1. 概要
弾性機構および復帰機構とは、外力が作用したときに変形してエネルギーを蓄え、外力が除去されると蓄積されたエネルギーを放出し、部品または機構を元の位置もしくは指定位置へ戻す機械機構である。
弾性および復帰機能は、次のような機械要素によって実現される。
圧縮コイルばね
引張コイルばね
ねじりばね
板ばね
皿ばね
ウェーブスプリング
定荷重ばね
ガススプリング
エラストマー
ゴムブッシュ
フレクシャヒンジ
トーションバー
空気圧または油圧式エネルギー蓄積要素
重力復帰機構
カウンタウェイト
磁気復帰機構
弾性機構および復帰機構の主な機能は次のとおりである。
可動部を初期位置へ戻す
接触力を維持する
組立公差を吸収する
衝撃および振動を緩和する
位置決め用の予圧を与える
すきまおよびバックラッシを除去する
荷重変化を補償する
製品または部品の過度な押しつぶしを防止する
過負荷時に変位を許容する
エネルギーを蓄積および放出する
電源喪失時に安全位置へ復帰させる
繰返し開閉および作動を補助する
代表的な適用分野は次のとおりである。
押しボタンおよびスイッチ
バルブ復帰装置
ドアおよびカバー
クランプおよびラッチ
ロボットグリッパ
自動車サスペンション
プレスおよび金型
包装機械
食品加工機械
工作機械
電気接点
精密位置決め機構
衝撃吸収装置
安全ブレーキ
空気圧・油圧システム
弾性機構は比較的単純な構造を持つが、設計が不適切な場合には、疲労破壊、永久変形、共振、座屈、過大な接触力または不安定な復帰動作が発生する可能性がある。
2. 弾性の基本概念
2.1 弾性
弾性とは、外力によって変形した材料または部品が、外力除去後に元の形状へ戻ろうとする性質である。
2.2 弾性変形
弾性変形とは、荷重を除去した後に材料が元の形状へ復帰できる範囲の変形である。
2.3 塑性変形
塑性変形とは、材料が弾性限度を超え、荷重除去後にも残る永久変形である。
弾性機構は、正常な作動範囲において塑性変形が発生しないように設計する必要がある。
2.4 復元力
復元力とは、変形した弾性要素が元の状態へ戻ろうとするときに発生する力である。
線形弾性要素では、一般に次の関係が成立する。
F = kx
ここで、
F:復元力
k:ばね定数
x:変位
3. 弾性機構および復帰機構の主な機能
3.1 位置復帰
ボタン、バルブ、レバー、クランプまたはスライダを初期位置へ戻す。
3.2 接触力の維持
部品の寸法差や摩耗が存在しても、一定の接触力を維持する。
3.3 予圧の付与
軸受、歯車、ボールねじ、ガイドおよび電気接点へ初期荷重を与える。
3.4 衝撃吸収
短時間に発生する衝撃エネルギーを弾性変形エネルギーへ変換して吸収する。
3.5 防振
外部から機械へ伝わる振動、または機械から周囲へ伝わる振動を低減する。
3.6 公差補償
部品の寸法差、組立誤差、熱膨張および摩耗を弾性変形によって吸収する。
3.7 安全復帰
電気または流体動力が失われた場合に、ばね力によって装置を安全位置へ移動させる。
4. 荷重と変位の関係
4.1 線形ばね
荷重と変位が比例するばねである。
F = kx
一定のばね定数を持つため、解析および制御が比較的容易である。
4.2 非線形ばね
荷重と変位が比例しないばねである。
代表例は次のとおりである。
円すい形コイルばね
可変ピッチばね
皿ばね
ゴムばね
カム・ばね組合せ
リンク・ばね組合せ
4.3 プログレッシブ特性
変位が増えるにつれて、ばね定数が増加する特性である。
衝撃吸収および過大変位の防止に適している。
4.4 ディグレッシブ特性
変位が増えるにつれて、追加の荷重増加量が小さくなる特性である。
一定範囲内で比較的一定の操作力を維持するために使用できる。
4.5 負の剛性
特定の変位範囲において、変位が増加するほど力が減少する特性である。
スナップアクション、双安定機構および高速切替機構に使用される。
5. ばね定数
ばね定数とは、単位変位を生じさせるために必要な力である。
k = F / x
一般的な単位は次のとおりである。
N/mm
N/m
N·mm/rad
N·m/rad
ばね定数が大きい場合、小さな変位でも大きな力が発生する。ばね定数が小さい場合、大きな変位を柔軟に許容できる。
5.1 ばね定数選定時の検討事項
必要復元力
許容ストローク
ワークの変形
衝撃エネルギー吸収量
応答速度
設置スペース
固有振動数
繰返し寿命
製造公差
6. ばねの直列および並列組合せ
6.1 直列接続
複数のばねを直列に接続すると、合成ばね定数は低下する。
1 / k_total = 1 / k₁ + 1 / k₂ + ··· + 1 / kₙ
