
製品のライフサイクル全体にわたるコストを評価する設計基準
Life Cycle Costとは、製品または設備の企画、設計、調達、製造、設置、運転、保守、修理、改良、および最終的な廃棄に至るまで、ライフサイクル全
体で発生するすべてのコストを評価する方法である。
一般的にはライフサイクルコストと呼ばれ、LCCと略される。また、全寿命費用またはライフサイクル総費用と表現される場合もある。
機械設計において、製品の経済性を初期購入価格だけで判断することはできない。初期価格が低い設備であっても、エネルギー消費量が大きく、故障が
頻発し、洗浄や保守に多くの時間を必要とする場合、実際の使用期間全体では、より高いコストが発生する可能性がある。
一方、初期購入価格が高い設備であっても、次の条件を満たす場合、総費用を低減できる可能性がある。
エネルギー消費量が少ない。
生産性が高い。
故障頻度が低い。
保守が容易である。
消耗部品の寿命が長い。
洗浄時間が短い。
停止時間が少ない。
予備部品を安定して調達できる。
設備寿命が長い。
廃棄およびリサイクルが容易である。
したがって、Life Cycle Costの評価は、次の問いから始まる。
製品の購入と設置には、どの程度の費用が必要か。
運転中に、どの程度のエネルギー費と消耗品費が発生するか。
保守と修理は、どの程度の頻度で必要になるか。
故障や停止による生産損失は、どの程度になるか。
作業者の投入時間と洗浄時間は、どの程度必要か。
製品寿命の間に、主要部品を何回交換する必要があるか。
規制変更や部品の生産終了によって、追加費用が発生する可能性はあるか。
製品の廃棄またはリサイクルに費用が発生するか。
他の代替案と比較して、総費用は低いか。
初期費用と長期費用のバランスは適切か。
Life Cycle Costの主要な構成要素は、次のように整理できる。
Acquisition Cost — 取得費用
Installation and Commissioning Cost — 設置・試運転費用
Operating Cost — 運転費用
Energy and Utility Cost — エネルギー・ユーティリティ費用
Maintenance Cost — 保守費用
Downtime and Production Loss — 停止・生産損失費用
Replacement and Upgrade Cost — 交換・改良費用
Quality and Failure Cost — 品質・故障費用
End-of-Life Cost — 廃棄費用
Residual Value — 残存価値
Risk and Uncertainty — リスクと不確実性
Life Cycle Costの基本概念
Life Cycle Costの中心的な目的は、製品の購入価格だけを見るのではなく、製品を所有し、使用する全期間にわたる経済的負担を評価することである。
基本的な関係は、次のように表すことができる。
Life Cycle Cost = 初期取得費用 + 運転費用 + 保守費用 + 故障・停止費用 + 交換費用 + 廃棄費用 − 残存価値
ただし、実際の評価では、将来発生する費用を現在価値へ換算する必要がある。
現在価値を基準とした一般的なLCCの式は、次のように表すことができる。
LCC = C₀ + Σ[Cₜ ÷(1 + r)ᵗ]− RV ÷(1 + r)ⁿ
各項目の意味は次のとおりである。
C₀:初期投資費用
Cₜ:t年目に発生する費用
r:割引率
t:費用が発生する時点
RV:残存価値
n:評価期間
この計算は、現在発生する費用と将来発生する費用を、同一の経済的基準で比較するために使用される。
Life Cycle Costは、単なる会計上の計算ではない。構造、材料、部品選定、保守方法、および生産性を決定するための設計上の意思決定基準である。
Life Cycle Costと購入価格の違い
購入価格とは、製品を取得する時点で支払う費用である。一方、Life Cycle Costには、製品を使用し、保守し、最終的に廃棄するまでに発生するすべて
の費用が含まれる。
例えば、2台の設備に次のような違いがあるとする。
設備A
初期価格が低い。
エネルギー消費量が大きい。
消耗品の交換周期が短い。
洗浄時間が長い。
故障頻度が高い。
保守に専門技術者を必要とする。
設備B
初期価格が高い。
エネルギー消費量が少ない。
部品寿命が長い。
洗浄と分解が容易である。
故障頻度が低い。
