
機能を実現する形状設計
Functional Geometryとは、部品または装置が果たすべき機能を基準として、形状、寸法、位置関係、および結合条件を定義する設計分野である。日本語
では、機能形状、機能的形状設計、または機能基準形状設計と表現できる。
機械設計において、形状は単なる外観ではない。軸径はトルクと曲げ荷重に耐えなければならず、ガイドの長さと間隔は運動精度およびモーメント荷重
に対する抵抗性を左右する。シール溝の深さと幅はシール性能に影響し、カバーと可動機構との距離は、干渉防止および作業者の安全に直接関係する。
したがって、Functional Geometryは次のような問いから始まる。
この形状はどのような機能を果たすのか。
どの面と寸法が、その機能に直接影響するのか。
周辺部品とどのように接続されるのか。
部品間にはどの程度のすきまが必要か。
製造ばらつきが生じても機能は維持されるか。
組立、分解、洗浄、および保守が可能か。
熱膨張、変形、振動、摩耗が生じた後も正常に作動するか。
Functional Geometryの中核要素は、次の4つに整理できる。
Function — 機能
Interfaces — インターフェース
Fits & Clearance — はめあいとすきま
Tolerance — 公差
形状と機能の関係
機械部品の形状には、通常、特定の機能上の理由がある。同じ円筒形状であっても、その使用目的によって必要な設計条件は異なる。
例えば、円筒形状は次のような用途に使用される。
回転動力を伝達する軸
軸受を支持する軸受部
直線運動を案内するガイドロッド
部品を位置決めするピン
流体を搬送する配管
シールと接触する密封面
外観が似ていても、必要とされる直径公差、表面粗さ、円筒度、同心度、材料、熱処理、および表面処理条件は異なる。
したがって、設計者は形状の名称や詳細を決定する前に、その形状が果たす機能を定義しなければならない。
機能形状
機能形状とは、製品性能、位置決め、運動、荷重伝達、密封、または安全性に直接影響する幾何学的要素である。
代表的な機能形状には、次のものがある。
軸受取付部
軸とハブの結合部
歯車かみあい部
ガイド接触面
シール溝
基準面および基準軸
位置決めピンおよびピン穴
刃物取付面
センサ検出面
締結面
流体通路
安全ガードの接近制限部
機能形状には、設計意図および公差要求を明確に設定しなければならない。
補助形状
補助形状は主要機能を直接果たすものではないが、製造性、安全性、洗浄性、軽量化、または外観を向上させるために用いられる。
例として、次のものがある。
外部角部の丸み
非接触領域の軽量化穴
カバー外形
切削工具の接近を可能にする逃げ形状
洗浄水を排出するための傾斜面
ハンドルおよびグリップ形状
外観を整える曲面
補助形状であっても、周辺部品と干渉したり構造剛性を低下させたりすれば、主要機能に影響する可能性がある。したがって、すべての形状は製品全体の
機能関係の中で検討しなければならない。
Function — 機能
形状設計は、「どのような形を作るか」ではなく、「その構造が何をしなければならないか」から始めるべきである。
機能が明確でなければ、設計者は既存製品の形状をそのまま繰り返したり、経験だけに依存して構造を決定したりする傾向がある。この場合、形状その
ものは存在していても、その形状を選定した工学的根拠は不明確になる。
機能は、可能な限り動作を中心とした表現で定義することが望ましい。
例えば、次のように表現する。
回転動力を伝達する。
部品間の相対位置を維持する。
製品を所定の経路に沿って案内する。
軸方向移動を制限する。
流体の漏れを防止する。
切断荷重を支持する。
作業者が危険領域に接近することを防止する。
洗浄水が駆動機構へ侵入することを防止する。
