きな最終出力力を発生できる。歯車減速機構は速度を低下させながらトルクを増加させ、ラック・アンド・ピニオン機構は増幅されたトルクを直線力へ変換する。油圧機構は、ピストン面積比を利用して大きな出力力または高い圧力を発生させる。
理論上の機械的利益が大きいからといって、実際の出力力も必ず大きくなるとは限らない。特異点付近におけるリンク変形、くさびおよびねじの摩擦、歯車効率、フレーム剛性、ピンとブッシュの変形、ならびに接触面の摩耗を総合的に検討する必要がある。
力増幅機構は、次の手順で設計および選定することが適切である。
作業内容および出力荷重の定義
→ 使用可能な入力力または入力トルクの確認
→ 必要な機械的利益の計算
→ 出力ストロークおよび速度の確認
→ 力増幅原理の選定
→ 摩擦および効率の反映
→ リンク・レバー・ピン・ねじ・歯車の強度確認
→ 構造剛性および変形の確認
→ セルフロック性および逆駆動性の確認
→ 過負荷保護および安全ロックの設計
→ シミュレーションおよび出力力試験
→ 繰返し寿命および保守性の検証
適切に設計された力増幅機構は、限られた入力動力から必要な作業力を確保し、機械の生産性、精度、エネルギー効率、安定性および信頼性を向上させる重要な構成要素となる。