1. 概要
リンク機構とは、複数の剛体リンクを回転ジョイント、直進ジョイント、またはその他の機械的ジョイントによって接続し、入力運動を必要な出力運動および軌跡へ変換する機械システムである。
一般に、モータ、シリンダ、または作業者から与えられる単純な回転運動や直線運動を、次のような運動へ変換するために使用される。
制限角度内の揺動運動
直線往復運動
平行開閉運動
所定の曲線軌跡
非対称往復運動
力を増幅したクランプ運動
複数作業部の同期運動
姿勢を維持した並進運動
リンク機構の基本的な機能の流れは、次のとおりである。
アクチュエータ
→ 入力リンク
→ 中間リンク
→ 運動および力の伝達
→ 出力リンク
→ 作業部の運動
例えば、モータの連続回転を包装材料折り曲げアームの揺動運動へ変換する装置は、次のように構成できる。
モータの回転運動
→ 減速機
→ 入力クランク
→ カプラリンク
→ 出力ロッカ
→ 折り曲げアームの揺動運動
カム機構とは異なり、リンク機構では大部分の運動が回転ジョイントまたは直進ジョイントを介して伝達される。適切に設計することで、接触面のすべりと摩耗を低減しながら、比較的大きな荷重を伝達できる。
一方、リンク長さ、ジョイント位置およびフレーム配置によって出力運動が大きく変化するため、体系的な運動学解析が必要である。
2. リンク機構の基本用語
2.1 リンク
リンクとは、機構を構成する比較的剛性の高い部材である。
理想的な運動学解析では、リンクを変形しない剛体として扱う。しかし、実際の設計では、曲げ、ねじり、引張り、圧縮および座屈が発生する可能性がある。
代表的なリンク形状は次のとおりである。
直線棒状リンク
板状リンク
三角形リンク
レバー形リンク
クランク
ロッカ
スライダ
リンクと軸を一体化した構造
一つのリンクが二つ以上のジョイントを持つ場合もある。
2.2 固定リンク
固定リンクは、機構の基準となるフレームまたはベースである。
固定リンク自体は動かず、他のリンクの回転軸やガイドを支持する。
同じリンク構成であっても、どのリンクを固定するかによって、まったく異なる運動が生成される場合がある。
2.3 入力リンク
入力リンクは、モータ、シリンダ、作業者、または他の機構から運動を受け取り、リンク機構へ伝達する。
代表的な入力リンクは次のとおりである。
連続回転クランク
制限角回転レバー
直線移動スライダ
カムによって駆動されるロッカ
シリンダに接続されたリンク
2.4 出力リンク
出力リンクは、リンク機構で生成された最終的な運動を作業部へ伝達する。
出力運動には、次のような形式がある。
連続回転
揺動運動
直線往復運動
平行移動
曲線軌跡運動
クランプ運動
2.5 カプラリンク
カプラリンクは、入力リンクと出力リンクを接続する中間リンクである。
カプラリンク上の特定の点は、一般に複雑な曲線軌跡を描く。この軌跡をカプラ曲線という。
カプラ曲線を利用することで、次のような運動を生成できる。
直線に近い軌跡
楕円軌跡
休止に近い区間を含む軌跡
早戻り軌跡
製品を持ち上げてから移送する軌跡
2.6 ジョイントまたは運動対偶
ジョイントとは、二つのリンクを接続しながら、それらの間に相対運動を許容する部分である。
機構学では、ジョイントを運動対偶またはキネマティックペアともいう。
3. ジョイントの種類
3.1 回転ジョイント
回転ジョイントは、二つのリンクが一つの軸を中心として相対回転することを許容する。
代表的な構造は次のとおりである。
ピンとブッシュ
軸と軸受
ヒンジ
ピボット
ボルトとスリーブ
回転ジョイントは、平面リンク機構で最も一般的に使用される。
設計検討事項
ピンのせん断応力
ピンの曲げ応力
ブッシュの面圧
ジョイントすきま
潤滑
軸方向抜け止め
繰返し疲労
腐食および汚染
3.2 直進ジョイント
直進ジョイントは、二つのリンク間で一方向の直線相対運動のみを許容する。
代表的な構造は次のとおりである。
スライダとガイド
リニアガイド
シャフトとリニアブッシュ
あり溝ガイド
スロットとブロック
直進ジョイントは、クランク・スライダ、ダブルスライダ、および直線搬送機構に使用される。
3.3 球面ジョイント
球面ジョイントは、一つの中心を基準として複数方向への回転を許容する。
代表的な構造は次のとおりである。
ボールジョイント
球面軸受
ロッドエンドベアリング
球面ジョイントは、空間リンク機構、ロボット、操舵装置、および組立誤差を吸収する必要がある機構に使用される。
3.4 円筒ジョイント
円筒ジョイントは、同一軸を中心とする回転運動と軸方向の直線運動を同時に許容する。
テレスコピックシャフトや一部の空間機構に使用できる。
3.5 ねじジョイント
ねじジョイントは、回転運動と軸方向直線運動を一定のリード関係で組み合わせたジョイントである。
調整リンク、クランプ装置および微細位置調整機構に使用される。
3.6 高次対偶
高次対偶とは、二つのリンクが面ではなく、線または点で接触する運動対偶である。
代表例は次のとおりである。
カムとフォロワ
歯車のかみ合い
ローラとトラック
一部のピン・スロット接触
一般的なリンク機構は、主として回転ジョイントや直進ジョイントなどの低次対偶によって構成される。
4. リンク機構の自由度
4.1 自由度の概念
自由度とは、機構の位置を完全に決定するために必要な独立入力変数の数である。
一般的な単一アクチュエータのリンク機構は、1自由度を持つ。