交換部品が常に同じ位置に取り付けられるようにする。
軸、ピン、溝、ブラケット、ガイド、カバーなどの具体的な形状は、これらの機能を定義した後に決定すべきである。
荷重伝達機能
形状は、外力、トルク、曲げモーメント、軸方向荷重、せん断力、および衝撃荷重を伝達する。
荷重伝達形状を設計する際には、次の項目を検討しなければならない。
荷重の大きさと方向
静的荷重と繰返し荷重
衝撃と振動
構造内における荷重経路
応力集中が発生する部分
締結部間の荷重分担
構造変形が機能に与える影響
疲労破壊の可能性
異常運転時の最大荷重
例えば、モータのトルクを刃物軸へ伝達するハブは、トルクを伝えると同時に軸の中心位置を維持しなければならない。キー、スプライン、テーパ、ク
ランピングハブ、または摩擦締結のいずれを使用するかによって、必要な形状と公差は異なる。
軸径も強度だけで決定してはならない。ねじり変形、曲げたわみ、軸受寿命、危険速度、および製造性も併せて考慮する必要がある。
運動案内機能
運動案内形状は、部品が意図した経路に沿って移動するよう、自由度を制限する。
代表的な運動案内構造には、次のものがある。
軸とブッシュ
リニアガイド
レールとローラ
スライド溝
カムとフォロワ
ヒンジと回転軸
ボールねじとナット
ラックとピニオン
チェーンとスプロケット
ベルトとプーリ
単に運動が可能であることを確認するだけでは不十分である。
次の条件も併せて評価する必要がある。
移動距離と回転範囲
真直度と平行度
回転中心の整列
振れとガタ
摩擦と潤滑
偏荷重による引っ掛かり
異物の侵入
熱膨張
繰返し精度
長期間使用後の摩耗
停止位置での安定性
食品機械では、水分、肉片、脂肪、粉じん、または洗浄薬品がガイド構造へ侵入する可能性がある。したがって、運動案内形状は、防水、排水、洗浄
性、および汚染防止形状と一体で設計しなければならない。
位置決め機能
部品を繰り返し所定位置へ戻す必要がある場合、締結と位置決めを区別しなければならない。
ボルトは一般的に部品を固定するが、通常のボルト穴だけでは高精度な繰返し位置決めを保証できない。正確な位置決めが必要な場合、次のような形状
を使用できる。
ダウエルピン
精密位置決めピン
パイロットボス
パイロット穴
テーパ位置決め面
基準面と側面ストッパ
Vブロック
キーとキー溝
円すい位置決め構造
球面座
位置決め構造を設計する際には、過拘束を避ける必要がある。一つの部品を過剰な数の基準面やピンで同時に拘束すると、製造誤差によって組立が困難
になったり、内部応力が発生したりする可能性がある。
一般的には、3-2-1位置決め原理が用いられる。
第1基準面で3自由度を拘束する。
第2基準面で2自由度を拘束する。
第3基準面で残りの1自由度を拘束する。
この原理は、精密組立、検査治具、ジグ、および固定具設計に広く用いられている。
シール機能
シール形状は、液体、空気、ガス、粉じん、潤滑油、洗浄水、および汚染物質の移動を制限する。
代表的なシール方式には、次のものがある
Oリング
オイルシール
ガスケット
リップシール
メカニカルシール
ラビリンスシール
面接触シール
溶接による密封
シーラントを使用する構造
シール性能は、シール自体の材料や形状だけでなく、シールが取り付けられる周辺形状にも大きく左右される。
主な検討項目は次のとおりである。
シール溝の幅と深さ
シール圧縮率
接触面の表面粗さ
角部の面取りと丸み
圧力の方向と大きさ
挿入時にシールが損傷する可能性
温度や薬品による膨張
圧力変化によるシール脱落の可能性
交換時のアクセス性
液体や汚染物質が滞留する可能性
食品接触領域では、シール性能だけでなく、すきま汚染、洗浄性、排水性、および材料適合性も併せて検討しなければならない。
保護・遮断機能
カバー、ガード、仕切り、およびシールドは、危険要因から作業者と装置を保護する。