停止時間が短い。
購入価格だけを見ると、設備Aの方が経済的に見える可能性がある。しかし、5年間または10年間に発生する費用を計算すると、設備Bの方が総費用を低
く抑えられる場合がある。
したがって、設備を比較する際には、次の項目を区別する必要がある。
初期購入価格
年間運転費用
年間保守費用
生産損失費用
予想耐用寿命
残存価値
ライフサイクル総費用
Life Cycle CostとTotal Cost of Ownership
Life Cycle CostとTotal Cost of Ownershipは、類似した意味で使用されるが、重点とする視点がやや異なる。
Life Cycle Cost
Life Cycle Costは、製品の企画から最終廃棄まで、ライフサイクル全体で発生する費用を評価する。
主な対象は次のとおりである。
設計
製造
調達
設置
運転
保守
改良
廃棄
リサイクル
Total Cost of Ownership
Total Cost of Ownershipは、購入者が製品を所有し、使用する期間中に負担する総費用に重点を置く。
主な対象は次のとおりである。
購入価格
設置費
運転費
保守費
教育費
停止損失
廃棄費
Life Cycle Costは製品の生涯全体を対象とする工学的な視点が強く、Total Cost of Ownershipは、使用者または所有者が負担する費用に重点を置く。
実際の設備評価では、両方の概念を組み合わせて使用できる。
Life Cycle Costの評価期間
LCCを評価する前に、製品の予想使用期間を定義しなければならない。
評価期間は、次の要素によって異なる。
製品の物理的寿命
技術的寿命
経済的寿命
契約期間
減価償却期間
法的に許容される使用期間
予備部品の供給期間
顧客の設備更新周期
物理的寿命
製品が機械的に機能を継続できる期間である。
技術的寿命
技術進歩や規格変更によって、製品の実用価値が低下するまでの期間である。
経済的寿命
修理費や保守費が増加し、継続使用よりも交換した方が経済的になるまでの期間である。
規制上の寿命
安全、環境、衛生、またはエネルギー規制の変更によって、既存製品を継続使用することが困難になるまでの期間である。
製品が物理的には作動していても、生産性が低く、保守費用が増加すれば、経済的寿命は物理的寿命より短くなる可能性がある。
Acquisition Cost — 取得費用
取得費用とは、製品または設備を確保する初期段階で発生する費用である。
主な項目は次のとおりである。
製品購入価格
設計費
エンジニアリング費
金型費
ジグ・治具費
輸送費
梱包費
関税
保険料
契約費用
金融費用
初期予備部品購入費
設計・開発費用
特注設備や専用設備では、設計・開発費用が初期投資の大きな割合を占める場合がある。
主な項目は次のとおりである。
要求事項分析
機械設計
電気設計
制御設計
ソフトウェア開発
試作機製作
試験
認証
技術文書作成
初期設計費を減らすために、十分に検証されていない構造を採用すると、その後の故障、改造、および修理費用が増加する可能性がある。
購入部品費用
購入部品には、次のものが含まれる。
モータ
減速機
サーボドライブ
インバータ
軸受
センサ
シリンダ
バルブ
PLC
HMI
安全機器
購入部品を選定する際には、単価だけでなく、予想寿命、供給期間、交換費用、および互換性も評価しなければならない。
Installation and Commissioning Cost — 設置・試運転費用
設備の購入後、通常運転を開始するまでには、追加費用が発生する。
主な設置費用は次のとおりである。
輸送および搬入
設備配置
基礎工事
電源接続
空圧接続
給水および排水
排気設備
安全フェンス
ネットワーク接続
ソフトウェア設定
試運転
作業者教育
初期検証
現地設置性
設備が大型で重く、分解が困難である場合、設置費用は増加する。
設計段階では、次の項目を検討しなければならない。
出入口や搬入経路を通過できるか。
クレーンまたはフォークリフトが必要か。
設備をモジュールに分割できるか。
現地で容易に再組立できるか。
レベル調整が容易か。
電源および配管接続が標準化されているか。
試運転と検証
複雑な設備では、設置後に安定運転へ移行するまで、多くの時間が必要になる場合がある。
試運転費用には、次のものが含まれる。
初期調整
センサ校正
サーボチューニング
プログラム修正
製品条件設定
品質検証