例えば、四節リンクでは入力クランクの回転角度が決まると、他のすべてのリンク位置が決定されるため、自由度は1である。
4.2 平面機構の自由度計算
平面機構の自由度は、一般に次の式で計算できる。
M = 3(N − 1) − 2J₁ − J₂
ここで、
M:機構の自由度
N:固定リンクを含む全リンク数
J₁:回転ジョイントや直進ジョイントなど、1自由度の低次対偶数
J₂:カム接触などの高次対偶数
4.3 四節リンクの自由度
四節リンクは次のように構成される。
全リンク数:N = 4
回転ジョイント数:J₁ = 4
高次対偶数:J₂ = 0
したがって、
M = 3(4 − 1) − 2(4) = 1
つまり、一つの入力によって機構全体を駆動できる。
4.4 拘束条件と過拘束
自由度計算式は、リンクとジョイントが理想的に構成されていることを前提としている。
実際の機構では、次の理由によって計算上の自由度と実際の動作が異なる場合がある。
重複拘束
軸ずれ
ジョイント変形
リンクの弾性
組立誤差
空間的なねじれ
すきま
過拘束機構は、理論上は動作可能であっても、製作誤差によってかじりや過大な軸受荷重が発生する可能性がある。
5. リンク機構の基本分類
リンク機構は、リンク数、ジョイント形式、出力運動および機能によって分類できる。
5.1 リンク数による分類
四節リンク
五節リンク
六節リンク
八節リンク
多節リンク機構
パラレルリンク機構
5.2 ジョイント形式による分類
回転ジョイントリンク機構
回転・直進ジョイント混合機構
球面ジョイントを用いた空間リンク機構
スロットリンク機構
ねじジョイントを含む機構
5.3 出力運動による分類
回転運動生成機構
揺動運動生成機構
直線往復運動生成機構
平行運動生成機構
軌跡生成機構
力増幅機構
間欠運動生成機構
5.4 機能による分類
運動変換リンク
軌跡生成リンク
姿勢維持リンク
運動拡大・縮小リンク
クランプリンク
早戻りリンク
多軸同期リンク
荷重バランスリンク
6. 四節リンク機構
6.1 定義
四節リンク機構は、四本のリンクを四つの回転ジョイントで接続した、最も基本的な閉ループリンク機構である。
構成要素は次のとおりである。
固定リンク
入力リンク
カプラリンク
出力リンク
四節リンクは、単純な構造で多様な回転、揺動および軌跡運動を生成できるため、機械設計で最も広く使用される機構の一つである。
6.2 リンク名称
クランク
固定リンクに対して完全回転できるリンクである。
ロッカ
固定リンクに対して制限された角度範囲内でのみ揺動するリンクである。
カプラ
入力リンクと出力リンクを接続する浮動リンクである。
フレーム
二つの固定回転軸を接続する固定リンクである。
7. グラスホフ条件
7.1 定義
グラスホフ条件は、四節リンクにおいて一つ以上のリンクが完全回転できるかを判断するための基本条件である。
最短リンクをs、最長リンクをl、残りのリンクをpおよびqとすると、次の条件を用いる。
s + l ≤ p + q
7.2 グラスホフリンク機構
次の条件を満たす機構をグラスホフリンク機構という。
s + l < p + q
適切なリンクを固定することで、少なくとも一つのリンクが完全回転できる。
7.3 グラスホフ限界条件
次の条件の場合、変化点機構またはチェンジポイント機構という。
s + l = p + q
特定の位置でリンクが一直線状に並び、運動方向が不確定になったり、特異点が発生したりする場合がある。
7.4 非グラスホフリンク機構
次の条件では、どのリンクも固定リンクに対して完全回転できない。
s + l > p + q
一般にダブルロッカ機構となる。
8. 四節リンクの主な種類
8.1 クランク・ロッカ機構
最短リンクに隣接するリンクを固定すると、最短リンクが連続回転し、反対側の出力リンクが揺動する。
入力と出力
入力:連続回転
出力:制限角揺動
主な用途
自動車用ワイパ
揺動式フィーダ
包装材料折り曲げアーム
ダンパアクチュエータ
ポンプロッカ
製品押出し装置
8.2 ダブルクランク機構
最短リンクを固定すると、その両側のリンクがいずれも完全回転できる。
主な特徴
入力と出力の両方が回転運動
出力速度は一定とは限らない
二つの回転軸の位相関係を機械的に接続できる
主な用途
機関車の連結棒
平行クランク機構
多軸同期装置
回転搬送装置
8.3 ダブルロッカ機構
入力リンクと出力リンクの両方が、制限された角度範囲内で揺動する。
主な用途
サスペンション機構
ドアヒンジ機構
ロボット関節リンク
揺動式クランプ
調整レバー
8.4 平行四辺形リンク
対向するリンクの長さがそれぞれ等しい四節リンクである。
出力リンクは入力リンクと平行な姿勢を維持する。
主な機能
姿勢維持
平行移動
同一角度の伝達
ワーク方向の維持
主な用途
平行グリッパ
昇降テーブル
調整式照明アーム
ロボットエンドエフェクタ姿勢保持機構
平行ドア
8.5 逆平行四辺形リンク
対向するリンクの長さは等しいが、リンクが交差するように構成された機構である。
入力と出力の回転方向を反転させたり、特殊な軌跡を生成したりするために使用される。
8.6 台形リンク
対向リンクの長さが異なる非平行四節リンクである。
アッカーマン操舵リンクのように、左右の出力角度を異ならせるために使用できる。
9. クランク・スライダ機構
9.1 定義
クランク・スライダ機構は、四節リンクの一つの回転ジョイントを直進ジョイントに置き換えた変形機構である。