保護形状では、次の項目を検討しなければならない。
危険部とガードとの距離
指、手、または腕が接近できる可能性
回転部品とカバーとの干渉
破損部品が飛散する方向
洗浄水や粉じんが侵入する経路
放熱および換気空間
点検および保守時のアクセス性
インターロックスイッチの作動位置
ガード開放時の安全状態
繰返し開閉後の位置精度
ガードは、単に危険部を覆うカバーではない。通常運転中には接近を制限し、点検時には安全に開放でき、再び閉じた際には正確な位置へ戻らなければ
ならない。
Interfaces — インターフェース
インターフェースとは、2つ以上の部品、モジュール、またはシステムが接続され、相互に影響を及ぼす境界領域である。
機械設計上の問題は、個々の部品内部よりもインターフェース部で発生することが多い。各部品が図面上は正常であっても、結合関係が明確でなければ、
組立不良、干渉、漏れ、位置ずれ、振動、および保守上の問題が発生する。
機械システムのインターフェースは、次のように分類できる。
機械的インターフェース
運動インターフェース
荷重伝達インターフェース
流体インターフェース
電気およびセンサインターフェース
作業者インターフェース
保守インターフェース
機械的インターフェース
機械的インターフェースとは、接続される部品間の直接的な物理関係である。
代表的な例には、次のものがある。
ボルト締結面
軸とハブ
軸受とハウジング
ピンと穴
ブラケットとフレーム
カバーと機械本体
フランジ接続部
キーとキー溝
溶接継手
各インターフェースには、最低限、次の情報を定義しなければならない。
基準位置
組立方向
締結方法
位置決め方法
荷重伝達方向
許容変位
組立順序
分解方法
必要な工具
検査基準
例えば、減速機とフレームとのインターフェースでは、ボルトサイズだけを決めても不十分である。出力軸の中心高さ、取付面の平面度、締結穴位置、
軸心調整方法、トルク反力の伝達経路、および保守空間も併せて定義する必要がある。
固定インターフェース
固定インターフェースとは、組立後に相対運動が発生してはならない接続構造である。
代表的な方式には、次のものがある。
ボルト締結
溶接
しまりばめ
接着
リベット締結
クランプ
焼ばめ
固定インターフェースでは、次の項目を検討する。
すべりの防止
緩みの防止
相対位置の維持
荷重伝達能力
接触面の安定性
腐食および異種金属接触腐食
分解の必要性
繰返し組立の可否
運動インターフェース
運動インターフェースとは、接続された部品間に意図的な相対運動が存在する構造である。
代表的な例には、次のものがある。
軸とブッシュ
ヒンジ
リニアガイド
カムとローラ
ピストンとシリンダ
かみ合う歯車
ボールねじとナット
チェーンとスプロケット
運動インターフェースでは、次の項目を検討しなければならない。
運動範囲
すきまとバックラッシ
摩擦と潤滑
摩耗
軸およびガイドの整列
異物の侵入
運転中に発生する熱
騒音と振動
繰返し精度
保守周期
運動インターフェースは、初期状態だけでなく、摩耗が進行した後の状態についても評価しなければならない。
基準面と基準軸
複数部品の組立精度を確保するには、一貫した基準体系が必要である。
主な基準要素には、次のものがある。
基準面
基準軸
基準穴
中心線
対称面
取付面
回転中心
組立原点
設計段階で基準が明確に定義されていなければ、各部品が異なる基準から加工され、最終組立時の累積誤差が増大する。
モータ、カップリング、減速機、軸受ハウジング、および駆動軸で構成される構造では、回転中心を共通基準として使用すべきである。各取付面だけを個
別に管理すると、軸心ずれにより振動、軸受の過熱、カップリングの損傷、および寿命低下が発生する可能性がある。
モジュール間インターフェース