同じばねを二つ直列に接続した場合、合成ばね定数は各ばね定数の半分になる。
6.2 並列接続
複数のばねを並列に接続すると、合成ばね定数は増加する。
k_total = k₁ + k₂ + ··· + kₙ
6.3 適用
直列組合せは、大きなストロークと低いばね定数が必要な場合に使用する。
並列組合せは、限られたスペースで大きな復元力が必要な場合に使用する。
7. 弾性エネルギー
線形ばねに蓄積される弾性エネルギーは次のとおりである。
U = 1/2 kx²
または、
U = 1/2 Fx
ここで、
U:蓄積エネルギー
k:ばね定数
x:変位
F:最終荷重
変位が2倍になると、蓄積エネルギーは4倍になる。
弾性機構が急激に解放されると、蓄積エネルギーが短時間で放出され、衝撃や飛散の危険を生じる可能性がある。
8. 予圧
8.1 定義
予圧とは、機構が通常作動を開始する前から弾性要素へあらかじめ加える荷重である。
8.2 目的
初期すきまの除去
接触状態の維持
振動の低減
分離防止
作動開始時の無負荷区間の除去
復帰信頼性の向上
電気接点の安定化
8.3 予圧されたばねの力
初期圧縮量を (x_0)、追加変位を (x) とすると、次のように表される。
F = k(x₀ + x)
8.4 注意事項
予圧が過大な場合、次の問題が発生する。
操作力の増加
摩擦および摩耗の増加
ワークの変形
疲労寿命の低下
発熱
効率低下
9. 圧縮コイルばね
9.1 定義
圧縮コイルばねは、軸方向の圧縮荷重を受け、圧縮後に元の長さへ戻ろうとするコイル形ばねである。
9.2 主な形状
円筒形
円すい形
たる形
砂時計形
可変ピッチ形
二重コイル形
9.3 主な用途
ボタン復帰
バルブ復帰
クランプ予圧
金型
サスペンション
衝撃吸収
接触力維持
9.4 長所
構造が単純
標準品が豊富
大きなストロークを確保できる
ばね定数設計が比較的容易
繰返し作動に適している
9.5 短所
圧縮時に座屈する可能性
コイル接触による騒音
線材にねじり応力が発生
高速作動時にサージングが発生する可能性
設置スペースが必要
10. 圧縮コイルばねのばね定数
丸線圧縮コイルばねのばね定数は、次の式で近似できる。
k = Gd⁴ / 8D³n
ここで、
G:横弾性係数
d:線径
D:平均コイル径
n:有効巻数
ばね定数は線径の4乗に比例し、平均コイル径の3乗に反比例する。
したがって、線径の小さな変化がばね定数へ大きな影響を与える。
11. ばね指数
ばね指数とは、平均コイル径と線径の比である。
C = D / d
ばね指数が小さすぎる場合、次の問題が発生する。
製造が困難
応力集中が大きい
成形割れ
疲労寿命の低下
ばね指数が大きすぎる場合、次の問題が発生する。
座屈可能性の増加
形状不安定
大きな設置スペース
外力による変形
12. 圧縮ばねの密着高さ
全てのコイルが互いに接触した状態のばね長さを密着高さという。
設計ストロークには、ばねが密着高さまで完全に圧縮されないよう十分な余裕を設ける必要がある。
完全密着が繰り返されると、次の問題が発生する可能性がある。
衝撃荷重
表面損傷
永久へたり
疲労寿命の低下
ばね座の損傷
13. 圧縮ばねの座屈
長く細い圧縮ばねは、圧縮時に横方向へ曲がる場合がある。
座屈可能性は、次の要素に影響される。
自由長
コイル径
端部支持条件
ばね座の平行度
ガイドの有無
偏心荷重
13.1 座屈防止方法
ガイドロッドを使用する
ガイドチューブを使用する
ばね長さを短くする
コイル径を大きくする
両端ばね座を正しく整列する
複数の短いばねを使用する
たる形または円すい形ばねを使用する
ガイドとばねの間には、熱膨張、変形および寸法公差を考慮した適切なすきまが必要である。
14. 引張コイルばね
14.1 定義
引張コイルばねは、軸方向の引張荷重を受け、両端のフックまたはループを介して部品同士を引き寄せるばねである。
14.2 主な特徴
初張力を持たせることができる
伸びるほど復元力が増加する
比較的容易に設置できる
引張方向の復帰に適している
14.3 主な用途
ドア復帰
レバー復帰
リンク機構
ブレーキ復帰
カバー保持
ベルト張力調整
14.4 主な故障箇所
引張ばねでは、ばね本体よりもフックおよびループ部に大きな応力集中が発生する場合がある。
フック形状および接続部の疲労検討が重要である。
15. 引張ばねの初張力
引張ばねは、コイルが密着している状態でも初張力を持つことができる。
引張ばねの力は次のように表される。
F = F_i + kx
ここで、
(F_i):初張力
k:ばね定数
x:伸び量
初張力は、すきまを除去して張力を維持するうえで有効であるが、組立時や解除時に予期しない力が発生する可能性がある。