安全機能確認
作業者教育
設計の標準化や自動設定機能によって、試運転費用を削減できる
4. Operating Cost — 運転費用
運転費用とは、製品または設備を実際に使用している間、継続的に発生する費用である。
主な項目は次のとおりである。
作業者人件費
エネルギー費
原材料損失
潤滑剤
洗浄剤
冷却液
圧縮空気
消耗品
工程用水
包装資材
品質検査費
人件費
自動化設備であっても、作業者の投入時間は重要な費用である。
人件費に影響する要素は次のとおりである。
設備操作時間
製品の投入と排出
設定変更
洗浄
点検
不良処理
再作業
記録作業
交代時の引継ぎ
自動化水準が高い設備でも、設定と洗浄に多くの手作業を必要とする場合、人件費削減効果は限定的になる。
生産能力
生産能力が高い設備は、同じ時間内により多くの製品を生産できる。
主な評価要素は次のとおりである。
1時間当たりの生産量
サイクルタイム
準備時間
品種切替時間
洗浄時間
非稼働時間
歩留まり
再作業率
生産性が向上すると、製品1個当たりの固定費と人件費を低減できる。
Energy and Utility Cost — エネルギー・ユーティリティ費用
設備の運転時間が長い場合、エネルギー費用はLCCの大きな割合を占める可能性がある。
電力費
電力費に影響する要素は次のとおりである。
モータ定格出力
実際の負荷率
運転時間
待機電力
ヒータ
冷却装置
真空ポンプ
コンプレッサ
ドライブ効率
実際の消費電力を定格出力だけで判断してはならない。負荷パターン、運転時間、および待機状態を併せて考慮する必要がある。
圧縮空気費用
圧縮空気は、多くの製造現場において高価なユーティリティの一つである。
費用が増加する主な原因は次のとおりである。
空気漏れ
過度に高い供給圧力
過大なシリンダ
連続エアブロー
非効率な真空発生
不要な待機時消費
空圧システムでは、シリンダ径と供給圧力を最適化し、空気漏れを最小限にする必要がある。
水および洗浄ユーティリティ
食品機械では、次の費用が重要である。
洗浄水
温水
蒸気
洗剤
消毒剤
排水処理
乾燥エネルギー
優れた衛生設計によって、洗浄時間と水使用量の両方を削減できる。
Maintenance Cost — 保守費用
保守費用とは、製品の機能と安全性を維持するために発生する費用である。
主な保守活動は次のとおりである。
定期点検
潤滑
調整
清掃
消耗品交換
部品交換
予防保全
故障修理
ソフトウェア更新
安全点検
予防保全費用
予防保全とは、故障が発生する前に、計画に基づいて実施する保守活動である。
主な項目は次のとおりである。
定期点検時間
フィルタ交換
ベルト交換
潤滑油交換
シール交換
センサ点検
締結状態点検
安全装置点検
予防保全には直接費用が発生するが、突発的な故障と非計画停止を削減できる。
事後保全費用
事後保全とは、故障が発生した後に設備を復旧する活動である。
主な費用は次のとおりである。
技術者人件費
緊急出張費
交換部品費
輸送費
生産停止費
再試運転費
不良製品の処理費
保守アクセス性
保守アクセス性が低い構造では、簡単な部品交換でも、多くの時間と費用が必要になる。
保守費用を低減する設計要素には、次のものがある。
迅速に開放できるカバー
交換部品への容易なアクセス
十分な工具作業空間
モジュール構造
標準化された締結部品
再現性のある位置決め構造
診断機能
状態表示
単純な分解順序
Downtime and Production Loss — 停止・生産損失費用
設備停止による損失は、直接的な保守費用よりも大きくなる場合がある。
停止費用には、次の項目が含まれる。
生産できなかった製品の価値
待機中の作業者人件費
前後工程の停止
納期遅延
緊急外注生産
再稼働準備時間
仕掛品の廃棄
顧客クレーム
契約上の損失
停止損失は、次のように計算できる。
停止損失費用 = 1時間当たりの生産価値 × 停止時間 + 追加対応費用
計画停止
計画停止とは、保守、洗浄、または品種切替のために、あらかじめ予定された停止である。
定期点検
洗浄
消耗品交換
金型交換
品種切替
校正
非計画停止
非計画停止とは、故障や異常によって予告なく発生する停止である。
モータ故障
センサ異常
部品破損
ソフトウェア異常
安全システムの作動
電源異常
製品詰まり
非計画停止を削減することは、LCC低減において非常に重要である。
Reliability and Failure Cost — 信頼性と故障費用