クランクの回転運動をスライダの直線往復運動へ変換したり、反対に直線往復運動を回転運動へ変換したりする。
9.2 主な構成要素
フレーム
クランク
コネクティングロッド
スライダ
回転ジョイント
直線ガイド
9.3 ストローク
インライン型クランク・スライダ機構において、クランク半径をrとすると、全ストロークは次のとおりである。
S = 2r
9.4 スライダ位置
コネクティングロッド長さをl、クランク角度をθとすると、スライダ位置は次の式で表される。
x = r cosθ + √(l² − r²sin²θ)
この式を時間で微分することで、速度および加速度を求められる。
9.5 オフセットクランク・スライダ
スライダの移動中心線を、クランクの回転中心から一定距離だけずらして配置した機構である。
オフセットを設けることで、次の特性を得られる。
前進行程と復帰行程の時間差
特定区間での速度調整
空間配置の改善
死点位置の変更
9.6 主な用途
エンジン
コンプレッサ
往復ポンプ
機械プレス
切断機
充填機
往復搬送装置
10. ダブルスライダ機構
10.1 定義
ダブルスライダ機構は、二つの直進ジョイントを含む閉ループリンク機構である。
入力リンクまたは出力リンクのうち二つが、それぞれ異なる方向へ直線運動する。
10.2 主な種類
楕円トラメル
スコッチヨーク
オルダムカップリングの運動学的構造
クロススライダ機構
10.3 楕円トラメル
互いに直角な二つのガイド内を移動するスライダを、一つのリンクで接続した機構である。
接続リンク上の特定の点は、楕円軌跡を描く。
用途
楕円作図装置
特殊軌跡生成機構
教育用機構
輪郭加工補助装置
10.4 スコッチヨーク
回転するクランクピンがスロット内を移動し、ヨークを往復運動させる。
出力変位は次の式で表される。
x = r cosθ
長所
構造が単純である
部品点数が少ない
コンパクトな往復機構を構成できる
単振動に近い出力が得られる
短所
ピンとスロット間にすべり摩擦が発生する
接触面が摩耗する
高速時に衝撃と発熱が発生する
潤滑が必要である
11. クランク・ロッカおよび揺動リンク
11.1 作動原理
連続回転する入力クランクが、カプラリンクを介して出力ロッカを往復回転させる。
出力ロッカの揺動角度は、次の項目によって決まる。
入力クランク長さ
カプラリンク長さ
出力ロッカ長さ
固定軸間距離
組立位置
11.2 運動特性
入力軸が一定速度で回転していても、出力ロッカの角速度は一定ではない。
出力ロッカは両端位置で瞬間的に停止し、ストローク中央部で速度が増加する。
11.3 主な用途
製品押出し
包装材料折り曲げ
ドア開閉
スイングノズル
ワイパ
揺動式切断機
ワーク反転装置
12. 早戻りリンク機構
12.1 定義
早戻り機構は、作業行程と復帰行程の所要時間を異ならせるリンク機構である。
一般に、作業行程は比較的低速で行い、無負荷の復帰行程を高速で行う。
12.2 主な種類
クランク・スロットレバー機構
オフセットクランク・スライダ
ホイットワース早戻り機構
ドラッグリンク式早戻り機構
12.3 時間比
早戻り比は、一般に次のように定義される。
早戻り比 = 作業行程時間 / 復帰行程時間
復帰行程の方が速い場合、この比は1より大きくなる。
12.4 主な用途
シェーパ
スロッタ
機械式切断機
プレスフィーダ
往復加工装置
13. トグルリンク機構
13.1 定義
トグル機構は、二本のリンクがほぼ一直線に近づくとき、非常に大きな機械的利益を発生させるリンク機構である。
小さな入力力から大きな出力力を得られるため、クランプ、金型ロックおよび加圧機構に使用される。
13.2 作動原理
二本のリンクが一直線状態に近づくほど、出力変位は小さくなり、出力力は増加する。
理想的な機構では、完全に一直線となる位置で機械的利益が非常に大きくなる。しかし実際の出力力は、次の要因によって制限される。
リンクの弾性変形
ジョイントすきま
フレーム剛性
ピンおよびブッシュの強度
アクチュエータの最大荷重
摩擦
13.3 死点とオーバーセンタ位置
リンクが完全に一直線となる位置を死点という。
死点をわずかに越えるように設計すると、外力が作用しても容易に解除されないオーバーセンターロック状態を形成できる。
13.4 主な用途
トグルクランプ
射出成形機の金型ロック
包装シール装置
ドアロック
機械プレス
ジグおよび治具
14. 平行リンク機構
14.1 定義
平行リンク機構は、移動する出力リンクの姿勢を一定に維持したり、入力リンクと平行な姿勢を保持したりする機構である。
14.2 主な機能
物体の水平姿勢維持
平行開閉
上下移動中の方向維持
回転角度の複製
二つの作業部の同期運動
14.3 主な種類
平行四辺形リンク
パンタグラフ
平行グリッパリンク
平行リフトリンク
スコット・ラッセル型直線運動リンク
14.4 主な用途
平行グリッパ
作業台昇降装置
ロボットエンドエフェクタ姿勢保持装置
包装材料把持装置
医療機器用アーム
照明およびモニタアーム
15. パンタグラフ
15.1 定義
パンタグラフは、複数のリンクを平行四辺形状に接続し、一つの点の運動を拡大、縮小または複製する機構である。
15.2 運動比
入力点と固定点の距離比によって、出力軌跡の拡大率または縮小率が決まる。
理想的なパンタグラフでは、出力軌跡は入力軌跡と幾何学的に相似となる。
15.3 主な機能
運動の拡大
運動の縮小
軌跡の複製
平行移動
到達距離の拡大
15.4 主な用途
図面拡大・縮小装置
昇降機構