16. ねじりばね
16.1 定義
ねじりばねは、コイル軸を中心とする回転変形を受け、復元トルクを発生させるばねである。
16.2 基本関係
T = k_θ θ
ここで、
T:復元トルク
(k_θ):ねじりばね定数
θ:回転角
16.3 主な用途
ヒンジ
ドア復帰
レバー復帰
クリップ
ラッチ
スイッチ
トングおよびグリッパ
16.4 設計検討事項
コイルの巻き方向
作動回転方向
アーム長さ
支持軸径
最大回転角
摩擦
コイル径の変化
アーム部の応力
ねじりばねは、一般にコイルをさらに巻き込む方向で使用する方が安定している。
17. 板ばね
17.1 定義
板ばねは、薄く長い板材の曲げ弾性を利用して復元力を発生させるばねである。
17.2 主な種類
単板ばね
重ね板ばね
片持ち板ばね
曲面板ばね
スナップ板ばね
電気接点用板ばね
17.3 長所
ばね機能と構造機能を一体化できる
低い設置高さ
電気接点へ適用できる
特定方向に高い柔軟性を与えられる
形状設計の自由度が高い
17.4 短所
固定端に応力集中が発生
大きな変位には制限がある
表面欠陥に敏感
繰返し曲げ疲労
ねじりおよび横荷重に弱い
18. 片持ち板ばね
長さ (L) の片持ち板ばねの先端に荷重 (F) が作用する場合、先端変位は次のように表される。
δ = FL³ / 3EI
ここで、
E:縦弾性係数
I:断面二次モーメント
ばね定数は次のとおりである。
k = 3EI / L³
長さが増加すると、ばね定数は長さの3乗に反比例して大きく低下する。
19. 皿ばね
19.1 定義
皿ばねは、円すい形ワッシャ形状を持ち、小さな軸方向スペースで大きな荷重を発生させるばねである。
19.2 特徴
小さな変位で大きな荷重
高い軸方向剛性
直列および並列組合せが可能
非線形荷重特性を実現可能
予圧維持に適している
19.3 主な用途
軸受予圧
ボルト軸力維持
クラッチ
ブレーキ
金型
安全弁
工具クランプ
19.4 組合せ方法
同じ向きに重ねると並列組合せとなり、荷重容量が増加する。
交互に反対向きへ配置すると直列組合せとなり、ストロークが増加する。
20. ウェーブスプリング
20.1 定義
ウェーブスプリングは、円形リングまたは線材へ波形を形成し、軸方向弾性を与えるばねである。
20.2 長所
小さな軸方向スペース
低い密着高さ
軸受予圧に適している
比較的均一な荷重
軽量化が可能
20.3 主な用途
軸受
シール
コネクタ
バルブ
小型機械装置
電気・電子機器
21. 定荷重ばね
21.1 定義
定荷重ばねは、広い変位範囲で比較的一定の力を発生させるばねである。
21.2 主な種類
巻取り式定荷重ばね
ネゲータスプリング
定トルクばね
テープスプリング
21.3 主な用途
ケーブルリトラクタ
高さ調整装置
窓およびドア
医療機器
ディスプレイアーム
製品排出装置
21.4 長所
長いストローク
比較的一定した復元力
小さな設置スペース
カウンタバランスに適している
21.5 短所
巻取り部の疲労
鋭利な端部による危険
芯ずれに敏感
離脱やねじれの可能性
22. トーションバー
22.1 定義
トーションバーは、軸または棒材のねじり弾性を利用して復元トルクを発生させる機構である。
22.2 基本関係
円形軸のねじれ角は次のとおりである。
θ = TL / GJ
したがって、ねじり剛性は次のとおりである。
k_θ = GJ / L
ここで、
T:トルク
L:有効長さ
G:横弾性係数
J:極断面二次モーメント
22.3 主な用途
自動車サスペンション
ヒンジ
回転復帰機構
バランス機構
トルクセンサ
衝撃吸収装置
23. ガススプリング
23.1 定義
ガススプリングは、密閉シリンダ内部の圧縮ガス圧力を利用して軸方向の力を発生させる装置である。
23.2 主な構成
シリンダ
ピストン
ピストンロッド
シール
ガス
オイル
エンドフィッティング
23.3 長所
大きな力を発生できる
長いストローク
比較的緩やかな力変化
ダンピング機能を組み込める
ドアやカバーの開閉補助に適している
23.4 短所
温度によって出力が変化する
シール摩耗およびガス漏れ
使用寿命に伴う力の低下
修理より交換が一般的
ピストンロッドの損傷に敏感
23.5 主な用途
機械カバー
自動車ボンネット
設備ドア
高さ調整装置
医療機器
椅子
点検パネル
24. ガススプリングの力特性
ガススプリングの出力は、主に内部圧力とピストンロッド断面積によって決まる。
F ≈ P A_r
ここで、
P:内部ガス圧力
(A_r):ピストンロッド断面積
実際の出力には、シール摩擦および温度の影響も含まれる。