信頼性とは、一定期間にわたり、製品が故障せずに要求機能を実行できる確率である。
信頼性評価には、次の指標が使用される。
MTBF
MTTR
故障率
稼働率
修理時間
予防保全周期
MTBF
MTBFは、Mean Time Between Failuresの略であり、平均故障間隔を意味する。
MTBFが長いほど、故障の発生頻度が低い。
MTTR
MTTRは、Mean Time to Repairの略であり、平均修復時間を意味する。
MTTRが短いほど、故障後に早く復旧できる。
稼働率
稼働率は、次のように表すことができる。
Availability = MTBF ÷(MTBF + MTTR)
高い稼働率を確保するには、故障頻度を下げるだけでなく、修理時間も短縮する必要がある。
Replacement and Upgrade Cost — 交換・改良費用
製品の使用期間中には、主要部品の交換や性能改良が必要になる場合がある。
主な交換対象は次のとおりである。
モータ
減速機
軸受
シール
ベルト
チェーン
刃物
センサ
バッテリ
コントローラ
表示装置
ケーブル
部品寿命
各部品の予想交換周期をLCCに反映しなければならない。
交換費用は、次のように表すことができる。
交換費用 = 部品価格 + 作業費 + 停止損失 + 再設定費
技術アップグレード
長期間使用する設備では、次のようなアップグレードが必要になる場合がある。
コントローラ交換
ソフトウェア更新
安全規格への追加対応
通信規格変更
省エネルギー改造
センサ追加
生産速度向上
トレーサビリティ機能追加
モジュール化された設計であれば、設備全体を交換せずに、一部の機能だけを改善できる。
Quality Cost — 品質費用
製品品質に関連する費用も、Life Cycle Costに含める必要がある。
品質費用は、次のように分類できる。
予防費用
不良の発生を防止するための費用である。
設計レビュー
作業者教育
予防保全
工程管理
供給者評価
標準化
評価費用
製品が要求品質を満たしているかを確認するための費用である。
検査
試験
測定
校正
品質監査
内部失敗費用
出荷前に発見された不良によって発生する費用である。
廃棄
再作業
再検査
生産遅延
原材料損失
外部失敗費用
製品出荷後に発生した問題による費用である。
保証修理
現地サービス
製品交換
リコール
顧客クレーム
信頼低下
契約損失
初期設計費用や品質管理費用を過度に削減すると、後に発生する外部失敗費用が大幅に増加する可能性がある。
Cleaning and Sanitation Cost — 洗浄・衛生管理費用
食品機械では、洗浄費用がLCCの重要な部分を占める。
主な洗浄費用は次のとおりである。
作業者の洗浄時間
分解時間
再組立時間
洗浄水
温水
洗剤
消毒剤
乾燥時間
洗浄後の検査
生産停止時間
洗浄時間
洗浄時間は、設備構造と直接関係している。
洗浄時間を増加させる要因は次のとおりである。
取外し部品が多い。
工具を必要とする。
狭いすきまや死角が多い。
排水性が悪い。
部品が重い。
再組立後に位置調整が必要である。
衛生設計と費用
衛生的な構造は初期製造費を増加させる可能性があるが、次の費用を削減できる。
洗浄時間
水使用量
洗剤使用量
汚染リスク
製品廃棄
再洗浄
微生物検査
生産停止
Labor Cost — 人件費
製品のライフサイクル全体では、運転、洗浄、保守、および管理に関する人件費が継続的に発生する。
主な人件費項目は次のとおりである。
作業者の運転時間
設定時間
品種切替時間
洗浄時間
点検時間
修理時間
教育時間
品質記録時間
安全点検時間
設計段階では、単純な自動化率ではなく、作業者が実際に投入する時間を評価しなければならない。
自動化設備であっても、次のような場合には人件費が高くなる可能性がある。
頻繁な手動調整が必要である。
製品詰まりが多い。
洗浄作業が複雑である。
不良検査を手作業で行う必要がある。
部品交換に多くの時間を必要とする。
End-of-Life Cost — 廃棄費用
製品寿命が終了すると、解体、撤去、輸送、廃棄、およびリサイクル費用が発生する。
主な項目は次のとおりである。
設備の分解
現場からの撤去
輸送
廃棄物処理
有害物質処理
汚染除去
データ消去
リサイクル分別
現場復旧
解体性
解体が困難な構造は、廃棄費用を増加させる。
解体性を高める方法には、次のものがある。
材料の種類を減らす。
分解可能な締結方法を使用する。