装置をモジュール化するには、外形を分割するだけでは不十分である。モジュール間インターフェースを標準化しなければならない。
次の項目を定義する必要がある。
取付位置と方向
締結穴パターン
基準面と基準軸
伝達荷重
許容位置誤差
電源および信号接続
空圧および油圧ポート
安全インターロック
保守空間
取付および取外し順序
ポカヨケ形状
例えば、交換可能な切断モジュールには、次の条件が必要である。
共通のフレーム取付基準
繰返し取付位置精度
駆動軸またはカップリングの接続方式
センサおよびケーブルコネクタの規定位置
安全インターロック接続
洗浄後の再組立基準
工具のアクセス空間
誤った方向への取付を防止する形状
Fits & Clearance — はめあいとすきま
はめあいとは、組み合わされる軸と穴の寸法関係を定義するものである。この関係によって、組立容易性、位置精度、運動自由度、および荷重伝達性能
が決まる。
すきまばめ
すきまばめでは、軸と穴との間に常にすきまが存在する。
主な目的は次のとおりである。
自由な回転
すべり運動
容易な組立と分解
熱膨張の吸収
潤滑空間の確保
組立誤差の吸収
代表的な適用例には、次のものがある。
回転軸とブッシュ
ガイドピンと移動プレート
取外し可能なカバーピン
スライド部品
低精度ヒンジ
すきまが過大であると、ガタ、衝撃、騒音、および位置誤差が増加する可能性がある。
中間ばめ
中間ばめでは、実際の加工寸法に応じて、わずかなすきままたはわずかなしめしろが生じる。
主な目的は次のとおりである。
比較的高精度な位置決め
制限された分解可能性
繰返し組立時の位置維持
軽い圧入または打込み組立
代表的な適用例には、次のものがある。
ハブの位置決め部
精密フランジ
軸受ハウジングの結合部
交換可能な位置合わせ部品
しまりばめ
しまりばめでは、軸を穴より大きく設計し、圧入後に接触圧力と保持力を発生させる。
主な目的は次のとおりである。
相対すべりの防止
トルク伝達
永久的または半永久的な結合
回転部品の保持
代表的な適用例には、次のものがある。
歯車と軸
圧入ブッシュ
固定ピン
ホイールハブ
軸受輪
永久取付スリーブ
しまりばめでは、必要な圧入力だけでなく、組立時の変形、残留応力、材料強度、ハブの肉厚、および分解要件も検討しなければならない。
すきまの機能
すきまは単なる空間ではない。運動、組立、熱膨張、変形補償、および汚染物除去を可能にする機能要素である。
主なすきまの種類は次のとおりである。
運動すきま
相対運動中の接触や引っ掛かりを防止する。
組立すきま
部品を挿入し、締結できるようにする。
熱膨張すきま
温度上昇による寸法増加を吸収する。
変形補償すきま
荷重によって部品がたわんだり曲がったりした際の干渉を防止する。
安全すきま
可動機構とガード、フレーム、または作業者接近領域との間に安全距離を確保する。
洗浄すきま
洗浄液が対象部へ到達し、汚染物質を除去できるようにする。
最小すきまと最大すきま
すきまは公称寸法だけで決定してはならない。最小すきまと最大すきまの両方を評価する必要がある。
最小すきまに影響する要因には、次のものがある。
部品の寸法公差
組立位置誤差
真直度と平行度
回転部品の振れ
荷重によるたわみ
熱膨張
溶接変形
コーティングおよび表面処理厚さ
異物の侵入
最大すきまによって影響を受ける機能には、次のものがある。
位置決め精度
振動と衝撃
騒音
バックラッシ
漏れ
摩耗速度
繰返し精度
製品品質
すきまが小さすぎると、引っ掛かりや摩擦が発生する。大きすぎると、ガタや位置誤差が増加する。したがって、すきまは単に干渉を回避する値ではな
く、安定した機能が維持される範囲として設定しなければならない。
公差累積とすきま
複数の部品が接続される構造では、それぞれの寸法ばらつきが累積する。