ガス温度が上昇すると内部圧力が増加し、出力が大きくなる場合がある。
25. エラストマーばね
25.1 定義
エラストマーばねは、ゴム、ウレタン、シリコーンなどの高分子弾性材料を利用し、荷重支持および復元力発生を行う要素である。
25.2 長所
弾性と減衰を同時に与えられる
衝撃吸収性が高い
騒音を低減できる
多様な形状で製作可能
金属同士の直接接触を防止できる
耐食性材料を選択できる
25.3 短所
非線形挙動
温度依存性
クリープ
応力緩和
薬品の影響
経年劣化および硬化
解析が難しい
25.4 主な用途
防振マウント
バンパ
ストッパ
ブッシュ
カップリング
シール
製品保護パッド
食品接触用柔軟部品
26. ゴムの圧縮使用とせん断使用
ゴム要素は、圧縮方向だけでなく、せん断方向でも使用できる。
26.1 圧縮使用
高い荷重支持能力
比較的高い剛性
バンパおよびストッパに適している
26.2 せん断使用
低い剛性を実現できる
大きな変位を許容できる
防振に適している
26.3 注意事項
ゴムは圧縮時に横方向へ膨張するため、完全に拘束すると予想以上に高い剛性を示す場合がある。
27. フレクシャ機構
27.1 定義
フレクシャ機構は、材料の弾性変形を利用し、ピン、軸受またはスライダを使用せずに限定された運動を実現する一体型機構である。
27.2 主な種類
フレクシャヒンジ
クロススプリングピボット
平行板ばねガイド
ノッチヒンジ
ダイヤフラムフレクシャ
ブレードフレクシャ
27.3 長所
バックラッシがない
潤滑が不要
摩擦が非常に小さい
高い繰返し精度
粒子発生が少ない
一体部品として製作可能
27.4 短所
運動範囲が限定される
応力集中
疲労寿命に制限がある
荷重方向に敏感
製造誤差によって特性が変化する
過大変位で破損する可能性
27.5 主な用途
精密位置決め
光学機器
半導体装置
センサ
微調整機構
医療機器
真空装置
28. フレクシャヒンジ
フレクシャヒンジは、局部的に薄くした部分の曲げ変形によって回転運動を与える。
28.1 主な設計要素
最小厚さ
ノッチ半径
ヒンジ幅
材料
回転角
軸方向荷重
疲労寿命
応力集中
28.2 長所
回転中心の高い繰返し性
バックラッシがない
部品点数を削減できる
潤滑が不要
28.3 注意事項
回転角が大きくなると、ヒンジの最大応力は急激に増加する。
29. ダイヤフラムおよびベローズ
29.1 ダイヤフラム
ダイヤフラムは、薄板または膜の弾性変形によって圧力と変位を伝達する。
主な用途:
圧力センサ
バルブ
ポンプ
アクチュエータ
圧力調整器
29.2 ベローズ
ベローズは、波形を持つ円筒構造が軸方向に伸縮する要素である。
主な用途:
真空装置
軸シール
熱膨張補償
圧力センサ
精密アクチュエータ
29.3 主な検討事項
圧力
軸方向変位
繰返し寿命
座屈
溶接部
腐食
温度
気密性
30. 重力復帰機構
30.1 定義
重力復帰機構は、部品の自重またはカウンタウェイトを利用して元の位置へ戻す機構である。
30.2 長所
別途ばねを必要としない
構造が単純
疲労破壊が少ない
長いストロークを実現できる
30.3 短所
設置方向に依存する
可動質量が増加する
加速度変化に敏感
復帰力が位置によって変化する
高速作動に制限がある
30.4 主な用途
フラップ
重力シュート
チェックドア
バルブ
安全カバー
自動復帰レバー
31. カウンタウェイト
カウンタウェイトは、可動部の重量とつり合わせることにより、必要な駆動力および復帰力を低減する装置である。
つり合い条件は、モーメント平衡によって次のように表される。
W₁L₁ = W₂L₂
カウンタウェイトは、エレベータ、ドア、カバー、ロボットアームおよび大型手動装置に使用される。
31.1 注意事項
ウェイトの離脱
ワイヤロープまたはチェーンの破損
衝突
ガイド摩耗
保守アクセス
落下防止
32. 磁気復帰機構
永久磁石または電磁石の吸引力および反発力を利用して、復元力または位置保持力を発生させる。
32.1 長所
非接触で力を伝達できる
摩擦および摩耗を低減できる
密閉構造を実現できる
クリーン環境に適用できる
32.2 短所
非線形な力特性
すきまに敏感
温度によって磁力が変化する
外部磁界の影響を受ける
金属粉じんを吸着する
32.3 主な用途
磁気ラッチ
非接触復帰装置
センサ機構
精密位置決め
真空装置
33. 空気圧復帰機構
空気圧シリンダまたはエアスプリングを利用して復帰力を発生させる。
33.1 方式
単動シリンダのばね復帰
空気圧による復帰
エアクッション
エアスプリング
空気圧バランス回路
33.2 長所
力を調整できる
長いストローク
自動化しやすい