材料表示を行う。
有害物質の位置を明確にする。
モジュール単位で分離できるようにする。
永久接着や多層コーティングを最小化する。
廃棄物規制
製品に次の物質や部品が含まれる場合、別途処理費用が必要になる可能性がある。
オイル
冷媒
電子部品
バッテリ
化学物質
Residual Value — 残存価値
残存価値とは、製品の耐用寿命終了時点に残っている経済的価値である。
残存価値には、次のものが含まれる。
中古設備としての販売価値
部品の再使用価値
金属スクラップ価値
モジュールの再利用価値
再生品としての価値
設備移設価値
残存価値は、Life Cycle Costの総費用から差し引くことができる。
正味ライフサイクルコスト = 総費用 − 残存価値
再使用可能なモジュールや標準部品を採用することで、残存価値を高めることができる。
Discount Rate and Present Value — 割引率と現在価値
将来発生する費用は、現在の同額の費用と同じ経済的価値を持つわけではない。
そのため、長期評価では割引率を使用して、将来費用を現在価値に換算する。
現在価値
t年後に発生する費用の現在価値は、次のように計算できる。
Present Value = Future Cost ÷(1 + r)ᵗ
ここで、rは割引率である。
割引率の設定
割引率には、次の要素が反映される。
資本コスト
借入金利
期待投資収益率
インフレーション
事業リスク
企業内部基準
割引率が高いほど、遠い将来に発生する費用の現在価値は小さくなる。
実質費用と名目費用
費用にインフレーションを含める場合は、名目割引率を使用する。
インフレーションを除いた現在価格基準の費用を使用する場合は、実質割引率を使用する。
この二つの基準を混在させると、計算結果が歪む可能性がある。
Inflation and Price Escalation — インフレーションと価格上昇
すべての費用が同じ比率で上昇するとは限らない。
次の費用は、一般物価よりも速く上昇する可能性がある。
電力料金
人件費
特殊部品価格
技術サービス費
環境処理費
輸入部品価格
ソフトウェアライセンス費
必要に応じて、次の費用上昇率を個別に設定できる。
エネルギー価格上昇率
人件費上昇率
部品価格上昇率
廃棄費上昇率
長寿命設備では、複数の価格上昇シナリオを設定して評価することが望ましい。
Risk and Uncertainty — リスクと不確実性
Life Cycle Costには将来予測が含まれるため、不確実性が存在する。
主な不確実性は次のとおりである。
実際の運転時間
エネルギー価格
故障頻度
部品寿命
保守周期
人件費
生産量
不良率
規制変更
部品の生産終了
残存価値
感度分析
感度分析とは、特定の変数が変化したとき、LCCがどの程度変化するかを評価する方法である。
主な分析対象は次のとおりである。
エネルギー価格 ±20%
保守費用 ±20%
設備寿命の変化
故障率の変化
生産量の変化
割引率の変化
残存価値の変化
LCCに最も大きな影響を与える項目を特定し、設計や投資判断に反映できる。
シナリオ分析
次のようなシナリオを設定できる。
楽観シナリオ
基準シナリオ
悲観シナリオ
各シナリオの費用を計算することで、将来リスクをより現実的に把握できる。
Availability and Production Value — 稼働率と生産価値
設備の経済性は、単純な費用だけでなく、稼働可能時間と生産価値によって決まる。
稼働率
稼働率を低下させる主な原因は次のとおりである。
故障
長い洗浄時間
頻繁な品種切替
部品供給の遅れ
繰返し調整
作業者不足
品質不良
安全停止
生産価値
生産価値とは、単位時間当たりに設備が生み出す経済的価値である。
1時間当たりの生産価値 = 1時間当たりの生産量 × 製品1個当たりの限界利益
1時間の停止による損失が、部品価格や設備価格を上回る場合もある。
したがって、高生産性設備では、初期費用の削減よりも、停止時間の短縮の方が重要になる可能性がある。
Design Decisions and Life Cycle Cost — 設計判断とライフサイクルコスト
設計段階での意思決定によって、LCCの大部分が決まる。
主な設計判断は次のとおりである。
材料選定
部品点数
モジュール化レベル
標準部品の使用
保守アクセス性
エネルギー効率
潤滑方式
シール構造
洗浄構造
安全機能
診断機能
制御システム構成