鉄道車両用パンタグラフ
ロボットマニピュレータ
伸縮式支持装置
はさみ式リンク装置
16. はさみ式リンク機構
16.1 定義
はさみ式リンクは、複数組の交差リンクを連続的に接続し、比較的小さな入力移動量から大きな昇降距離または伸長距離を得る機構である。
16.2 主な特徴
折り畳み時の高さが低い
大きな垂直移動距離を確保できる
比較的大きな荷重を支持できる
上昇位置によって機械的利益が変化する
上昇開始時に大きなアクチュエータ力が必要になる場合がある
16.3 主な用途
シザーリフト
昇降作業台
車両リフト
コンベヤ高さ調整
病院用ベッド
伸縮式プラットフォーム
16.4 設計検討事項
リンクの圧縮および座屈
中央ピンのせん断と曲げ
下部スライダ荷重
アクチュエータシリンダの配置
最低位置で必要となる駆動力
横方向の揺れ
安全ストッパ
落下防止装置
17. 直線運動生成リンク機構
17.1 概要
回転ジョイントのみを用いて完全な直線運動を生成することは一般に複雑である。しかし、特定のリンク比率を用いることで、正確な直線または直線に近い軌跡を生成できる。
17.2 主な種類
ポースリエ・リプキンリンク
ワット直線運動機構
チェビシェフリンク
ホーケンリンク
スコット・ラッセル機構
ロバーツリンク
17.3 正確な直線運動機構
ポースリエリンクなどの機構は、幾何学的に正確な直線軌跡を生成できる。
ただし、部品点数が多く、広い設置空間を必要とするため、現代の機械では用途が限定される。
17.4 近似直線運動機構
ワットリンクおよびチェビシェフリンクは、一定区間内で直線に近い軌跡を生成する。
比較的単純な構造であるため、サスペンション、ガイドおよび歩行機構に使用できる。
18. 六節リンク機構
18.1 定義
六節リンク機構は、六本のリンクを組み合わせた閉ループリンク機構である。
四節リンクよりも複雑な軌跡および速度特性を生成できる。
18.2 主な種類
ワット型六節リンク
スティーブンソン型六節リンク
複合四節リンク
多重ループリンク機構
18.3 主な機能
複雑なカプラ軌跡の生成
長い休止区間の生成
入力と出力間の非線形関係の形成
高速接近と低速作業行程
姿勢制御
リンク機構によるピックアンドプレース運動
18.4 長所
一つの入力から複雑な出力運動を生成できる
カム機構より接触応力とすべりを低減できる
大きな荷重を伝達できる
機械的な同期が可能である
18.5 短所
運動学解析が複雑である
ジョイントすきまが累積する
リンク間で干渉する可能性がある
部品点数と組立コストが増加する
動的バランスの検討が難しい
19. 八節および多節リンク機構
19.1 定義
八節以上の多節リンク機構は、複数の閉ループと複数の出力リンクを用いて、非常に複雑な運動を生成する。
19.2 主な用途
ロボットグリッパ
歩行ロボット
包装機のピックアンドプレース装置
車両サスペンション
航空機のランディングギヤ
折り畳み構造
再構成可能な機械構造
19.3 設計上の特徴
多節リンク機構は複雑な運動を機械的に生成できるが、次の項目を慎重に管理する必要がある。
自由度
特異点
組立可能性
リンク間の衝突
ジョイント公差
動的荷重
潤滑および保守
製造コスト
20. 空間リンク機構
20.1 定義
空間リンク機構とは、リンクおよびジョイントが単一平面内ではなく、三次元空間内で動く機構である。
20.2 主なジョイント
回転ジョイント
直進ジョイント
球面ジョイント
ユニバーサルジョイント
円筒ジョイント
ねじジョイント
20.3 主な種類
ユニバーサルジョイント
ロボットマニピュレータ
スチュワートプラットフォーム
空間四節リンク
球面四節リンク
車両用操舵・サスペンションリンク
20.4 長所
三次元の位置および姿勢を制御できる
複雑な空間軌跡を生成できる
複数方向の荷重を伝達できる
20.5 短所
運動学および動力学解析が複雑である
組立誤差の影響を受けやすい
特異点解析が必要である
空間干渉の確認が難しい
21. パラレルリンク機構
21.1 定義
パラレルリンク機構は、一つの出力プラットフォームを複数の独立したリンクチェーンによって並列に支持し、駆動する機構である。
21.2 代表的な構造
デルタロボット
スチュワートプラットフォーム
平行グリッパ
五節パラレルリンク
パラレルマニピュレータ
21.3 長所
構造剛性が高い
移動部質量が小さい
高速運動が可能である
位置繰返し精度が高い
荷重を分散できる
21.4 短所
作業領域が制限される
順運動学または逆運動学が複雑である
特異点が存在する
リンク間干渉の可能性がある
精密な組立および校正が必要である
21.5 主な用途
高速ピックアンドプレースロボット
シミュレータ
精密位置決めプラットフォーム
工作機械
検査装置
食品包装ロボット
22. リンク機構の位置解析
22.1 目的
位置解析は、入力リンクの位置が与えられたとき、他のすべてのリンク位置と出力リンク角度を求める過程である。
主な解析結果は次のとおりである。
各リンクの角度
ジョイント座標
出力変位
カプラ点の軌跡
運動可能範囲
死点位置
22.2 図式解析
図面上でリンク長さと回転角度を用い、幾何学的にリンク位置を求める方法である。
長所
原理を理解しやすい
初期設計の検討に有効である
CADスケッチで迅速に確認できる
短所
高い精度を得にくい
繰返し計算が不便である
最適化には適していない
22.3 解析的方法