緩衝機能を組み込める
33.3 短所
空気の圧縮性
供給圧力への依存
漏れ
温度の影響
圧力喪失時に復帰不良が発生する可能性
34. 油圧アキュムレータ復帰機構
アキュムレータまたは油圧回路に蓄積された圧力エネルギーを利用して、復帰または非常作動を行う。
34.1 主な用途
非常復帰
圧力維持
衝撃吸収
脈動低減
ブレーキ作動
バルブ復帰
34.2 注意事項
油圧アキュムレータは、電源が切られた後でも大きなエネルギーを保持している場合がある。
保守前には圧力を安全に放出する必要がある。
35. スナップアクション機構
35.1 定義
スナップアクション機構は、弾性要素が臨界点を越えると、一つの安定状態から別の安定状態へ急速に移行する機構である。
35.2 特徴
素早い状態切替え
明確なクリック感
接点チャタリングの低減
小さな入力から高速な出力運動を得られる
二つの安定状態を実現できる
35.3 主な用途
電気スイッチ
スナップドーム
ラッチ
安全カバー
温度スイッチ
バイメタル装置
35.4 注意事項
切替え臨界荷重と復帰荷重が異なるため、ヒステリシスが発生する場合がある。
36. 双安定弾性機構
双安定機構は、外部エネルギーを継続的に供給しなくても、二つの安定位置のいずれかを維持できる。
代表的な方式は次のとおりである。
スナッププレート
オーバーセンタばね
座屈ビーム
磁石とばねの組合せ
双安定フレクシャ機構
36.1 長所
状態維持にエネルギーを必要としない
明確な位置切替え
小型化が可能
36.2 短所
切替え時の衝撃
非線形解析が必要
疲労および座屈に敏感
組立公差の影響が大きい
37. 復帰機構の配置
ばねの位置および作用方向は、機構の力、トルクおよび安定性へ大きな影響を与える。
37.1 直線配置
ばねが移動方向と同一軸上で作用する。
長所:
荷重経路が単純
横荷重が少ない
計算が容易
37.2 偏心配置
ばね力が回転軸から離れた位置で作用し、復元トルクを発生させる。
T = Fr
ここで、
F:ばね力
r:回転軸から力の作用線までの距離
37.3 リンクとの組合せ
リンク角度によって、ばね変位および出力トルクが非線形に変化する。
37.4 カムとの組合せ
カム形状を利用し、目的とする力–変位関係を実現できる。
38. ばねとレバーの組合せ
レバーとばねを組み合わせると、小さなばね変位から大きな出力変位を得たり、大きなばね力を小さな出力力へ変換したりできる。
支点まわりのトルク平衡は次のとおりである。
F_s L_s = F_o L_o
ここで、
(F_s):ばね力
(L_s):ばね側モーメントアーム
(F_o):出力力
(L_o):出力側モーメントアーム
レバー角度が変化すると有効モーメントアームも変化するため、実際の出力は非線形になる場合がある。
39. カムによる復元力調整
カムとばねを組み合わせると、位置に応じた復元力を調整できる。
代表的な目的は次のとおりである。
一定した操作力
初期は弱く、終端では強い力
デッドセンタ通過
オーバーセンタロック
ソフトクローズ
高速復帰
カム形状は、接触応力、摩擦、ローラ径および製造公差と併せて設計する必要がある。
40. 復帰速度および動的挙動
復元力が大きいからといって、必ずしも復帰性能が良いとは限らない。
復帰速度は次の要素によって決まる。
ばね定数
可動質量
摩擦
減衰
初期変位
空気抵抗
衝突ストッパ
流体抵抗
質量–ばね系の固有振動数は、次の式で近似できる。
f_n = 1 / 2π × √(k / m)
ここで、
(f_n):固有振動数
k:ばね定数
m:有効質量
作動周波数が固有振動数へ近づくと、共振が発生する可能性がある。
41. 減衰
減衰とは、機械エネルギーを熱などへ散逸させ、振動および繰返し運動を低減する特性である。
41.1 主な減衰方式
粘性減衰
摩擦減衰
ゴムの内部減衰
空気圧減衰
油圧減衰
渦電流減衰
41.2 ばねとダンパの関係
ばねはエネルギーを蓄積して戻すが、ダンパはエネルギーを散逸させる。
高速かつ安定した復帰を実現するため、ばねとダンパを組み合わせる場合が多い。
41.3 過大な減衰
減衰が大きすぎると、復帰動作が遅くなったり、完全に初期位置へ戻らなくなったりする場合がある。
42. ばねサージングおよび共振
コイルばねを高速で繰返し作動させると、コイル内に弾性波が発生し、サージングが生じる場合がある。
サージングは次の問題を引き起こす。
ばね振動
力の不安定
騒音
コイル同士の衝突
疲労破壊
42.1 防止方法
作動周波数を変更する
ばね質量を低減する
可変ピッチを使用する
減衰要素を追加する
内部または外部ガイドを設ける
ばね形状を変更する