例えば、移動ブロックと左右フレーム間のすきまは、次の要素によって影響を受ける。
フレーム内幅
左側ガイドの位置
右側ガイドの位置
移動ブロックの幅
ガイドの平行度
組立偏心
フレームの溶接変形
各寸法が個別には許容公差内であっても、最悪条件ではすきまが消失したり、過大になったりする可能性がある。
したがって、次の条件を検討しなければならない。
最小すきま条件
最大すきま条件
最大実体条件
最小実体条件
最悪条件による公差累積
統計的公差累積
いかなる条件でも引っ掛かりが許容されない場合には、最悪条件においても最小すきまを保証しなければならない。
Tolerance — 公差
公差とは、製造された部品に許容される寸法、形状、姿勢、および位置の変動範囲である。
すべての部品を公称寸法と完全に同一に製作することは不可能である。また、過度に厳しい公差は、加工費、検査費、および不良率を大幅に増加させ
る。
公差設計の目的は、精度を最大化することではない。
公差設計の目的は、製造可能な範囲内で必要な機能を確実に保証することである。
したがって、良い公差とは最小の公差ではなく、機能に必要な範囲だけを制限した公差である。
寸法公差
寸法公差は、長さ、直径、厚さ、幅、中心距離などの許容変動を定義する。
代表的な管理寸法には、次のものがある。
軸径
穴径
板厚
取付高さ
溝幅と溝深さ
中心距離
モジュール取付位置
カバーとフレームとの距離
寸法公差を設定する際には、次の項目を考慮しなければならない。
組合せ相手部品
はめあい等級
製造方法
測定可能性
熱処理後の変形
表面処理厚さ
機能上許容される変位
部品の互換性
供給者の加工能力
幾何公差
寸法が許容範囲内であっても、形状や位置が不適切であれば、機能上の問題が発生する。これらを管理するために幾何公差を用いる。
形状公差
真直度
平面度
真円度
円筒度
姿勢公差
平行度
直角度
傾斜度
位置公差
位置度
同心度
対称度
振れ公差
円周振れ
全振れ
幾何公差は、回転部品、軸受取付部、精密ガイド、シール接触面、および繰返し組立構造において特に重要である。
機能による公差分類
すべての寸法に同一レベルの公差を適用してはならない。
重要機能寸法
製品性能および安全性に直接影響する寸法である。
例として、次のものがある。
刃物と送り機構との位置関係
軸受取付径
歯車中心距離
シール溝深さ
センサ検出距離
ガイド平行度
安全ガードの接近制限距離
重要機能寸法には、明確な個別公差を設定する必要がある。
組立寸法
組立可能性および部品位置に影響する寸法である。
代表的な例には、次のものがある。
ボルト穴間隔
ブラケット取付高さ
カバーとフレームとのすきま
モジュール取付面の位置
ケーブルおよび配管の通過空間
一般寸法
性能に直接影響しない外形寸法または補助寸法である。
代表的な例には、次のものがある。
非接触外形
単純なカバー幅
外観上の端部位置
機能に影響しない長さや間隔
これらの寸法には一般公差を適用し、不要な製造費の増加を防ぐことができる。
公差と製造工程
指定された公差は、実際の製造工程で達成可能でなければならない。
各工程には、経済的に達成可能な精度水準が存在する。
レーザ切断
板金曲げ
旋削
フライス加工
研削
放電加工
鋳造
射出成形
溶接構造製作
積層造形
例えば、溶接フレームに高い平面度と位置精度を直接要求すると、溶接後の修正または追加加工が必要になる。
代替案として、次の方法を検討できる。
溶接後に取付面を加工する。
別体の精密加工プレートを使用する。
調整可能な取付構造を採用する。
基準ブロックを追加する。
長穴を使用する。
シムで位置合わせを行う。
組立後に現合加工を行う。
公差は図面上の数値だけで完結するものではなく、製造方法および検査方法と結び付けなければならない。
公差とコスト