三角関数、ベクトルまたは複素数方程式を用いてリンク位置を計算する。
四節リンクの閉ループベクトル方程式は、概念的に次のように表せる。
r₁ + r₂ + r₃ + r₄ = 0
または固定リンクを基準として、次のように表現できる。
入力リンクベクトル + カプラリンクベクトル
= 固定リンクベクトル + 出力リンクベクトル
22.4 数値解析
非線形連立方程式を反復計算してリンク位置を求める。
複雑な多節リンクおよび空間リンク機構では、数値解析とコンピュータシミュレーションが一般的に使用される。
23. 速度解析
23.1 目的
速度解析では、入力リンクの角速度が与えられたとき、次の項目を計算する。
出力リンクの角速度
ジョイントの線速度
スライダ速度
カプラ点速度
相対速度
23.2 相対速度の関係
回転するリンク上の二点AおよびBの速度関係は、次のように表される。
v_B = v_A + ω × r_B/A
ここで、
v_A:点Aの速度
v_B:点Bの速度
ω:リンクの角速度
r_B/A:点Aから点Bへの位置ベクトル
23.3 瞬間中心法
平面運動を行うリンクは、特定の瞬間において、ある一点を中心に回転しているとみなすことができる。
この点を瞬間回転中心という。
瞬間中心法は、四節リンクの速度比および角速度を図式的に解析する際に有効である。
24. 加速度解析
24.1 目的
加速度解析は、リンクおよびジョイントに作用する慣性力を評価するために必要である。
主な計算対象は次のとおりである。
接線加速度
法線加速度
コリオリ加速度
スライダ加速度
出力リンクの角加速度
24.2 回転リンクの加速度
回転リンク上の点Bの加速度は、次の成分から構成される。
a_B = a_A + α × r_B/A − ω²r_B/A
ここで、
α × r:接線加速度
ω²r:法線加速度または向心加速度
24.3 コリオリ加速度
回転するスロットリンク内をスライダが相対移動する場合、コリオリ加速度が発生する。
a_c = 2ωv_r
ここで、
ω:スロットリンクの角速度
v_r:スロットに対するスライダの相対速度
クランク・スロットレバー機構や一部の早戻り機構で重要となる。
25. カプラ曲線と軌跡生成
25.1 カプラ曲線
カプラ曲線とは、入力リンクの運動に伴って、カプラリンク上の特定の点が描く軌跡である。
同じリンク機構であっても、点の位置を変更すると、まったく異なる軌跡を得られる。
25.2 主な軌跡形式
閉曲線
楕円軌跡
直線に近い区間
休止に近い区間
ループ状軌跡
非対称往復軌跡
25.3 用途
製品のピックアップおよび搬送
包装材料の折り曲げ
製品押出し
歩行機構の足先軌跡
切断刃の同期移動
容器反転
部品組立経路
26. 伝達角
26.1 定義
伝達角とは、一般に四節リンクにおけるカプラリンクと出力リンクの間の鋭角をいう。
入力から出力へ力がどの程度効率的に伝達されるかを判断する重要な指標である。
26.2 理想的な伝達角
伝達角が90度に近いほど、出力リンクへ有効に伝達される力成分が大きくなる。
伝達角が小さくなりすぎると、次の問題が発生する可能性がある。
出力トルクの低下
ジョイント反力の増加
摩擦の増加
振動
かじり
リンクおよび軸受寿命の低下
26.3 設計上の検討
全運転範囲における最小伝達角を確認する必要がある。
許容範囲は速度、荷重および用途によって異なるが、高荷重機構では伝達角が過度に小さくなる領域を避けることが重要である。
27. 死点と特異点
27.1 死点
死点とは、入力リンクとカプラリンク、またはカプラリンクと出力リンクが一直線となり、運動伝達能力が急激に変化する位置である。
死点では、次の現象が発生する可能性がある。
出力速度が0になる
運動方向が反転する
非常に大きな機械的利益が発生する
駆動方向が不確定になる
機械的にロックされる
27.2 特異点
特異点とは、機構の自由度、速度比または力伝達特性が通常状態と大きく異なる配置である。
パラレルリンクやロボット機構では、特異点において次の問題が発生する可能性がある。
特定方向の制御喪失
非常に大きなジョイント速度
剛性低下
予期しない運動
アクチュエータトルクの増加
27.3 設計上の対策
運転範囲から特異点を除外する
機械式ストッパを設ける
リンク長さを調整する
補助拘束または補助リンクを追加する
センサおよび制御インターロックを設ける
オーバーセンタ運動を意図的に使用する場合は、安全性を十分に検討する
28. 機械的利益
28.1 定義
機械的利益とは、入力力に対する出力力の比率である。
機械的利益 = 出力力 / 入力力
リンク機構の機械的利益は、リンク角度に応じて連続的に変化する場合がある。
28.2 速度比と力の関係
エネルギー損失を無視すると、入力動力と出力動力はほぼ等しい。
入力力 × 入力速度
≈ 出力力 × 出力速度
したがって、出力速度が低下する位置では、出力力が増加する場合がある。
28.3 主な用途
トグルクランプ
プレスリンク
レバー式クランプ
シザーリフト
金型ロック機構
29. リンク機構の運動合成
29.1 定義
運動合成とは、要求される出力運動を満足するように、リンク長さ、ジョイント位置および機構形式を決定する過程である。
29.2 関数生成
入力角度と出力角度の間に、所定の関係を形成する設計である。
例:
入力が90度回転したとき、出力を30度揺動させる
入力軸と出力軸の間に非線形関係を形成する
バルブ開度とレバー角度の関係を形成する
29.3 経路生成