43. 摩擦と復帰不良
摩擦力が復元力を上回ると、機構が元の位置へ戻らない場合がある。
一般的な復帰条件は次のとおりである。
F_return > F_friction + F_external
主な摩擦原因は次のとおりである。
ガイドの芯ずれ
シール摩擦
ブッシュ摩擦
汚染
腐食
潤滑不足
横荷重
組立変形
復帰機構の設計では、最小復元力が最大予想摩擦力より十分に大きくなるようにする必要がある。
44. ヒステリシス
ヒステリシスとは、同じ変位であっても、荷重を増加させる場合と減少させる場合とで力が異なる現象である。
主な原因は次のとおりである。
材料内部の減衰
摩擦
ゴムの粘弾性
リンクのすきま
接触面のすべり
磁力変化
ヒステリシスは、衝撃および振動の低減には有効であるが、精密な力制御および位置復帰では誤差の原因となる。
45. クリープおよび応力緩和
45.1 クリープ
クリープとは、一定荷重が長時間作用したとき、変形が時間とともに徐々に増加する現象である。
45.2 応力緩和
応力緩和とは、一定変形を維持したとき、復元力が時間とともに低下する現象である。
45.3 影響を受けやすい材料
ゴム
ウレタン
プラスチック
高温で使用される金属ばね
45.4 対策
使用温度を下げる
初期変形を小さくする
適切な材料を選定する
予圧余裕を確保する
定期的に力を確認する
交換周期を設定する
46. ばね疲労
ばねは繰返し荷重を受けるため、静的強度より疲労強度が重要となる場合が多い。
46.1 疲労へ影響する要素
応力振幅
平均応力
繰返し回数
表面粗さ
腐食
傷
熱処理
残留応力
使用温度
コイル接触
46.2 疲労寿命の向上方法
最大応力を低減する
応力範囲を低減する
ショットピーニングを施す
表面仕上げを改善する
適切な熱処理を行う
腐食を防止する
プリセッティングを行う
コイル衝突を防止する
フック形状を改善する
47. プリセッティングおよびスクラギング
プリセッティングまたはスクラギングとは、使用荷重より大きな荷重でばねをあらかじめ圧縮し、意図的に小さな初期永久変形を与える工程である。
47.1 目的
使用中の寸法変化を低減する
荷重特性を安定させる
許容応力を向上させる
初期なじみ変形を除去する
過度なプリセッティングは、有効ストロークおよび疲労寿命を低下させる可能性がある。
48. ばね材料
48.1 炭素鋼ばね線
一般機械用途
経済的
高い強度
腐食環境では表面保護が必要
48.2 ピアノ線
高い引張強さ
優れた疲労性能
精密小型ばねに適している
48.3 オイルテンパー線
衝撃および繰返し荷重に適している
中型および大型ばねに使用される
48.4 ステンレスばね鋼
耐食性
食品機械
医療機器
湿潤環境
48.5 耐熱合金
高温環境
エンジン
排気装置
熱処理設備
48.6 銅合金
電気伝導性
非磁性
電気接点
耐食性
49. 表面処理および防食
代表的な表面処理は次のとおりである。
亜鉛めっき
ニッケルめっき
リン酸塩皮膜
黒染め
電着塗装
粉体塗装
不動態化処理
有機コーティング
ショットピーニング
表面処理は耐食性を向上させるが、水素脆化、寸法変化および疲労性能への影響を検討する必要がある。
50. ばね端部およびばね座
圧縮ばねの端部は、荷重を均一に伝達できるように設計する。
主な端部形式は次のとおりである。
オープンエンド
オープンエンド研削
クローズドエンド
クローズドエンド研削
平面度が重要な場合には、クローズドエンド研削形を使用する。
ばね座では次の項目を検討する。
芯合わせ
平面度
摩耗
回転
潤滑
抜け止め
51. ばねガイド
ばねガイドは、ばねの座屈、離脱および横方向運動を防止する。
51.1 内部ガイド
ガイドロッドがばね内部を通過する。
51.2 外部ガイド
ガイドチューブがばね外周を囲む。
51.3 設計検討事項
最大外径および最小内径
熱膨張
コイル変形
汚染
摩擦
潤滑
組立性
ガイドとばねの摩擦が過大な場合、復元力が不安定になる可能性がある。
52. 冗長ばねおよび二重ばね
一つのばねが破損しても機能を維持する必要がある場合、二重ばねを使用できる。
代表的な構成は次のとおりである。
同心二重ばね
並列多重ばね
主ばねと補助ばね
ばねと重力復帰の組合せ
ばねとブレーキの組合せ
同心二重ばねでは、互いに反対の巻き方向を使用することで、破損コイル同士の干渉を低減できる。
53. 過大変位防止
ばねまたはフレクシャが許容範囲を超えて変形しないように、機械的制限装置を設ける。
代表的な方式は次のとおりである。
ストッパ
ガイドショルダ
制限ピン
ケーブル
補助リンク
バンパ
過負荷センサ