公差が厳しくなるほど、一般的に次のコストが増加する。
精密加工費
工具および設備費
検査費
不良率
再加工費
組立時間
供給者の制限
品質管理費
したがって、すべての寸法を高精度に管理することは、良い設計とはいえない。機能に直接影響する寸法だけを選び、厳密に管理する必要がある。
公差を決定する際には、次の質問を行う必要がある。
この公差は機能上、本当に必要か。
より広い公差でも機能を維持できるか。
精密加工よりも調整機構の方が経済的ではないか。
加工後にその寸法を測定できるか。
組立状態で検査できるか。
供給者が繰り返し達成できるか。
検査費が部品価格に比べて過大ではないか。
表面および接触条件
Functional Geometryは、寸法と形状だけでなく、表面の機能的状態も含む。
同一の寸法と形状を持つ部品であっても、表面状態によって摩擦、摩耗、シール性、疲労強度、および洗浄性が異なる場合がある。
主な表面条件には、次のものがある。
表面粗さ
接触面積
潤滑状態
表面硬度
コーティング厚さ
耐食性
摩擦係数
耐摩耗性
洗浄性
食品残留物が蓄積する可能性
軸受取付部、シール接触面、摺動面、および精密基準面には、それぞれ異なる表面粗さと表面処理が必要である。
表面粗さを過度に小さくすることが、常に有利とは限らない。潤滑油を保持する必要がある摺動面では適切な表面性状が必要であり、食品接触面では汚
染物が残留しない滑らかで排水可能な形状が重要である。
機能形状と製造性
機能的に優れた形状であっても、製造が困難であったり、安定して再現できなかったりすれば、実際の製品に適用することは難しい。
Functional Geometryは、次の製造条件と併せて検討しなければならない。
工具アクセス性
加工基準の設定
1回の段取りで加工できる範囲
深い溝と狭い空間
最小肉厚
標準ドリルおよびエンドミル寸法
実現可能な曲げ半径
溶接トーチのアクセス性
表面処理後の寸法変化
検査装置のアクセス性
不要に複雑な形状は、加工時間とコストを増加させ、検査も困難にする。
可能な場合には、次の原則を適用することが望ましい。
標準工具で加工可能な寸法を使用する。
深く狭い溝を最小限にする。
明確な基準面を設ける。
加工方向の数を減らす。
同じ工具と段取りを繰り返し使用する。
内部角部に適切な加工半径を設ける。
溶接による変形を考慮する。
表面処理厚さを最終寸法に反映する。
機能形状と組立性
組立可能な形状とは、単に部品同士が結合できるだけでなく、定められた順序と適切な工具によって安定して組み立てられる形状でなければならない。
組立性の検討項目には、次のものがある。
組立方向
部品挿入空間
作業者の手および工具のアクセス空間
締結部の視認性
部品を一時的に支持する方法
誤組立の可能性
左右方向を取り違える可能性
繰返し組立後の位置精度
締付トルクを適用できるか
組立完了を確認する方法
誤組立を防止するため、次のような形状を使用できる。
非対称穴パターン
方向決めキー
異なる直径のピン
一方向挿入構造
形状コード
機械的インターロック
誤った位置では締結できない構造
精密組立では、作業者の調整技能だけに依存してはならない。形状自体が部品を正しい位置へ案内するように設計すべきである。
機能形状と保守性
機械は使用中に、洗浄、点検、潤滑、調整、および部品交換を必要とする。したがって、保守性も形状設計に含めなければならない。
主な保守性検討項目には、次のものがある。
消耗部品を交換する際のアクセス性
工具使用空間
カバーの開放範囲
部品取外し方向
分解順序
重量部品の吊上げ位置
再組立後の位置復元
調整基準と目盛
部品脱落の防止
締結部品紛失の防止
頻繁に交換する部品は、機械全体を分解せずにアクセスできなければならない。また、交換後に複雑な再調整を必要としないよう、基準面および位置決