カプラ点が指定された複数の位置を通過するようにリンクを設計する。
例:
ピックアンドプレース軌跡
折り曲げアーム軌跡
製品を回避する搬送経路
29.4 運動生成
出力リンクが指定された位置と姿勢を同時に満足するように設計する。
例:
ワークを水平姿勢のまま移動させる
グリッパを指定角度で製品へ接近させる
包装材料を移動させながら回転させる
29.5 精度点
要求された関数または軌跡を正確に満足しなければならない設計位置を精度点という。
精度点の間では、一定の構造誤差が発生する可能性がある。
30. リンク長さの選定
30.1 主な検討事項
必要な出力ストローク
揺動角度
速度比
設置空間
伝達角
死点
リンク間干渉
フレーム位置
ジョイント反力
製作可能性
30.2 リンク長さ比
絶対的なリンク長さよりも、リンク長さの比率が運動特性に大きく影響する。
機構全体を同一比率で拡大した場合、理論的な角度関係は維持されるが、次の項目は変化する。
リンク質量
慣性モーメント
曲げ変形
必要駆動トルク
固有振動数
設置空間
31. 動力学および荷重解析
31.1 静的荷重
低速で動作する機構、または停止状態で大きな力を伝達する機構では、静的荷重解析が重要である。
主な検討事項は次のとおりである。
リンクの軸力
曲げモーメント
ピンのせん断力
ブッシュの面圧
フレーム反力
駆動トルク
31.2 慣性荷重
高速機構では、リンクの質量と加速度によって慣性力が発生する。
F_inertia = ma
回転リンクの慣性トルクは次のように表される。
T_inertia = Iα
ここで、
I:質量慣性モーメント
α:角加速度
31.3 動的バランス
回転リンクおよび往復リンクの慣性力は、振動とフレーム荷重を発生させる。
主な対策は次のとおりである。
カウンタウェイト
対称リンク配置
二つの機構を逆位相で配置
リンクの軽量化
加速度の低減
フレーム剛性の向上
防振マウント
31.4 ジョイント反力
ジョイント反力は、リンク強度だけでなく、ピン、ブッシュおよび軸受の寿命を決定する。
最大作業荷重だけでなく、慣性荷重と衝撃荷重も含めて計算する必要がある。
32. リンクの構造設計
32.1 引張りと圧縮
直線形リンクは、主として引張荷重または圧縮荷重を受ける。
圧縮リンクについては、座屈を検討する必要がある。
32.2 曲げ
荷重の作用線とリンク中心線が一致しない場合、またはリンク中間部に荷重が作用する場合、曲げが発生する。
32.3 ねじり
空間機構や偏心荷重を受けるリンクには、ねじり荷重が作用する可能性がある。
32.4 疲労
繰返し運転を行うリンクには、平均応力と変動応力の両方を考慮した疲労設計が必要である。
応力集中が発生しやすい位置は次のとおりである。
ピン穴
断面変化部
溶接部
ねじ部
キー溝
鋭い角部
32.5 断面形状
平板形
丸棒
角形パイプ
丸形パイプ
I形またはチャンネル形
ボックス形
リブ補強形
重量を低減しながら剛性を確保するため、中空断面やリブ構造を使用できる。
33. ピンおよびブッシュの設計
33.1 ピンに作用する荷重
単純せん断
二重せん断
曲げ
面圧
繰返し荷重
衝撃荷重
33.2 ブッシュの役割
ブッシュは、ピンとリンクの間の摩擦および摩耗を低減し、交換可能な摩耗部品として機能する。
33.3 主なブッシュ形式
青銅ブッシュ
含油焼結ブッシュ
ポリマーブッシュ
複合材ブッシュ
ステンレスブッシュ
ニードルベアリング
球面ブッシュ
33.4 設計検討事項
許容面圧
すべり速度
PV値
潤滑
組立公差
軸合わせ
使用温度
洗浄および腐食
交換性
34. すきまとバックラッシ
34.1 すきまの影響
リンクジョイントのすきまは、次の問題を引き起こす可能性がある。
出力位置誤差
衝撃
騒音
振動
繰返し精度の低下
ピンおよびブッシュ摩耗の促進
荷重分布の不均一
34.2 すきま低減方法
高精度ピンとリーマ穴
交換式ブッシュ
予圧軸受
ダブルリンク
ばね予圧
テーパピン
調整式ブッシュ
球面軸受
34.3 熱膨張としまりばめ
すきまを小さくしすぎると、温度上昇、汚染および組立誤差によって機構がかじる可能性がある。
使用温度および材料の熱膨張係数を考慮し、適切な公差を設定する必要がある。
35. 摩擦と潤滑
35.1 主な摩擦箇所
ピンとブッシュ
スライダとガイド
スロットとピン
ロッドエンドベアリング
リンクとワッシャ
シール接触部
35.2 潤滑方式
グリース潤滑
オイル潤滑
自動給油
固体潤滑
無給油ブッシュ
密閉型軸受
35.3 潤滑設計
次の項目を検討する必要がある。
給油箇所へのアクセス性
給油周期
漏れ防止
汚染物の侵入防止
使用温度
荷重および速度
食品用潤滑剤の必要性
36. リンク機構の材料
36.1 炭素鋼
炭素鋼は、強度、価格および加工性のバランスが良いため、一般産業機械のリンクに広く使用される。
36.2 合金鋼
合金鋼は、高強度、耐疲労性および耐摩耗性が必要なピン、軸および高荷重リンクに使用される。
36.3 ステンレス鋼
ステンレス鋼は、腐食、洗浄水または食品接触の可能性がある環境で使用される。
36.4 アルミニウム合金
アルミニウム合金は、移動部質量を低減し、高速応答性を向上させるために使用される。
剛性および疲労強度を十分に検討する必要がある。
36.5 エンジニアリングプラスチック
エンジニアリングプラスチックは、低荷重リンク、ガイド、ブッシュおよび軽量機構に使用できる。
代表的な材料は次のとおりである。