過大変位防止装置は、正常作動時には接触せず、異常状態でのみ作動するように設計することが望ましい。
54. 弾性要素のフェイルセーフ設計
ばねが破損すると、破片が飛散したり、機構が急激に動いたりする可能性がある。
代表的な対策は次のとおりである。
保護カバー
ばね内部の安全ロッド
抜け止めケーブル
二重ばね
破損検出センサ
移動範囲制限
蓄積エネルギー放出手順
定期交換
引張ばねは、ばね本体またはフックが破損した際に、両側の接続部品が急激に移動する可能性があるため、特に注意が必要である。
55. センサおよび状態監視
弾性機構および復帰機構の状態は、次の方法によって監視できる。
位置センサ
変位センサ
力センサ
トルクセンサ
ひずみゲージ
近接センサ
ばね破損センサ
振動センサ
カメラ検査
55.1 監視項目
復帰完了
最大変位
予圧
復元力
サイクル時間
永久へたり
疲労亀裂
復帰遅延
復帰位置だけを検出しても、実際の復元力低下を確認できない場合がある。必要に応じて、力または変位データも併せて監視する。
56. 安全設計
56.1 主な危険
蓄積エネルギーの急激な放出
ばね破損および飛散
指の挟まれ
引張ばねフックの離脱
ガススプリングの破損
高圧ガス漏れ
フレクシャの破断
復帰部品の衝突
保守中の急作動
56.2 保護対策
保護カバー
蓄積エネルギー放出手順
ストッパ
抜け止め装置
セーフティピン
保守用支持具
破損監視
警告表示
交換周期管理
56.3 保守時の注意
弾性要素を分解する前に、予圧および蓄積エネルギーを除去する必要がある。
加圧されたガススプリングおよびアキュムレータを切断したり、穴を開けたりしてはならない。
57. 食品機械の弾性機構および復帰機構
食品機械では、弾性性能とともに、衛生性、洗浄性、耐食性および部品脱落防止を考慮する必要がある。
57.1 主な要求事項
食品残渣が蓄積しにくい構造
露出コイルおよび深いすきまの最小化
開放的で洗浄しやすい構造
耐食性材料
食品用潤滑剤
破損部品の脱落防止
洗浄薬品への耐性
工具なし分解構造の適切な管理
57.2 推奨方式
ステンレスばね
密閉形ガススプリング
サニタリ仕様エラストマー
抜け止め付きばね構造
外部汚染を防止する保護チューブ
一体型フレクシャ
57.3 注意事項
コイルばね内部およびフック接続部は洗浄が難しい場合がある。食品直接接触区域では密閉するか、衛生区域の外側へ配置することが望ましい。
58. 包装機械の弾性機構および復帰機構
包装機械では、高速繰返し作動および製品切替えへの対応が重要である。
主な用途は次のとおりである。
シールジョー復帰
カッター復帰
フィルムテンションアーム
ガイド予圧
製品ストッパ
クイックチェンジラッチ
ドアおよびカバー
センサブラケット
主な要求事項は次のとおりである。
高速復帰
高い繰返し寿命
低慣性
復帰完了検出
製品損傷防止
汚染および粉じんへの耐性
59. 工作機械の弾性機構および復帰機構
工作機械では、高い剛性、精度、疲労寿命および切削液への耐性が重要である。
主な用途は次のとおりである。
工具クランプ用皿ばね
軸受予圧
ボールねじ予圧
カバー復帰
チップカバー張力維持
工具交換装置の復帰
センサ接触機構
ガイドすきま除去
工具クランプ用ばねは大きな繰返し荷重を受けるため、個々のばね破損だけでなく、全体的なクランプ力低下も監視する必要がある。
60. ロボットおよび自動化設備への適用
主な用途は次のとおりである。
グリッパフィンガ復帰
ケーブルテンショナ
ツールチェンジャロック
衝突緩和機構
センサ用フローティングマウント
安全バンパ
関節バランス機構
非常復帰
設計時には次の項目を検討する。
繰返し寿命
復帰時間
ロボット加速度
ケーブル干渉
破損時の製品落下
位置検出
保守性
61. 適用事例
61.1 ばね復帰式空気圧シリンダ
圧縮空気供給
→ シリンダ前進
→ ばね圧縮
→ 空気圧排出
→ ばね力で復帰
主な検討事項:
供給圧力
ばね力
シール摩擦
復帰速度
圧力喪失時の安全位置
ばね疲労
61.2 機械カバー用ガススプリング
カバー開放
→ ガススプリング伸長
→ 開放トルクを補助
→ カバー閉鎖
→ ガス圧縮
主な検討事項:
カバー重量
ヒンジ位置
ガススプリング取付角度
開放トルク
閉鎖初期力
温度変化
使用寿命
61.3 工具クランプ用皿ばね
皿ばねへ予圧
→ ドローバを引張る
→ 工具をクランプ
→ 油圧または空気圧でアンクランプ
→ 圧力解除後に再クランプ
主な検討事項:
クランプ力
皿ばね配列
疲労寿命
ばね破損
アンクランプストローク
力監視
61.4 精密フレクシャガイド
アクチュエータ入力
→ フレクシャ弾性変形
→ 平行移動
→ 入力除去