高価な耐食材料は初期費用を増加させるが、次の費用を削減できる。
腐食修理
表面処理の補修
汚染
部品交換
洗浄作業
停止時間
部品の標準化
標準部品には、次の利点がある。
低い購入価格
短い納期
複数の代替供給者
容易な交換
低い在庫費
保守の単純化
モジュール化
モジュール設計によって、次の費用を削減できる。
修理時間
交換時間
在庫
改造費
技術アップグレード費
現地サービス費
診断機能
状態表示と故障診断機能は初期費用を増加させるが、故障箇所の特定時間と停止時間を短縮できる。
Life Cycle Cost in Food-Processing Machinery — 食品機械のライフサイクルコスト
食品機械では、一般産業機械と比較して、洗浄、衛生、腐食、および製品損失に関する費用が特に重要である。
洗浄費用
主な項目は次のとおりである。
洗浄作業人件費
分解および再組立時間
洗浄水
温水
洗剤
消毒剤
乾燥
生産停止
製品損失
食品機械では、次の損失が発生する可能性がある。
切断損失
機械内部に残留する製品
製品詰まり
不良切断
汚染による廃棄
洗浄時の製品廃棄
金属異物混入
歩留まりが1%向上するだけでも、長期間では大きな経済効果が生じる可能性がある。
衛生不良費用
衛生上の問題が発生すると、次の費用が発生する可能性がある。
生産停止
再洗浄
製品廃棄
微生物検査
リコール
顧客補償
規制対応
企業信用の低下
腐食と洗浄薬品
材料と洗浄薬品の適合性が低い場合、次の問題が発生する。
腐食
シールの劣化
プラスチックの亀裂
表面剥離
異物発生
頻繁な部品交換
材料選定と衛生設計は、初期費用ではなく、総LCCを基準として判断する必要がある。
Life Cycle Costの評価手順
評価目的を定義する
最初に、LCC評価の目的を明確にする。
2台の設備の比較
購入判断
材料代替案の比較
自動化投資の検討
省エネルギー効果の評価
保守戦略の決定
設備更新時期の決定
評価範囲を設定する
評価に含める費用と除外する費用を決定する。
設計費
購入費
設置費
運転費
エネルギー費
保守費
停止損失
教育費
廃棄費
残存価値
評価期間を決定する
次の中から適切な期間を設定する。
3年間
5年間
10年間
予想製品寿命
契約期間
減価償却期間
費用構造を作成する
費用を次のように分類する。
初期費用
年間反復費用
定期交換費用
非定期故障費用
最終廃棄費用
残存価値
データを収集する
データは、次の資料から収集できる。
供給者見積書
電力使用量
保守記録
故障履歴
作業時間測定
生産実績
部品価格
廃棄費用
類似設備の運転データ
現在価値を計算する
将来費用を割引率によって現在価値へ換算する。
代替案を比較する
各代替案を同じ条件で比較する。
同一の評価期間
同一の生産量
同一のエネルギー価格
同一の割引率
同一の品質水準
感度分析を行う
主要変数が変化した場合に、結果が大きく変わるかを確認する。
設計判断へ反映する
費用への影響が大きい項目を削減する方向で、設計を変更する。
エネルギー効率の改善
保守アクセス性の改善
部品寿命の延長
洗浄時間の短縮
故障診断機能の追加
標準部品の適用
モジュール化
Life Cycle Costの比較項目
2台以上の設備を比較する際には、次の構造を使用できる。
初期費用
購入価格
輸送費
設置費
教育費
試運転費
年間運転費用
電力費
圧縮空気費
水使用料
作業者人件費
消耗品費
洗浄費
年間保守費用
予防保全
部品交換
技術支援
故障修理
ソフトウェア
生産損失
停止時間
歩留まり損失
不良
再作業
品種切替時間
寿命終了時費用
撤去
輸送
廃棄
リサイクル
残存価値
主な失敗要因
Life Cycle Costが十分に検討されていない場合、次の問題が発生する可能性がある。
購入価格中心の意思決定
初期価格が低い設備を選定したものの、運転費と保守費が大幅に増加する。
エネルギー費用の過小評価
長時間運転する設備の電力費や圧縮空気費を十分に反映していない。
保守費用の未計上
部品価格だけを考慮し、作業時間や生産停止損失を含めていない。
停止損失の未計上
修理費用は計算しているが、生産停止による損失を考慮していない。
部品の生産終了
コントローラや購入部品が生産終了となり、高額な改造が必要になる。
耐用寿命の過大評価
実際の使用環境や洗浄条件を考慮しておらず、予想より早く劣化する。
残存価値の過大評価
中古販売価値やリサイクル価値を非現実的に高く設定する。
割引率の誤り