POM
PA
PEEK
UHMW-PE
PTFE複合材
36.6 複合材料
炭素繊維複合材は、高い比剛性と低慣性が要求される高速リンクに使用できる。
ジョイントインサート部および締結部の局部強度を別途検討する必要がある。
37. リンク機構の駆動方式
37.1 モータ駆動
誘導電動機
ブレーキモータ
サーボモータ
ステッピングモータ
ギヤードモータ
モータの回転運動は、クランク、偏心軸またはカム軸を介してリンク機構へ伝達される。
37.2 空気圧シリンダ駆動
構造が単純で、高速の往復運動に適している。
リンク機構と組み合わせることで、次の機能を実現できる。
平行把持
トグルクランプ
回転開閉
両側同期運動
力の増幅
37.3 油圧シリンダ駆動
大きな力と滑らかな速度制御が必要なリンク機構に使用される。
37.4 手動駆動
ハンドレバー
ペダル
ハンドクランク
ハンドル
カムレバー
人間工学、操作力および挟まれ防止を考慮する必要がある。
37.5 ばねおよび重力駆動
復帰運動、荷重補償および接触力維持に使用される。
38. 機械式リンクとサーボ制御の比較
38.1 機械式リンク機構
長所
一つのアクチュエータで複数の運動を同期できる
繰返し精度が高い
制御構成が単純である
大きな荷重を伝達できる
高速繰返し運転に適している
短所
運動変更が難しい
製品変更時にリンク調整や再設計が必要になる場合がある
ジョイント摩耗とすきまが発生する
複雑な軌跡変更への柔軟性が低い
38.2 サーボ直接駆動
長所
運動プロファイルを容易に変更できる
製品別レシピを適用できる
位置、速度およびトルクを制御できる
機械部品数を削減できる可能性がある
診断およびデータ収集が容易である
短所
モータおよび制御システムのコストが増加する
電気およびソフトウェアの複雑性が増す
安全制御が必要である
高荷重用途では減速機や補助機構が必要になる場合がある
38.3 ハイブリッド方式
サーボモータとリンク機構を組み合わせることで、次の特長を得られる。
リンク機構の荷重伝達能力
サーボの可変運動
電子カム機能
製品変更への対応性
機械的同期性
例:
サーボモータ
→ クランク
→ 四節リンク
→ 折り曲げアーム
39. リンク機構の選定手順
39.1 作業機能の定義
回転
往復
揺動
平行移動
軌跡生成
クランプ
昇降
製品搬送
姿勢維持
39.2 出力運動の定義
移動距離
回転角度
ストローク
軌跡
速度
加速度
休止時間
サイクル頻度
繰返し精度
39.3 荷重条件の解析
静荷重
慣性荷重
衝撃荷重
偏心荷重
繰返し荷重
摩擦抵抗
非常時荷重
39.4 機構形式の比較
四節リンク
クランク・スライダ
ダブルスライダ
早戻り機構
トグル機構
パンタグラフ
はさみ式リンク
六節リンク
パラレルリンク
39.5 運動学の検討
自由度
リンク位置
速度
加速度
伝達角
死点
特異点
軌跡誤差
リンク間干渉
39.6 動力学の検討
駆動トルク
慣性力
ジョイント反力
振動
衝撃
動的バランス
フレーム荷重
39.7 構造および寿命の検討
リンク強度
座屈
疲労
ピンせん断
ブッシュ面圧
軸受寿命
フレーム変形
締結部の緩み
39.8 使用環境の検討
温度
水分
粉じん
腐食
洗浄
食品接触
真空
クリーンルーム
爆発危険環境
39.9 保守性の検討
潤滑アクセス
ピンおよびブッシュ交換
リンク調整
すきま測定
分解スペース
安全カバー
故障診断
39.10 最終検証
CADモーションシミュレーション
干渉確認
有限要素解析
試作試験
繰返し寿命試験
最大荷重試験
非常停止試験
洗浄性検証
40. 主な故障形態
40.1 リンクの破損
引張破断
圧縮座屈
曲げ破壊
疲労亀裂
溶接部亀裂
ピン穴変形
40.2 ピンおよびブッシュの損傷
ピン摩耗
ブッシュ摩耗
面圧による塑性変形
潤滑不足
腐食
ピンの脱落
焼付き
40.3 ジョイントすきまの増加
すきまが増加すると、位置決め精度と繰返し精度が低下し、衝撃および騒音が増加する。
40.4 リンクの変形
過負荷またはフレーム剛性不足によってリンクが永久変形すると、機構の軌跡および伝達角が変化する可能性がある。
40.5 締結部の緩み
繰返し振動によって、ボルト、ナット、止め輪およびセットスクリューが緩む場合がある。
40.6 軸受損傷
疲労剥離
潤滑不足
過大な軸ずれ
衝撃
汚染
腐食
過熱
40.7 共通の故障原因
過負荷
組立誤差
軸ずれ
潤滑不足
汚染
共振
過速度
フレーム剛性不足
不適切な材料選定
不十分な安全率
41. 保守および点検
41.1 定期点検項目
異常音
振動
リンク変形
ピンおよびブッシュのすきま
ボルトの緩み
潤滑状態
亀裂
腐食
出力ストロークの変化
繰返し位置誤差
安全カバーの状態
41.2 すきま測定
次の箇所を定期的に確認する必要がある。
回転ピン
ブッシュ
ロッドエンド
スライダ
スロット
軸受
調整リンク
41.3 予防保全対象部品
ピン
ブッシュ
軸受
ロッドエンド
止め輪
締結ボルト
潤滑剤
シール
ばね
41.4 状態基準保全
センサまたは測定器を用いて、次の項目を監視できる。
振動
騒音
駆動モータ電流
駆動トルク
位置誤差
サイクルタイム
軸受温度
すきまの増加
フレーム変形
42. 安全設計
42.1 挟まれ・せん断の危険
リンク機構では、リンク間、リンクとフレーム間、および回転軸周辺に挟まれ点やせん断点が形成される。
必要な保護対策は次のとおりである。
固定式ガード
インターロック付きドア