→ 初期位置へ復帰
主な検討事項:
最大応力
移動範囲
寄生運動
繰返し精度
疲労
熱変形
61.5 フィルムテンションアーム
フィルム張力変化
→ アーム回転
→ ばね変形
→ 張力補償
→ 送り速度安定化
主な検討事項:
張力範囲
アーム慣性
復元トルク
減衰
フィルム損傷
位置センサ
62. 解析および設計ツール
62.1 静解析
ばね力
変位
予圧
最大応力
接触圧力
座屈
62.2 疲労解析
平均応力
応力振幅
繰返し回数
応力集中
表面状態
腐食影響
62.3 動力学解析
固有振動数
共振
復帰時間
衝突速度
ばねサージング
減衰
62.4 非線形解析
皿ばね
ゴム
フレクシャ
大変形
接触
スナップスルー
62.5 運動解析
リンクとばねの変位関係
カム形状
力作用点の変化
復元トルク
干渉
ストッパ接触
63. 弾性機構および復帰機構の選定手順
63.1 必要機能を定義する
初期位置への復帰
接触力の維持
予圧付与
衝撃吸収
防振
公差補償
安全復帰
エネルギー蓄積
63.2 荷重および運動を定義する
直線力
トルク
ストローク
回転角
作動速度
繰返し回数
衝撃
設置方向
63.3 必要な力特性を決定する
線形
非線形
プログレッシブ特性
定荷重
スナップアクション
双安定特性
63.4 弾性要素を選定する
圧縮ばね
引張ばね
ねじりばね
板ばね
皿ばね
ウェーブスプリング
ガススプリング
エラストマー
フレクシャ
トーションバー
63.5 設置スペースを検討する
自由長
密着高さ
外径および内径
ガイド
作動軌跡
組立スペース
交換スペース
63.6 強度および寿命を検討する
最大応力
弾性限度
疲労
座屈
クリープ
応力緩和
腐食
温度
63.7 動的性能を検討する
復帰時間
固有振動数
共振
ばねサージング
衝撃
減衰
騒音
63.8 安全性を検討する
蓄積エネルギー
破損および飛散
離脱
過大変位
保守時のエネルギー除去
冗長化
破損監視
63.9 環境条件を検討する
温度
湿度
洗浄
薬品
腐食
真空
食品接触
クリーンルーム
63.10 試験および検証
荷重–変位試験
復元力試験
繰返し寿命試験
永久へたり試験
温度試験
腐食試験
振動試験
破損試験
復帰時間測定
64. 結論
弾性機構および復帰機構は、外力によって変形するときにエネルギーを蓄積し、外力が除去されると、その蓄積エネルギーを利用して部品または機構を元の位置もしくは指定位置へ戻す機械機構である。
圧縮、引張およびねじりコイルばねは、最も一般的な復帰要素である。板ばねおよびフレクシャは、構造機能と弾性機能を一体化する場合に有効である。皿ばねおよびウェーブスプリングは、限られた軸方向スペースで予圧を与え、定荷重ばねは長いストロークにわたって比較的一定の力を発生させる。
ガススプリングは大きな力と長いストロークを提供し、カバーおよびドアの開閉補助に適している。エラストマーは弾性と減衰を同時に与え、振動および衝撃の低減に有効である。重力、カウンタウェイトおよび磁力を利用すれば、一般的な金属ばねを使用せずに復帰機能を実現できる。
弾性機構は、復元力だけで選定してはならない。ばね定数、変位、予圧、蓄積エネルギー、応力、疲労、座屈、共振、減衰、クリープ、温度および摩擦を総合的に検討する必要がある。繰返し作動機構では、最大静応力よりも応力範囲および疲労寿命が重要となる場合が多い。
復元力が摩擦力より小さい場合、復帰が不完全になる可能性がある。一方、復元力が過大な場合、操作力、衝撃、摩耗およびワーク変形が増加する。高速復帰が必要な場合には、ばね定数だけでなく、可動質量と減衰も併せて調整する必要がある。
ばね、ガススプリングおよびアキュムレータには、大きなエネルギーが蓄積される可能性がある。分解および保守前には、予圧と圧力を安全に除去しなければならない。破損時の飛散や急激な移動を防止するため、カバー、ストッパおよび抜け止め装置を設ける必要がある。
弾性機構および復帰機構は、次の順序で設計および選定することが適切である。
必要機能および安全位置を定義
→ 荷重・トルク・ストローク・回転角を分析
→ 必要な力–変位特性を決定
→ 弾性要素および復帰方式を選定
→ 予圧および設置スペースを決定
→ ばね定数・応力・座屈を確認
→ 疲労・クリープ・温度影響を確認
→ 可動質量・共振・減衰を確認
→ ガイド・ストッパ・抜け止めを設計
→ 破損および蓄積エネルギーの危険を確認
→ 環境・衛生・腐食条件を確認
→ 荷重–変位・復帰時間・寿命試験を実施
適切に設計された弾性機構および復帰機構は、機械の繰返し性、応答性、衝撃吸収性、安定性、安全性および保守性を向上させる重要な機械構成要素である。