名目費用と実質割引率を混在させ、計算結果が歪む。
生産量変化の未反映
実際の生産量が予想より少ない、または多いため、製品1個当たりの費用が変化する。
衛生関連費用の未計上
洗浄時間、製品廃棄、再洗浄、および汚染リスクを含めていない。
Life Cycle Cost検討チェックリスト
Scope — 評価範囲
評価目的は明確か。
評価期間が定義されているか。
含める費用と除外する費用が明確か。
すべての代替案が同じ条件で評価されているか。
Acquisition — 取得
購入価格が含まれているか。
設計・開発費が含まれているか。
輸送、設置、および試運転費が含まれているか。
初期予備部品と教育費が含まれているか。
Operation — 運転
実際の運転時間が反映されているか。
作業者人件費が含まれているか。
生産能力とサイクルタイムが反映されているか。
設定時間と品種切替時間が含まれているか。
Energy and Utilities — エネルギーとユーティリティ
電力費が実際の負荷率に基づいて計算されているか。
圧縮空気使用量が反映されているか。
水、温水、蒸気、および冷却費用が含まれているか。
エネルギー価格上昇が考慮されているか。
Maintenance — 保守
予防保全費用が含まれているか。
事後保全費用が含まれているか。
部品交換周期が定義されているか。
技術者人件費と出張費が含まれているか。
保守アクセス性が考慮されているか。
Downtime — 停止
計画停止時間が反映されているか。
非計画停止時間が反映されているか。
1時間当たりの生産損失が計算されているか。
再稼働費用と製品廃棄費用が含まれているか。
Reliability — 信頼性
MTBFが合理的に設定されているか。
MTTRが反映されているか。
稼働率が計算されているか。
主要な故障モードが検討されているか。
Quality — 品質
不良費と再作業費が含まれているか。
内部失敗費用と外部失敗費用が区別されているか。
品質検査費と校正費が含まれているか。
製品歩留まりが反映されているか。
Cleaning and Hygiene — 洗浄と衛生
洗浄時間が測定されているか。
洗浄水と洗剤の費用が含まれているか。
分解と再組立時間が反映されているか。
衛生不良および製品廃棄リスクが考慮されているか。
End of Life — 寿命終了
撤去費と輸送費が含まれているか。
廃棄費と有害物質処理費が含まれているか。
残存価値が現実的に設定されているか。
リサイクル性が考慮されているか。
Financial Assumptions — 財務条件
割引率が定義されているか。
インフレーションの基準が一貫しているか。
費用上昇率が反映されているか。
現在価値計算が適用されているか。
Risk — リスク
感度分析を実施したか。
楽観、基準、悲観シナリオを比較したか。
部品の生産終了とサプライチェーンリスクが考慮されているか。
製品寿命と生産量の変化が検討されているか。
結論
Life Cycle Costは、製品の購入価格だけを比較する方法ではない。製品の設計、製造、設置、運転、エネルギー、保守、故障、停止、品質、洗浄、交
換、廃棄、および残存価値を、ライフサイクル全体にわたって総合的に評価する経済性分析手法である。
Life Cycle Costが低い製品は、次の条件を満たさなければならない。
初期投資が目的に対して合理的である。
エネルギーおよびユーティリティ消費量が少ない。
必要な作業者投入時間が少ない。
故障頻度が低く、復旧が速い。
消耗品と主要部品の寿命が長い。
保守と部品交換が容易である。
生産停止と品質損失が少ない。
洗浄と品種切替が速い。
予備部品供給と技術支援が安定している。
十分に長い製品寿命を持つ。
廃棄とリサイクルが容易である。
使用期間を通じて安定した生産価値を提供する。
機械設計において、コストは製品完成後に計算されるだけの結果ではない。形状、材料、部品、エネルギー使用、保守性、洗浄性、およびモジュール化
を決定する時点から、Life Cycle Costは形成される。
初期費用を過度に削減すると、運転費、保守費、停止損失、および品質費用が増加する可能性がある。一方、機能要求を超える過剰な仕様は、回収でき
ない不要な投資になる可能性がある。
したがって、優れた設計とは、最も安く製造された設計ではなく、必要な機能と品質を維持しながら、使用期間全体の総費用を最も合理的に管理できる
設計である。