め構造を設けることも重要である。
食品機械におけるFunctional Geometry
食品機械では、機械的機能だけでなく、衛生、洗浄、排水、および汚染防止も併せて考慮しなければならない。
特に重要な形状には、次のものがある。
食品残留を防止する傾斜面
洗浄水が自然に排出される構造
分解せずに洗浄できる開放形状
密封されていない中空部の排除
ねじ部およびすきまへの食品接触防止
重ね板と狭いすきまの最小化
洗浄可能な軸受およびシール配置
食品接触面の連続溶接
鋭い内部角部の排除
耐食性に優れた材料と表面
すきまが狭すぎると、肉片、脂肪、および洗浄水が滞留する可能性がある。一方、すきまが大きすぎると、製品の挟まり、指の接近、またはガード機能
の低下が発生する可能性がある。
したがって、食品機械のすきまは、機械的公差だけでなく、次の条件も満たさなければならない。
洗浄性
排水性
目視検査性
汚染物除去性
作業者の安全
製品損傷の防止
機械的機能と衛生要求が相反する場合には、洗浄のための分解構造、交換可能なシール、開放型ガイド、または衛生カバーを適用できる
Functional Geometryの設計手順
機能を定義する
最初に、部品または構造が果たすべき機能を、動作を中心とした表現で記述する。
例として、次のものがある。
回転動力を伝達する。
製品を切断位置へ案内する。
ガードを所定位置に保持する。
洗浄水が内部へ侵入することを防止する。
交換可能なモジュールの位置を繰り返し復元する。
機能形状を特定する
機能に直接関与する面、穴、軸、溝、および基準要素を特定する。
取付面
軸受取付部
シール接触面
ガイド面
位置決め穴
刃物締結面
センサ検出面
安全距離を決定する面
基準体系を設定する
部品および組立体の基準面、基準軸、および基準穴を定義する。
同じ基準を加工、組立、および検査の各段階で使用できることが望ましい。
インターフェースを定義する
組合せ相手部品との関係を記述する。
何と接続するのか。
どの方向から組み立てるのか。
どの荷重を伝達するのか。
どの面を基準として使用するのか。
分解および交換が必要か。
交換後に再調整が必要か。
運動と変形を検討する
静止状態だけでなく、運転中に発生する変化も評価する。
移動範囲
回転軌跡
加速と減速
振動
軸のたわみ
フレーム変形
熱膨張
製品変形
異物の侵入
はめあいとすきまを設定する
最小状態と最大状態を基準に、結合条件を定義する。
正常に組み立てられるか。
運動中の引っ掛かりを防止できるか。
ガタが許容範囲内に保たれるか。
熱膨張後も機構が作動するか。
摩耗後も許容可能な状態を維持できるか。
公差を配分する
機能に最も重要な寸法から公差を割り当てる。
推奨する順序は次のとおりである。
基準面と基準軸を決定する。
重要機能寸法を選定する。
組立寸法を選定する。
公差累積を検討する。
必要な幾何公差を適用する。
非機能寸法には一般公差を適用する。
製造可能性と検査可能性を確認する。
製造および検査を検討する
指定した形状と公差が、実際の工程で製造および測定できるかを確認する。
検査基準を定義できない形状は、生産工程で一貫して管理することが難しい。
試作機を検証する
図面検討だけでは、すべての機能上の問題を発見することはできない。
実際の試作機または試験装置を用いて、次の項目を確認する。
実際の組立性
繰返し位置決め精度
作動抵抗
運動中の干渉
最大荷重時の変形
温度変化後の作動
洗浄後の残留物
分解および再組立時間
摩耗後のガタ変化
作業者のアクセス性と安全性
検証結果は、形状、公差、およびインターフェース要件へフィードバックしなければならない。
主な故障・不具合形態
Functional Geometryが不適切な場合、次のような問題が発生する可能性がある。
組立不良