安全距離
ライトカーテン
両手操作装置
非常停止
速度制限
42.2 予期しない運動
死点通過、重力荷重または蓄積されたばねエネルギーによって、予期しない運動が発生する可能性がある。
42.3 落下防止
垂直昇降リンクには、次の装置を検討する必要がある。
機械式ストッパ
ブレーキ
ロックピン
チェックバルブ
セーフティナット
二重支持
落下防止ラッチ
42.4 保守時のロックアウト
保守作業中に機構が動かないよう、エネルギー遮断およびロックアウト手順を適用する必要がある。
43. 食品機械におけるリンク機構
食品機械で使用するリンク機構は、運動性能だけでなく、衛生性、洗浄性、耐食性および汚染防止を考慮して設計する必要がある。
43.1 主な衛生要求事項
食品残渣が蓄積しにくい単純形状
深い隙間および重なり部分の最小化
水平面の最小化
排水可能な表面
洗浄可能なジョイント
潤滑油漏れの防止
食品接触区域と駆動区域の分離
耐食材料の使用
工具なしで取り外せる構造
洗浄後に乾燥しやすい構造
43.2 リンクの配置
可能な限り、リンクおよびジョイントを直接食品区域の外側に配置し、作業部だけを衛生区域へ延長することが望ましい。
43.3 ピンおよびブッシュ
ステンレス製ピン
食品用無給油ブッシュ
密閉型軸受
食品用グリース
露出ねじ部の最小化
分解洗浄可能な構造
43.4 中空リンク
中空リンクを使用する場合は、洗浄水が侵入しないよう完全密閉するか、完全に開放して排水可能な構造にする必要がある。
不完全に密閉された中空構造は、汚染および内部腐食の原因となる。
43.5 主な用途
充填ノズルの昇降
切断刃の往復運動
包装材料の折り曲げ
シールジョーの開閉
平行グリッパ
製品押出し
容器反転
食肉成形プレス
製品分離ストッパ
検査装置
44. 適用事例
44.1 包装材料折り曲げ機構
サーボモータまたはカム軸
→ 入力クランク
→ 四節リンク
→ 折り曲げアーム
→ 包装材料の折り曲げ
主な検討事項:
折り曲げ軌跡
製品との干渉
包装材料の損傷
速度と加速度
リンクすきま
調整範囲
洗浄性
44.2 平行グリッパ
空気圧シリンダ
→ 中央リンクまたはくさび
→ 左右の平行リンク
→ グリッパフィンガ
主な検討事項:
開閉ストローク
把持力
左右同期性
平行度
製品損傷
ジョイントすきま
センサ配置
44.3 往復式切断装置
モータ
→ 減速機
→ クランク・スライダ
→ 切断刃
主な検討事項:
ストローク
切断力
サイクル速度
慣性力
側圧
振動
安全ガード
44.4 トグルクランプ装置
シリンダ
→ 駆動レバー
→ トグルリンク
→ クランプ
主な検討事項:
クランプ力
オーバーセンタ距離
リンク応力
ピン面圧
解除力
非常解除
繰返し寿命
44.5 シザーリフト装置
油圧または電動アクチュエータ
→ はさみ式リンク
→ 昇降プラットフォーム
主な検討事項:
最低位置でのアクチュエータ力
最大荷重
座屈
横方向安定性
落下防止
プラットフォームの水平度
ピン寿命
44.6 製品ピックアンドプレースリンク
サーボモータ
→ 六節リンク
→ グリッパ
→ 製品搬送
主な検討事項:
カプラ軌跡
休止区間
製品姿勢
速度およびジャーク
リンク間干渉
繰返し精度
動的バランス
45. リンク機構の解析・設計ツール
45.1 CADモーション解析
CADのモーション機能を使用して、次の項目を評価できる。
組立可能性
運動範囲
リンク間干渉
軌跡
速度
加速度
ジョイント反力
45.2 多体系動力学解析
複雑なリンク機構の慣性力、接触力および駆動トルクを解析する。
45.3 有限要素解析
リンク応力
ピン穴周辺の応力集中
フレーム変形
座屈
疲労
固有振動数
45.4 最適化
次の設計変数を対象として最適化を実施できる。
リンク長さ
ジョイント位置
カプラ点位置
伝達角
最大駆動トルク
軌跡誤差
重量
応力
46. 結論
リンク機構は、複数のリンクとジョイントを組み合わせ、単純な入力運動を必要な出力運動、力および軌跡へ変換する代表的な機械システムである。
四節リンクは最も基本的なリンク機構であり、回転運動、揺動運動およびカプラ軌跡を生成できる。クランク・スライダは、回転運動と直線往復運動を相互に変換する。トグルリンクは、死点付近で大きな出力力を発生させる。
平行リンクおよびパンタグラフは、物体の姿勢維持や運動の拡大・縮小に使用される。六節リンクおよび多節リンクは、より複雑な軌跡、非対称運動、休止区間およびピックアンドプレース運動を生成できる。
リンク機構の設計では、一般的なリンク形状を選択するだけでは不十分である。自由度、グラスホフ条件、伝達角、死点、特異点、速度、加速度、慣性力、ジョイント反力、すきま、摩擦、剛性および疲労寿命を総合的に検討する必要がある。
したがって、リンク機構は次の順序で設計・選定することが望ましい。
作業機能の定義
→ 出力運動および軌跡の定義
→ 機構形式の選定
→ 自由度および運動範囲の確認
→ リンク長さおよびジョイント位置の決定
→ 位置、速度および加速度の解析
→ 伝達角、死点および特異点の確認
→ 荷重、駆動トルクおよびジョイント反力の解析
→ リンク、ピン、ブッシュおよびフレームの強度確認
→ 安全性、保守性および衛生設計の確認
→ シミュレーションおよび試作試験
リンク機構を適切に設計することで、単純なアクチュエータから複雑な運動を安定して生成し、機械の生産性、精度、耐久性、安全性および保守性を向上させることができる。