寸法公差、位置公差、または組立すきまが不足し、部品を組み立てることができない。
運動干渉
静止状態では問題がなくても、たわみ、振れ、または熱膨張によって運転中に部品同士が衝突する。
過大なガタ
過大なすきまにより、振動、騒音、衝撃、および位置誤差が増加する。
位置ずれ
基準体系が一貫していないため、軸、ガイド、軸受、または駆動部品の中心がずれる。
シール不良
シール溝、接触面、または圧縮率が不適切であるため、流体や洗浄水が漏れる。
過剰な公差要求
機能上不要な精密公差を設定することで、加工費および検査費が増加する。
洗浄性の不足
狭いすきま、重ね構造、水平面、および閉鎖空間に食品や洗浄水が残留する。
保守の困難
交換部品へのアクセスが困難である、または分解後に正しい位置を復元することが難しい。
機能低下
摩耗、変形、および熱膨張を考慮していないため、使用時間の経過とともに性能が低下する。
設計検討チェックリスト
Function — 機能
各形状が果たす機能は定義されているか。
重要機能面と補助面は区別されているか。
荷重経路は明確か。
全運動範囲が検討されているか。
機能喪失条件は定義されているか。
摩耗および変形後も機能が維持されるか。
Interfaces — インターフェース
組合せ相手部品は明確に特定されているか。
組立基準面および基準軸は一貫しているか。
締結機能と位置決め機能は分離されているか。
荷重伝達経路は明確か。
組立方向と分解方向は定義されているか。
モジュール交換後も繰返し位置が維持されるか。
ポカヨケ形状が適用されているか。
Fits & Clearance — はめあいとすきま
はめあいの種類は機能に適しているか。
最小すきまは保証されているか。
最大すきまでも精度は維持されるか。
熱膨張と構造変形が考慮されているか。
潤滑および汚染条件が考慮されているか。
摩耗後のガタが評価されているか。
組立工具と作業空間が確保されているか。
Tolerance — 公差
機能上必要な寸法だけを厳密に管理しているか。
公差累積が評価されているか。
基準体系は明確か。
必要な幾何公差が適用されているか。
製造工程で繰り返し達成できるか。
公差は測定可能か。
公差水準はコストに対して妥当か。
Manufacturing — 製造
標準工具で加工できるか。
加工基準を設定できるか。
工具アクセス空間は十分か。
溶接および熱処理による変形を考慮しているか。
表面処理厚さを最終寸法に反映しているか。
Assembly and Maintenance — 組立と保守
定められた順序で組み立てることができるか。
作業者の手と工具が必要な領域へアクセスできるか。
分解と交換は容易か。
再組立後に位置が自動的に復元されるか。
洗浄と点検が可能か。
結論
Functional Geometryは、単に部品の外形を作る作業ではない。製品が果たすべき機能を、形状、寸法、基準、インターフェース、すきま、および公差へ
変換する設計プロセスである。
優れた機能形状は、次の条件を満たさなければならない。
必要な機能を正確に果たす。
組合せ相手部品と明確なインターフェースを形成する。
組立および運動に適したはめあいとすきまを持つ。
製造ばらつきが存在しても機能を維持する。
過度な精度を要求しない。
熱膨張、変形、振動、摩耗、および汚染環境でも安定して作動する。
製造、検査、組立、洗浄、および保守が可能である。
機械設計において、形状は単なる結果ではなく、設計意図の表現である。すべての面、穴、軸、溝、およびすきまには機能上の理由が存在し、その理由
を公差とインターフェース定義によって製造可能な形に具体化しなければならない。
最終的に、Functional Geometryの品質は形状の複雑さではなく、必要な機能をどれだけ単純に、明確に、そして確実に実現できるかによって決まる。